209話にも瘴奸がいて良かった〜「あまり無理をなされるな」
瘴奸の言葉に、常興はつんと顔を背けた。玄蕃が率いる狐達によって、小笠原は散々な目にあってしまった。
常興は濡れ縁に座り、桶に浸した手巾で体を拭っている。常興も新三郎と共に戦ったが、まんまと罠に嵌り、落とし穴に落ちてしまった。そのせいであちこち打ち身ができている。それ自体は大した怪我ではないものの、一度座ってしまうと立ち上がれないほどの疲れを感じていた。
瘴奸は常興と同じように濡れ縁に座り、のんびりと月でも眺めているようだった。
常興は深いため息を吐く。まだ後処理は終わっていない。鎮火は済んだが、残った兵糧を調べることは新三郎に任せていた。少しだけ休むつもりでここへ来たが、いい加減に戻らねばならなかった。
1727