艶やかな華「なんだ。今日も来たのか?」
――シャラン……、
耳を飾る金の飾りが涼やかな音を奏でる。
鎖骨から肩の大半を晒した豪奢で扇情的な着物を捌きながら、黒髪の美貌の青年は近頃よく見る桜色の髪のどこか品のある若い男を招き入れた。
「迷惑だった?」
「そんなことはないが、俺は安くないだろう?」
言いながら艶々とした赤に金糸の刺繍が細かにされた座布団に手を添えると、桜色の髪の男は微笑んで慣れた風に腰を下ろす。
目の前で淡く微笑む青年が、言葉とは裏腹にどこか嬉しそうなのに気がつかないはずもなかった。そっと触れるか触れないかの曖昧さで頬に手を伸ばすと、男は柔らかな蝋燭のように温かく微笑んだ。
「金はあるんだ。使うところもないし、ならアンタに会うために使わせてよ」
「物好きだな……」
すり、と青年が手に滑らかな肌を擦り付けると、桜の髪の男はニカリと笑った。
「今日は何の話を聞かせてくれんの?」
「そうだな。この間話したすぐ下の弟の話の続きなんてどうだ?」
楽しそうに顔を綻ばせて話す青年の顔を、桜の髪の男は目を細めて優しげに眺める。
一夜を買うこの場所で、何もせずにただ話を聞くだけの贅沢な時間を楽しむ。
彼に抱かれたいと大枚をはたくものを蹴散らして、金に物を言わせて彼を買う。買うことでしか許されないその関係に酔っては、連日彼を独り占めにする。
そうして夜通し語り合って、いつの間にか疲れて眠るのだ。
いつまで続くかもわからないこの関係が愛おしくて、切なくて、男はひっそりと眉を顰めた。
今日も気まぐれに濡羽の髪にに触っては、騒つく心を誤魔化して夜は更けてゆく。