『甘えたいんだったら、素直になって』 夕食を終え付けっぱなしになっているテレビの音を聞きながら明日の仕事の確認の為にスマホに触れ、会話がなくても心地いい彼とのひとときを私は楽しんでいた。同じくスマホを触りながら時折テレビに視線を向ける神谷を隣に置きながら。
「んー……」
仕事や事務所仲間からの連絡が入ることも増えた端末に文字を打ち込みながら何か言いたげな神谷にあえて何も言わずに次は何を作ろうかと、スイーツのレシピも頭に思い浮かべて。
「……」
小さく息を吐いてまたスマホを触りだす神谷の表情があまりにも解りやすく面白くなさそうで。その様子に仕方がないですねと言葉にせずに彼の少し膨れた頬を指先でツン、とつついた。
「!」
「甘えたいんやったら、素直になってください。……見るのも触るのも。スマホでいいんですか?」
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