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    アイム

    @miniAyimu

    黒髪の美少年と左利きAB型イケメンお兄さんに弱い。

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    アイム

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    同棲してる蘭榎。

    ##蘭榎

    煙草の匂いがする。最初に気が付いたのは、それだ。次が、榎本の髪を撫でる感触。誰よりも、榎本の家族よりも、彼を子供扱いする手。高校の時から染めっぱなしで相当傷んでいる茶色の髪を、指先がゆっくりと、飽きもせずに何度も辿る。
    その穏やかさの中でまた眠ってしまいそうになるのを我慢し、榎本は無理に目を開けた。部屋は暗い。すぐ傍に人影があるのが、かろうじてわかる程度。ベッドに深く沈み込んでいた榎本の鼻先に、シャツを羽織った背中があった。三浦さん、と頭の中で反射的に呼ぶ。口から出たのは、別の呼び名だった。
    「らんまるさん」
    声は掠れていたが、彼にはちゃんと届いたらしい。手が止まって、顔だけがこちらを見下ろす。
    「起こした?」
    首を振ったつもりで、顔だけを動かした。直後に、吐息だけで笑う声がする。三浦が、榎本の前でよくする笑い方だった。
    榎本は半身を起こす。たったそれだけを億劫に感じるほど、身体がだるかった。特に腰の辺りが重く、足の間は未だひりひりと熱いような気がした。
    眠り込んでしまう前に何をしていたかを頭に蘇らせて、あぁ、と声を上げたいような気分になる。既に何度目かの行為であるというのに、榎本は未だに慣れない。それに至るまでも、最中も、終わって、こうして一人だけ眠ってしまってから目覚めた時も。三浦はそんな榎本を、笑ったり、呆れたり、困ったり、言い包めたりするけれど、一貫して、始終嬉しそうだった。
    「榎」
    高校の時からずっと続く愛称で呼ばれる。同時に、彼が着ていたシャツを放られた。身体は清められ、下着も穿かせられていたが、それ以外は何も身に付けていなかった。
    「寝なよ。シャワーは朝になってからにしたら?」
    こくん、と子供みたいに首だけで頷いて、榎本は三浦のシャツに袖を通す。それから、
    「蘭丸さんは?」
    と甘えた。
    「もう寝るよ」
    返事はすぐだった。煙草も、揉み消される。榎本はまた身体を横たえて、壁際に寄った。スペースを作る。成人済みの男と成人間近の男が並んで寝るには、三浦のベッドでないと無理だった。そうする用に、彼が大きいものを探したのだ。枕に頭を乗せると、三浦の匂いがした。意識すれば、ワイシャツからも香り立つ。布団をかけられれば、更に自分の匂いを見失った。
    「おやすみ、榎」
    そう言う彼の声もする。そんな中で、榎本は眠るのだ。

    end
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