Yeloow Sac SpiderYeloow Sac Spider
(頭が警鐘を鳴らしている。これ以上毒されたら、僕は抜け出せない)
「豊前……どうして……」
「松井……。ここにいれば、お前は苦しい想いをしなくて済むんだ」
松井が連れてこられた場所は、籠のような部屋だった。
装飾は松井が好むゴシックで整えられている。
豊前の表情は、泣いているような、苦しいような…苦悶と言った方が近い。松井の足首には赤いリボンが結ばれている。豊前は跪くと、松井の足首に恭しく唇を落とした。
「豊前……っ!なにを……っ」
「まつの、お前の羽根をむしってしまえば、お前はもうどこにも行かなくていいんだ。苦しい想いも、悲しい想いをしなくて済む」
周囲を見回して松井は思った。ここは、本丸でない。本丸ではない、どこか別の場所。まるでここは、鳥籠のようだ。
「豊前、どうして……」
「お前を誰にも見せたくない…そしてその瞳に、俺だけを写してほしいんだ」
「ぶぜ、」
松井の声は、豊前からの口づけで塞がされてしまった。松井は体を動かそうとしたものの、足首のリボンが絡まって思うように動かせない。
「お前の熱に、毒されていたのは、俺の方か」
松井。もう離したくねえんだ。毒の糸に絡まってしまったのは豊前か松井か。それは当事者にしか分からない。