夜空とプリズム華やかなミカグラの歓楽街から少し外れた立地のオフィス・ナデシコ。ここでの生活ももう数ヶ月になろうとしている。
すっかり慣れ親しんだ施設だが、もう間も無く、ルークは母国に帰るためにここを離れることが決まっている。そう思うと日常と化した光景が急に名残惜しくなる。
ラグジュアリーな空間にやや不釣り合いなスニーカーの音を立てながら、ルークは彼を呼び出した者の元へ急ぐ。
「ナデシコさん、お呼びですか」
元気のいい声が響き、ナデシコは微笑みながら彼の方に顔を向けた。
「ああ、ルーク。待っていたよ。ひとつ頼まれごとを受けてほしいんだ」
「はい、僕にできることなら。なんでしょう?」
「もう間も無くこの近辺で夏祭りが行われることは知っているか?」
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