「痛っテェ…」
お世辞にも綺麗とは言い難いコンクリートの地面に倒れ、薄れていく場地の視界に真っ黒なスニーカーが映る。
あれは、たしかナイキの何とかってモデルの。ダチが騒いでいた気がするがもう随分と昔の話だ。まだガキで金もなくて、ショーウィンドウ越しに「いつか欲しい!」と騒ぐそいつのキラキラした目がガラスに反射していたのを覚えてる。
「ひとの店の前で何してんの?邪魔なんだけど」
どこか甘やかさのある鋭い男の声が場地の頭に落ちる。組織の人間じゃなさそうだが、顔を確認するよりも場地の意識が落ちるのが先だった。
◆
カサカサと紙の擦れる音を聞きながら、場地は薄く目を開ける。知らない天井と薄暗いダウンライト。どこかで嗅いだことのある様な、鼻の奥にしみるにおいと脇腹の痛みが場地の顔を歪めさせ少し掠れたうめき声が漏れてしまった。
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