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    アイム

    @miniAyimu

    黒髪の美少年と左利きAB型イケメンお兄さんに弱い。

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    鶴獅子のあられもない話。by2016年

    ##鶴獅子

    「どうかしたのか、小狐丸」
    「……尻が痛い」
    「なんでまた尻なんか。転んだのか?」
    「昨夜、尻の穴にぶち込まれてヒンヒン言わされたんじゃ。察しろ」
    「わかるか、んなもん」

    という小狐丸とのあられもない会話の途中で、獅子王はひょいっと宙に浮いた。
    否、浮いたのではなく、抱えられて持ち上げられた、と表すのが正しい。
    すわ何事かと思えば、いつの間にやら二人の間に鶴丸国永が割り込んでいて、まるで横取りでもするかのように自分を抱き込んでいるのであった。
    顔をしかめて、まるで睨んでいるかのよう。

    珍しい、と獅子王は驚きのあまり非常にドキドキし始めた。
    普段の温厚篤実・余裕綽々といった様子とは真逆の自分本位なその行動から察するに、どうやら彼は腹を立てているらしい。
    有無を言わせぬ厳しい声で、ぴしゃりと言い放つ。
    「獅子王にそういう話をするのは、やめてくれないか」

    小狐丸の話は、それで仕舞いだ。
    鶴丸は、言うが早いか、獅子王を抱え上げたまま部屋を飛び出し、あっという間に離れたところに位置する彼の私室へと運び込んでしまう。
    ぴしゃんと戸も閉められた。
    二人きりで向かい合い、まず強要されたのは正座。
    居住まいを改めると、鶴丸は引き続き叱るような厳しい声で喋り始めた。
    曰く、ああいった話はきみにはまだ早い。
    先刻の小狐丸の話は聞かなかったことにして、今すぐ忘れろ。
    本当なら、そうぺらぺらと他人に言って聞かせるようなことではないし、とりわけ、きみは聞いていいもんじゃない。
    まったく何を考えているんだ、あいつは。普段なら紳士ぶって、狐がだまくらかすように煙に巻くようなことしか言わないくせに。
    話すにしたって、もっと言葉を選ぶべきだし、いやそれ以上に時期を選ぶべきだ。
    三条派に話すならともかく、何だって、きみを選ぶんだ。
    何事も段階というものが存在するんだ、わかるだろう?
    淀みなく、口を挟む隙も無く、滔々と語るのを聞きながら獅子王は、こいつは俺のことをどれほど子供だと思っているのだろうかと胸中で呟いた。

    そういう話。
    そういう話って、どういう話なんだろうな。
    答えは、昨晩小狐丸が尻の穴に何をぶち込まれて、誰にヒンヒン言わされたかってことだろう。
    一体全体ナニをしたんだろうなぁ、小狐丸と誰かさんは。
    つまりは、そういう話だ。

    これが、彼個人のプライベートなお付き合いに対して安易に首を突っ込むなという意味であれば、鶴丸の言い分に素直に頷くことが出来るだろう。
    しかし実際に指しているのはお付き合い云々ではなく、行為そのものの方になる。
    恋仲である二人が深夜にナニをするかって、そういうこと。
    有体に言えばセックスであり、可愛こぶるならえっちに成るし、ちょっとこじゃれた言い方を選ぶなら枕を共にするとかまぐ合うとか、バリエーションは様々。
    その辺りに関しては、検索するか、ディアプラス文庫とかハーレクイン文庫とかで読んで欲しい。

    なんて案内が出来るように、まさかまったくの無知であるはずがない。
    人間の男の身体をもらった以上、生理現象の一つとして逃れられるものではないし、女の気配など欠片も無い男集団はもはや五十人を超えるか否かというほど大所帯であるのだ、知らないでいられるはずが無いだろう。
    人伝に聞きもすれば主の書物を勝手に拝借して学びもした。
    主の私物であるグラビア写真集に始まり、アダルトビデオ等の映像媒体などとうに卒業し、もはや官能小説にまで到達する始末。
    四苦八苦しながらグーグル先生に教えてもらったこともある。
    むしろ鶴丸への恋慕を自覚し男同士でも一般的な男女の付き合い方が可能と知ってからは、余計に精力的に調べたくらいだ。
    確かに実戦経験は一切無いが、性行為に関する興味・知識については鶴丸が考えているほど初心でもないし処女でもない。
    性的快感、性的興奮。一人での慰め方に始まり、一般的な男女の営み、その結果として生まれる新たな生命。もしくは、そこに至るまでの波乱万丈の人間らしい情の変化。
    知ってるよ。どこをどう弄れば果てるのか。誰にナニを挿れてもらえば昇天できるのか。
    鶴丸が言うほど獅子王は初心ではない。
    だけれど、彼は駄目だと言う。

    こうして駄目だと叱られることや危ないからと忠告を受けることは、これまでも度々あった。
    あんまり薄着をするんじゃないとか、一人で無理をするんじゃないとか。
    検非違使が出始めた時に、獅子王を行かせるのか? なんて眉を顰めたり。あれはひどかった。
    お説教、お小言。そういう類のものだ。一期一振や明石国行よりも、もっとひどい。
    だから鶴丸は、おそらく本丸中の誰よりも、可愛い弟と持つ長兄たちよりも過保護であると獅子王は思う。
    今の状態では、その内、俺の娘は誰にもやらん! などと言われそうだ。パパ落ち着いて、恋人はあんただ。
    それを嫌がることなど有り得ない。

    あれほど心も広く器も大きい鶴丸が、自分に対してだけ、変に融通が効かなくなる。あれも駄目、これも駄目。ちょっと引くぐらい過保護である。
    あんまりじゃないかと周囲から咎められても、本人は何言ってるんだとばかりに顔をきょとんとさせるのだから、無自覚で無意識なのだろう。
    本人はそのつもりもないのに、腹の底の愛が溢れんばかりにダダ漏れている。
    彼なりに大事にしてくれているのだろう、ということはよくわかる。
    うっとおしいと思ったことは無い、嫌じゃない。むしろ嬉しい。そこに偽りなど、あるはずもなかった。
    当然だ、こんなにも構ってもらえるのに、誰が嫌がるものか。獅子王を大事に、宝物にしてくれるのは、たった一人だけだと思っていた。その人はもういないから、あんなこと二度と無いのだと諦めていた。
    だけれど、それでは物足りないのも、また事実。
    次、へ。ここから一歩先へ踏み込むつもりは欠片も無いのだろうか。
    これでは蝶よ花よと育てられているような気にもなってしまう。
    便宜上は恋人同士であるのだから、それに伴った行動をして欲しい。
    大事に扱われることは至福の一時であるが、鶴丸にも眠る暴力的な欲をぶつけられることもまた、獅子王にとっては贅沢の一つと成る。あんたの好きにして、イイんだって。

    獅子王は正常な男であるけれど、どうも鶴丸が思う自分がまるで天使か何かのような清らかでまっさらな生き物で、違うと正してやるべきなのかもしれないが、鶴丸の夢をそう無残に壊してしまうことは憚られるし、何より、良く思われているならそのままがいい、と見栄を張りたい気持ちが存在していた。
    勝手に板挟みになって、身動きできずに困り果てている。
    もっと自分勝手に扱っても、いいんだけどなぁ。
    それこそ過激なアダルトビデオばりに一方的で乱暴でも構わない。
    あの鶴丸国永にもそれほど激しい面があるのであれば、むしろ、いの一番に拝ませて欲しい。

    確かに、自分よりも長身で大人びた顔立ちをしているけれど、お兄さんだと感じるけれど、だからといって保護者になってくれと望んだことはない。
    ガラス細工のように大事にされるのは嬉しい。それは揺るぎない事実だ。
    だけど、あんたとだけは対等でいたい。守られるだけではなくて、きちんと返したい。
    こっちは、求められれば二つ返事で股でも何でもおっぴろげる覚悟でいるのだから。
    いい機会だから、ここでカミングアウトしてしまおうかと、獅子王の頭に襲い受けだのベッドインだの朝チュンだのといった単語がよぎった、その時である。

    未だ説教を続けていた鶴丸が、厳かな声で凛と告げた。
    「きみには、ちゃんと、俺が教えるから」
    「………………。えっ。鶴丸が教えてくれんの?」
    「あぁ、もちろんだ。俺以外にはいないだろう?」
    「いない。鶴丸以外に教えてくれるような人、俺にはいないぜ!」

    そっかぁ、と一転して獅子王はニコニコする。
    イイことを聞いてしまった。これはすごいことだ。
    そりゃあ獅子王は初心で処女で幼くて無知なのだから、精神的にも身体的にも導いてもらうのが当然であり必然。
    大人の階段を一歩一歩登るため最初はゆっくりと、上手く出来れば褒美を与え、逆に何度言ってもわからないようであれば時に厳しく激しく。紳士なの鬼畜なの、どっちがタイプかな?
    その相手が鶴丸国永だなんて、考えただけで既に精根尽き果てるまで抜けそうなものだが、そんなことは許されない。
    マスターベーションなんて知らないし、オカズは夕飯のエビフライのことだし、セックス何それ美味しいの?
    純粋無垢な笑顔できょとんとするのが獅子王に課せられた役目である。
    彼の手によってきっちりみっちり仕込まれるその日まで、獅子王は性的知識など綺麗さっぱり忘れることに決めた。
    めでたし、めでたし。

    end
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