狼は逆ねじを食わせる①「上がりましたあ…あっ!お茶碗、ありがとうございました」
寝巻きに身を包んだ彼女はポタポタと濡髪から雫を落としながらふにゃりと笑った。
風邪を引くからこちらに来なさいと促して手ぬぐいで濡れた髪を拭きあげる。
脱力して身を委ねる彼女を微笑ましくも思うものの無防備すぎると小言添えて。
「えへへ、実は若い教官にもこれやってもらったんですよ」
「どういうこと?」
ぴくりと手を止め彼女の顔を覗きこむと彼女もこちらを見上げていた。
「一昨日通り雨に振られちゃって、私も教官もびしょ濡れになって風邪ひいちゃって。昨日の捜索もうまく行かなくて早めに戻ってきたんです」お風呂上がりに教官がこうして拭いてくれました。にへら、と笑う彼女に鬱々とした感情が胸を濁らせる。
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