無題七海建人は、人気俳優である。
16歳の時にデビューし、その美少女と見間違うほどのルックで瞬く間に人気にはつき、じゃあ何がたった今では、演技派俳優として、数々の映画やドラマに出演している。
また、彼が美食家というのもよく知られていた。
バライティー番組などに実演した際は、周りへの気遣いや、ファンへの対応がよく、特に女性や年下への気遣いの良さもなんかの理由の初1つだった。
そんな男だが、この10年以上開いた話の一つもなかった。
週刊誌にとられる姿大体決まって、彼の好物であるパン屋巡りをしているところや、有名レストランへ通う姿だ。
“七海建人には、恋人がいない”というのが世間の認識である。
だが、そんな七海建人にも恋人はいる。
その恋人が同性で、世間一般的にはあまり受け入れられないことや、まだ自分自身のことを恋愛の意味で好きというファンがいること、恋人も同じく人気者であることが、世間に公表していない理由である。
恋人との付き合いも、デビュー当時からもう10年以上になる。
人気俳優である七海建人の恋人は、超人気小説家五条悟である。
この事実は、彼らの古くからの付き合いであるものなら皆が知っていることだ。
小説家の五条は、シリアスからラブコメなど幅広いジャンルで活躍し、ほぼ全ての作品が賞や、ドラマ・映画になるほどの人気小説だ。
実際七海の代表作であるドラマや映画のなかで、五条悟が原案であるものも少なくない。
そんな彼らには、前世の記憶というものがあった。
呪い呪われの世界で、最強であった五条は前世の代償なのか今生ではあまり体が強くなかった。
そのため、在宅で仕事ができ、なおかつあまり人と関わらない小説家として働いている。
「五条さん、おはようございます。今日の体調はどうですか?」
「ん…おはよう…七海…今のとこは熱はなさそうだけど、貧血はありそうだね。」
「熱がなくて良かったです。貧血気味ということでしたら、あさりの味噌してるでも作りましょうか。ちょうど昨日買ってきたものがありますし、小松菜を入れてもいいかもしれませんね。今日私は1日オフですから、何かあったらすぐに言ってくださいね。」
「ありがとう…ここ数日締め切りが近いから、ちょっと無理したらこれだもんな…」
「むしろ貧血で済んでるだけで良かったですよ。」