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    アイム

    @miniAyimu

    黒髪の美少年と左利きAB型イケメンお兄さんに弱い。

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    アイム

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    同棲したい蘭榎。

    ##蘭榎

    十五歳なんて、ほんの子供だった。背ばかりが三浦よりも大きくて。やたらと強気で自信家で、言うことも大きくて生意気で。榎本という後輩は、とんでもないクソガキだった。遠慮のない物言いで年上にも同級生にも突っかかって行って、真面目で必死で、でも不器用でビビリで、笑ったり喜んだりという姿はあまり見せてくれなかった。
    だからあの頃、十七歳の三浦は、十五歳の榎本のことを心配していた。彼だけを変に意識して、声をかけて、背中を押して。珍しいことだ、と自分でもわかっていた。そしてそれは、夏が終わって部活を引退してからも続いていたのだから、更に驚く。彼の昼練を見守って、放課後の部活にもちょくちょく顔を出して、練習試合があると聞けば朝から見に行って。一度、テスト期間中に、勉強を教えるために自宅に呼んだこともある。当然、藤原たちからは、随分と可愛がっているんだな、と突っ込まれた。母からも、まるで弟が出来たみたいね、と笑われた。
    しかし三浦にとって不思議だったのは、やたらと彼の世話を焼きたがる自分のことではなくて、あの榎本がそれらを素直に受け入れていることだった。偉そうなことを言ったり、反発することも度々あったけれど、彼は三浦の言うことなら、よく聞いた。
    好きだったし、好かれていたのだろう。はっきり口に出したことは無かったが、互いにそれに気付いていた。だから、思っていた以上に長く続いて、今も切れない。

    あれから三年経って、榎本も大学生になったけれど、三浦の中にある『子供』という印象は未だ薄れない。例えば、まだ十八歳だというのに、こっそりチューハイのグラスを手にしているところが。未成年でしょ、と注意するけれど、
    「トウヤさんが、飲んでいい、って」
    と、既に舌の回っていない言い訳を返された。
    グラス半分で、もう耳が赤い。いつも力強い目が、とろん、と眠そうに溶けている。甘えた声が、三浦さん、と意味も無く連呼していた。酔っている。これは完璧に酔っている。
    困ったな、と三浦は自分のカクテルを煽った。まだ三杯目だった。追加の注文を頼むと、隣から、うーろんはい、と舌っ足らずに付け足される。苦笑しながら、ウーロン茶にするよう、こっそりと頼み直す。
    「トウヤさん、同棲、始めたらしい、です」
    グラスに残っていたレモンサワーを一口ずつ減らしながら、榎本はそんな話を始めた。思い付くまま喋っているようで、なかなか要領を得ないが、つまりはトウヤがついに想い人との同棲に踏み込めた嬉しさから、この飲み会は開かれたらしい。
    「だから、今日は飲んでいい、って」
    ぐびーっと僅か残った量を飲み干して、榎本はそう締めくくった。なるほど、と三浦は理解する。だから今日は、トウヤがあんなに浮かれていて、酔っ払っているのか、と。普段以上にはしゃいでいるトウヤの姿を横目で見やり、三浦はまた榎本へ視線を戻す。すっかり頬にも赤みが差していた。
    「榎も来る?」
    あぁ酔っているな、と思った。
    「ボクの家に」
    彼らだけでなく、自分も。思い付くままを口にしている。

    end
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