キスの日 マトリフにはガンガディアがキスをするタイミングがわかる。マトリフは機嫌が良ければそれに応じるし、忙しければさっさと離れてしまう。そうしたらガンガディアは少し残念そうにするものの、執拗に要求することもない。
今もガンガディアはソファの隣に座るマトリフをそっと見下ろしてくる。ガンガディアはマトリフの暇な時と忙しい時を見分けようとしてくる。マトリフはちょうど読んでいた本に飽きていた。ページを捲る速度が落ちてきて、視線も本から離れがちである。そういったことをガンガディアはつぶさに観察していた。
かちゃり、とガンガディアが眼鏡を置いた音がマトリフにも聞こえた。マトリフは読んでいなかった本の文字へと視線をやりながら、ガンガディアの手が伸びてくるのを待った。
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