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    hitachiakira

    @hitachiakira

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    hitachiakira

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    「月下の酔客」の続きのような龍炎。今回も龍炎は喋らないし、相変わらずアラジンが巻き込まれてる。キャラの口調がゲシュタルト崩壊する日々。
    龍炎は周りの人たちを巻き込めるカプなので、他の人とばかり会話させてしまう。

    片恋同盟 月が綺麗な夜、アラジンはまたしても酔っ払った白龍に絡まれていた。しかも今回は向こうからアラジンの元へ来た。酒と彼お手製のつまみを持って。
     ことの発端は先月、紅炎に飲まされた白龍が一人飲み中のアラジンの元へ転がり込んだ時まで遡る。彼は絶賛紅玉に片思い中のアラジンをしばらくイジって遊んだ後、義兄の紅炎を好ましく思っていることを事故的に露呈させてしまった。思い返してもそれは見事な自滅だった。白龍が自分で墓穴を掘って勝手に埋まる様子を、アラジンは眺めることしかできなかった。

    「アラジン殿、また懲りずに姉上へ土産を持っていってましたよね。最近どうですか?」
    「な、なんでこの前話したこと覚えてるんだい?」
    「先日は無様を晒したので、この際最後まで付き合ってもらおうと思いましてぇ」
    「巻き込まないでおくれよー!」
     白龍はアラジンにお構いなしで、二人分の白磁の器に酒を注いだ。そのまま自分の盃を両手で挟みこみ、くるくると回転させて弄び始める。ちなみに彼が前回の記憶を持ち越しているのは、たまたま吐かずに寝落ちしたからである。
    「いいじゃないですかぁ片恋者同士仲良くしましょう」
    「そんなこと言って、明日悶絶しても知らないんだからね…」
     ─今日も白龍くんが元気に墓穴を掘っている。アラジンはこのめんどくさい絡み酒の男を追い返すことを早々に諦めつつあった。
    「そもそもアラジン殿は、外堀も同時並行で埋めていくくらいやらないと埒があきませんよ。相手は皇帝陛下なので流石に縁談も簡単に飛んでこないと思いますが、ちんたら進める利点はほとんど無いので」
    「くっ、少し参考になるのが悔しい…!」
    「こういうのはうまく根回しした方が勝つんですよ」
     恋愛経験値は大差無いはずなのに、訳知り顔でアドバイスを語り始めた目の前の男に返す言葉が見つからない。どこか勝ち誇った態度は、なんとなくアリババをモルジアナ関連でからかう時と似ている。搦め手を使う予定はないが、参考としてちょっと聞くくらいはいいかもしれない。なにしろ紅玉はアラジンのアプローチに全然気づいてくれないのだ。

    「……君ならどうするの?」
    「練家の人間を一人ずつ協力体制に持ち込むのは手間なので、まず紅炎をこちら側に引き込みます」
    「俺、紅炎おじさんに『貴様に対する興味も失せた』って言われてるんだけど?!」
    「アラジン殿には各国要人の信用と信頼があります。ですが公の地位が無いので突っ込まれるとしたらそこでしょう。まずこの国で認められたいなら紅炎を利用するのが最短です。今のあの男はすぐ裏へ引っ込もうとしますが、うちの兄姉はアイツの判断を良しとしたがりますし臣下の心象も少し甘くなる」
    「ねぇ興味ないって言われてるんだけど??」
    「ちなみに俺はアイツの判断を無視します!!」
    「俺のことも無視かい?!」
    「つまりアラジン殿がアイツに新世界レポートを提出するのが早い!!」
    「ちょっとは聞いておくれよーー?!」
     酔っ払いが語るくせにすこし有用そうな話なのが癪だ。白龍はそのままの勢いで「紅玉と結婚すれば紅炎は義理の兄になるがそのままおじさん呼びするつもりか(要約)」という、ちょっとどうでもいい内容で話を広げ始めた。アラジンにとって紅炎おじさんは紅炎おじさんなので、この話は盛り上げようがない。仕方がないので話題を変えることにした。
    「ところで白龍くん。……なんで来たの?」
    「それ今聞きますぅぅぅぅぅぅ????」
     白龍は盃を持つ手をバンバンと数度卓に叩きつけて、突然ガクリとうなだれて動かなくなった。この質問は彼にとって鬼門だったかもしれない、とアラジンが気づくには十分な長さの沈黙だった。
    「……紅炎が」
    「うん」
     白龍が俯いたまま喋り始めたので、頭の冠を眺めながら適当な相槌を打つ。今月の酔っ払いも紅炎おじさんのせいだった。なんでだろう、知ってた。
    「昼食を作って持って行った時に、アイツがまた月見酒に誘ってきたので」
    「ん?! うん」
    「酒、を、もらってきてほしいとわざわざ俺に」
    「ハイ」
    「いまのあいつだいたいすわってるからどうやってもうわめづかいになるのがはらたつ。べつにかわいいとはおもっていない、あんなやつかわいくない」
    「わぁ〜すごいめんどくさいよぉ」
     つまりこうだ。紅炎が白龍を酒に誘うとアラジンに被害が及ぶ、とんだ因果関係である。
     紅炎おじさんは自分の仕草一つで義弟の情緒がめちゃくちゃになっていることに早く気づいて欲しい。そもそも何故2ヶ月連続で彼を月見酒に誘っているのだろうか。というか白龍くん、ご飯作ってあげてるんだ……?
    「あんなに俺を見下ろしていたのに……」
    「落ち込み始めたなぁ」
    「酒入るとあの男、少しだけ笑うのがうまくなるんですよぉ。別に可愛いとか思ってませんけどぉぉぉ」
    「そ、そうなんだ〜」
     あのぼんやりしているかギラギラするかの二択な男が、酒を飲んだ程度で変わるのだろうか。昔笑いかけられた時は正直かなり怖かった。
     恋は盲目ってやつかなぁ……? あははと適当な愛想笑いを浮かべながら、アラジンはつまみに手をのばした。白龍お手製の小鉢は塩気が効いていて酒に合う。
    「そのままおじさんと飲んでいればいいのに。何で俺のところに来るのさ」
    「自分の酒癖がよくないことくらい分かってるんですぅぅぅぅ!!」
    「そんな今更」
    「幻滅されたくないぃぃ……」
    「紅炎おじさんはそのくらいで幻滅しないと言うか、王族としての役目を果たしてない時の方が好感度下げそうだよね」
    「わかってますよぉぉぉそんなことぉぉぉぉぉぉぉ」
    「わかってるのかぁ〜〜」
     白龍は酔っ払いにありがちな、大きな身振りと手振りでジタンバタンしている。そもそも逆賊と称して表向き処刑まで行った相手に対して、彼は何をゴネているんだろうか。
     本来なら好感度マイナスを通り越して関係すら絶対零度に冷え込むはずだが、そうなっていないのだからもう脈アリってことでいいんじゃない? ─と無責任なことを言えるほど、アラジンは白龍の片思いに無関心ではなかった。正直紅炎のことは今もよくわからないし、何故今更のように白龍が片思いをこじらせたのかも分からない。でもほんのちょっとぐらいは、いい感じのところに収まって欲しいと思う。
     ─ところで俺はこれから毎月コレに巻き込まれるんだろうか。
    「酔ったはずみで何口走るか分からないじゃないですかぁぁぁぁぁ」
    「もう真正面から告白すればいいのに……」
     目の前の酔っ払いは、うっかりアイツに可愛いとか言ったらどうしようなどとブツブツ言っている。アラジンがこぼした言葉はそっくりそのまま彼に戻ってくる類いの発言だったが、それを突っ込む人間はこの場にいなかった。


    「炎兄どしたの? 一人で月見酒?」
    「紅覇か」
     飲んでいけと言いたげな目配せに従って、紅覇は兄の隣に座った。心なしか嬉しそうに新しい盃を差し出されたのでそのまま受け取る。乾いた盃がひとつ、無造作に転がっていた。誰か先客がいたようだ。
    「……白龍が」
    「えっ?!」
     紅覇の反応に驚いたのか紅炎は少し肩を揺らしたあと、すこし首を傾げた。肩にかかった赤い髪がさらさらと流れる。
    「白龍の酒癖が面白いと聞くので誘ってみたが、また途中で逃げられた」
    「炎兄はそう思わないかもだけど、世の中には知らない方が幸せなこともあると思うんだよね〜…」
     そういえばこの人はアリババの結婚式には不参加だった気がする。兄弟で集まって食事をすることなんて無かったし、酒宴なんてなおさらだ。見たことないのかぁ、白龍の絡み酒を。
    「あれ? また逃げられたってどういうこと?」
    「2回誘ってみたが理由をつけて離席された。俺と二人では楽しくもないか」
    「アイツが2回も付き合ったんでしょ? 嫌なら最初から断ると思うけど……あ」
     一番下の義弟から兄3人へ向ける態度が一時期に比べてかなり軟化していることを、きっとこの人だけが気づいていない。多分兄の中では今でも、「自分は末の弟に快く思われていない」なんだろう。─そういえば。

    「明兄が言ってたのってこういうことか〜」
     先日明兄─もう一人の兄・紅明─が、白龍が面白いことになっていると話していた。「最近白龍が兄上に懸想をしているようなので、酔った本人を取り調べたところ特に問題も無さそうなので今は放置します」とかなんとか。与えられた情報量が多過ぎて、何がなんだか分からなかったがここに繋がるのか。紅明の情報とこの場からの推測になるが、おそらく白龍のド下手くそなアプローチに兄の鈍感が遺憾無く発揮されている。彼のことだ、どうせご飯作ってアプローチした気になってるんだろう。
    「多分だけど、白龍なら次も乗ってくれるよ。アイツの酒癖見れるまで誘えばいいじゃん」
    「そうか……?」
    「というか他の人に声かけるとややこしいことになりそう。来月もやるならぜっったい白龍を誘った方がいいと思う」
    「ふむ」
     感情の起伏の少ない兄は怪訝そうに…─身内しか気づかなさそうな表情を浮かべて、手元に映り込んだ小さな月へ視線を落とした。あぁこの人本当に気づいてない。
     白龍が大人しく酒癖を披露するまで、面白いものを見られる気がする。紅覇は兄の盃に自分のものをコツンと当てて、一息に飲み干した。
    「え〜〜このお酒美味しい! こんなお酒ほとんど飲まずに逃げるとか絶対損じゃん」
    「それなら来月はお前にも声をかけるか」
    「うぅん、俺や明兄誘うのはアイツが逃げまくった時の最終手段にして」
    「……? わかった」
     いくら白龍でも俺たちの前で公開処刑はかわいそうだし、しばらく一対一で兄上に生殺しにされればいいんだ。
     せいぜい振り回されてよ白龍。僕たちは炎兄が望まない限り、お前に助け舟なんて出してやらないから。お前も多分いらないって怒るんだろうしぃ?
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