Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    アイム

    @miniAyimu

    黒髪の美少年と左利きAB型イケメンお兄さんに弱い。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🎮 🎧 💖 🍫
    POIPOI 17

    アイム

    ☆quiet follow

    至真のさみしい話。by2018年

    ##至真

    103号室には深夜アニメのDVD-BOXとBlu-ray BOXが高く高く積み上げられるほどたくさん揃っているのだから、深夜一時に再生ボタンを押せば、太陽が地平線を越えて昇ってくる朝六時まで見終らないのは仕方のない話だろう。
    そんなつもりは無かったのに、真澄と二人で徹夜してしまった。
    おかげで、そっと捲ったカーテンの隙間から漏れる早朝の陽射しが目に痛いこと痛いこと。
    知らぬ間に外は眩しい朝で染められていたらしかった。
    だけれど、ごろんと床に転がった真澄は目を開けたり閉じたり、今にも深い眠りに落ちてしまいそう。
    いいよいいよ、俺も一緒に寝ようかな。なんて、まさか揺すり起こすはずがなかったせいか、真澄は欠伸を一つ零してから、ついでのように呟いた。
    「かみなり、やだった」
    蚊の鳴くような小さな言葉だった。だからこそ、それが真澄にとっての真実でもあった。
    やはり、昨夜遅くに至の元を訪れた時に寝惚けて部屋を間違えたと言ったのは単なる言い訳だったに違いない。
    きっと別の理由があるんだろうと悟ったものの無理に問い詰めるような真似はしなかったけれど、何もかもがすっかり終わった頃に白状するのだから、懺悔と呼んでやってもよかったかもしれない。
    真澄は今、まるで敗北したかのように胸の内を吐露してくれたのだ。
    そうして伸びた至の手は、大したことなんかしない。眠たがりの真澄にゆっくり眠るようにと促すために、髪を梳いて優しく撫でてやるばかり。そう、うん、俺も、雷は嫌いだな。子守歌みたいな静かな相槌を零しながら。
    うるさい雷が止んで、朝が訪れて、傍に至がいるから、ここは平和の国だった。
    雨もすっかり上がって、あとは乾きそびれた雫が二つ三つ、草花に引っかかっているくらいだろう。
    綺麗なものしか残されていないから、だから真澄は、やっと安心したように瞼を閉じた。至の服を掴みながら、昨夜の分まで眠ってくれた。
    あんまり良い夜じゃなかったのだろうということは、なんとなくわかっている。
    ここへ逃げて来た時の真澄が、何かを堪えて歯を食い縛る、ひどい状態だったから。
    それを、どう扱ってやればいいのかわからず、こうして朝を迎えても俺は一体どうしてやるのが正しかったのかと悩み続けているけれど、今日のところは決して悪くなかったのかもしれない。
    あんまりたくさんのことは出来ないけれど、真澄がゆっくり眠れますようにと祈るくらいならいくらでもやってやろうと、至は昨晩からずっと同じことを考え続けている。。
    例えば両親の帰って来ない自宅とか、綴が不在の102号室とか、責めるような豪雨や追い詰めるだけの雷鳴とか、そういう真澄に優しくないものなんて、全部無くなってしまえばいいのにね。そんな祈りを。

    end
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👍❤👏👏👏👏👏💗💗💗💗💗
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works