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    絵や漫画置き ろささ どつ

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    ⚠️死ネタ葬式ろささ
    零視点小話
    好きな方はお読みください。
    #いちにちいちろささ

    #ろささ
    rosasa
    #死ネタ
    newsOfADeath

    「アカンよ」「なあ、ろしょう 隣に寝てもええ?」

     久方ぶりに聞いた簓の声はカサカサした瘡蓋のような、しゃがれた声であった。幾度も喉で己の声を言葉を殺したのだろうなと安易に想像がついた。
     今は通夜が終わり、夜の帳が下りきった深夜帯である。一夜蝋燭の火を絶やさぬように見張りを立てなくてはならない、その灯火の番を盧笙の家族にほんのひと時譲ってもらったのだ。
     俺の後ろで黙ったまま無表情で似合わない真っ黒な背広に着せられ、小さく頼りなく佇む簓の様相に流石に思う事があったのだろう。盧笙によく似た容姿の父親が「私たちも休みます。その間お願い出来ますか」と言ってくれたのだ。
     簓も俺も式は後方の席で黙ってみていた。当たり前だ、どんなに会って、笑い合っていたとしても俺達は盧笙の家族では無かった。そして2人が「そう言う関係」であった事を誰も知らないのだ。何となく察せられたが、俺は何も聞かなかったし2人も言わなかった。
     わんわん泣く家族の中にこいつが混ざっていない事に酷く違和感を覚えたが簓は黙ってただただとその光景をみていた。代わる代わる盧笙の顔を見て泣く、盧笙の友人、同僚や生徒達、人々に囲まれ、四角い箱に収まった盧笙を遠くから無表情で見つめ続ける簓を、誰があの白膠木簓だと思っただろうか。
     通夜が終わり、振る舞いを受け、ぽつりぽつりと人が減っていく中でついぞ簓は声をかけられることは無かった。
     会場にほぼ人が居なくなり、残りは家族と俺達だけとなり、家族に俺は声をかけ、ようやっと簓と盧笙は逢瀬する機会を得たのだった。
     俺はちょっとそこで煙草吸ってっから、何があれば声かけろよぉとのそのそと部屋の外に出てすぐ近くのベンチに座り、2人だけにしてやる。
     部屋からはユラユラとした灯火の淡い光が漏れて簓の影も揺れていた。いつまでそうしていたか分からないが、願わくばこの時間が長く続けば良いと思っている。だがそう言うわけにもいかないのが人生の切ない所だ、なぁ簓。


    「アカンよ」

     簓の寝てもええ?に対して俺が答えたやった。
     暫くして「下手くそな大阪弁の真似やめぇや」と返ってきた。
     あれれ、そんなに下手くそだったかねぇ。

    「似てねぇか?お前らの会話をずっと聞かされてきたからちっとは自信あったんだがなぁ」
    「………似てへんよ…」
    「そいつぁ〜すまねぇな。練習しとくわ」

     要らん…とか細い声が聞こえる。雨の日に1人で迷子になった子供みたいな声だ。置いてかれてしまった側の人間の声だ。

    「しっかし、先生もいけねぇ奴だなぁ。こう言うもんは年功序列だろ?最近はあんまり言わねぇかもだが、こればっかりはキッチリ守ってくれねぇと困るんだわ…こんなかじゃ俺が最初だった筈なのに、追い越していきやがって…今度会ったら説教してやらねぇとな」
    「………零に説教て………盧笙もついてへんなぁ………」
    「どー言う意味だこら。………簓は、お前は………」

     俺に説教される羽目になるんじゃねぇぞ。
    「簓ぁ。生きていこうや。そんで、2人で盧笙どついてやろうぜ?なぁ。その前に冥土の土産沢山こさえていこうなぁ」
    「…………なんやねんそれ…………」
    「さぁ?なんなんだろうな」
     
     外からざぁああと雨が地面を叩く音が聞こえて来る。夕方はきれいな朱色であったが天気は崩れてしまったらしい。なんとなくこの冷たい空気の廊下の先から土が濡れた匂いが入ってきている気がした。まだ泣けていないこいつの代わりに泣いてんのか?

     簓。置いてかれて生きていくのは辛いよなぁ。痛みがずーっと続く中で立って歩かなきゃならないのは。一緒に逝けたらどんなに楽か、なんで置いて行ったんだって苦悩する日々はしんどいよなぁ。
     簓の影が揺れる。盧笙の顔を覗きこんでいるようだった。そのまま2人が重なる事を夢想する。幸せな夢を見ている。

     そろそろ時間であった。しょうがないから簓に声をかけてやる。もう行くぞ〜って、あぁその前に蝋燭の火を新しいものに移さなくては。緩慢な動きで部屋に入れば四角い箱を覗き見つめる簓が居る。一輪の白い菊がまるで寄り添うように簓のすぐ側に落ちていた。 
     蝋燭の火を移して簓と同じように箱を覗き込めば沢山の花に囲まれた盧笙が眠っている。まるで姫さんみたいだ。
     本当馬鹿だよお前は。こんなめんどいもん置いて行って。

    「ほら、立て。行くぞ」
    「…………嫌やなぁ………」
    「ダメだ。もうちょっとで盧笙の父ちゃんが起きてくるから」
    「……やっぱ俺、盧笙の隣で寝たい………」
    「………「アカンよ」」

     簓がこっちを向く。ここに来て、初めて目が合った。


    「………ふは。詐欺師も、泣くんやな」



     今日初めて簓が笑った。笑った目からポロッと涙が溢れた。どっかの誰かが、すまん、れい。ありがとうなと言った気がした。馬鹿野郎。それは俺じゃなくてこいつに言ってやれや。
     
     
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