たまには、甘いものでも。 街の喧騒と穏やかな波音が聞こえる、座のとある港。それぞれ、別の海域を巡っていた黒髭とバーソロミューは、前後してここに着き、久しぶりに夜を共にした。
『俺んとこ見てくるわ……あと用事』
朝日が昇り、そう言ってバーソロミューの船を後にしていた黒髭が、昼過ぎに戻ってきた。船長室のソファで紅茶を楽しんでいる主の隣へ座り、手にしていた袋を目の前に置く。
「これは?」
「美味そうなのあったんで。甘いモン好きな誰かさんが、食べっかなーと」
バーソロミューの碧い目が見開かれ、袋を、次いで黒髭を見る。背凭れに体を預け、天井を見上げる黒髭の横顔にふと目を細めた。
「ありがたく頂こう。少し待っていろ」
肩を軽く叩いて、バーソロミューが立つ。軽く手を挙げ、その背を見る黒髭の口元は、満足げに緩んでいた。
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