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    saipoko2021

    @saipoko2021

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    saipoko2021

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    『結果が発表された夜の二人』を題材に書いたSSです。
    恋人同士な二人。

    DRBを現実でしか知らないので、(ドラパ・コミカライズは半端に履修)
    矛盾や解釈違いは笑って流して頂けると有り難いです(汗)

    #ヒ腐マイ
    hypmic bl
    #銃二
    cannonIi
    #銃兎
    #二郎
    erlang

    『その夜にー銃二ー』 その瞬間。
     天を仰いだその横顔に、涙の幻が見えた。




     2thDRB決勝が終わり、それぞれに割り当てられたホテルの部屋でスマホ画面を操作する。LINEにメッセージを一言、それだけを打ち込んで銃兎は立ち上がった。
    「ん?どっか行くのか?」
     我らの王の詰問に夜風に当たってくるとだけ告げて部屋を出る。
     今日の出場者がホテル外に出ることは禁じられている。閉じられたフロントを通り過ぎ、中庭へと続くガラス扉を開けた。
     途端に吹き付ける冷たい風に思わず首を竦ませる。
     墨を流したような空には星も見えない。闇に沈む庭を迷いなく進んでいくと背後でもう一度扉が開く気配。
     かつかつと石畳に足音が響く。それは、いつものスニーカーとは違う音。こちらへと近付く気配に足を止め、銃兎は煙草に火をつけた。
     闇に浮かぶ小さな火が、その顔を一瞬照らして消える。
     あと数歩を残して、足音が止まった。
    「銃兎、なんだよ。」
     ぶっきらぼうな物言いは常と変わらず、だからこそ銃兎の笑みは深まる。
     黙ったまま、自分に向かって一歩を踏み出すその表情に二郎はふいと目をそらした。まだ、まだその顔を直視できない。そんな簡単に割り切れるものじゃない。
    「目をそらすなよ、二郎。」
    「……、」
    「顔は上げとけ。間違っても俯くな。」
    「っ!えらそうにっ!」
     淡々と諭されて思わず叫ぶ。
     鋭くにらみつけても、薄笑いを浮かべた銃兎の表情は変わらない。
    「自分から負け犬になるんじゃねぇよ。尻尾巻いて降参か?」
    「ふざけんなっ
     そんなこと言う為に呼び出したのかよ!!」
    「で、どうなんだ?」
    「誰がっ誰が負け犬になんかなるかよ!
     俺はっ!」
     高ぶる感情に言葉を詰まらせる二郎を、自分の胸に抱き込む。
    「……っ」
    「堪えるな。ここにいるのは俺とお前だけだ。」
     必死に唇を噛みしめる二郎の耳元に、静かにささやきかける。
    「カメラも、中王の耳も、兄弟の目もここにはない。……だから、いいんだ。」
     心の声を、飲み込むな。
    「っっ」
     声は、ない。けれど、揺れる気配と濡れる感触に二郎の感情が揺り起こされた事を知る。……それで、いい。
     それ以上は何も言わず、ただ、抱きしめる腕に力を込める。応えて、ぎゅっと胸元を握り締める感触。
    「……勝ちたかった。」
    「ああ、」
    「ほんとに、勝ちたかったんだ。兄貴と、三郎と、三人で。今度こそって……!」
     血を吐くような叫び。むき出しのリリック。
     心のままに吐き出されるそれらを、抱きしめた腕で受け止める。

     それで、いいんだ。
     

     しばらく、そうしていて。
     もぞりと身じろぐ二郎に少しだけ腕を緩めると、こつりと胸元に額をつけた。
     そうやって銃兎の目から自分の顔を隠して、ようやく口を開く。
    「……なあ、」
    「なんだ?」
    「あのとき。
     アンタは、こんな景色を観てたんだな。」
     頂点を前に、伸ばした手が空を切るこの口惜しさ。負けに違いなど無いけれど、それでも全く違っていて。
     それは、かつて目の前の男が見ていた景色。自分が、今まで知らなかったもの。
    「……生意気。」
     額を小突いてやれば、いてっと軽やかな声が返ってくる。
    「俺に追いつこうなんざ10年早い。」
    「言ったな、次こそは俺たちが勝ってやるさ。
     あんた達にも、誰にも負けない!」
     そうやってただ真っ直ぐにぶつかってくる姿は、銃兎にはいささかまぶしくて。ふと悪戯心が湧き上がる。
    「……、」
    「な、なんだよ?」
    「いや、……二郎。」
     呼ばれてきょとんとする二郎と合わせた目をそらさず、まだ幼さの残る唇に自分のそれを重ねた。
    「んっ」
     突然のことに目を白黒させる初な反応を楽しみながら、ゆっくりとその唇を食む。一拍遅れて暴れ出す体を難なく抱き込んでよりその口づけを深める。
    「んーっ!んん、……ぅん」
     強張る体から力が抜けてあまやかな吐息を洩らしたところでようやく解放してやれば、くったりとその身を銃兎に預けてきた。
    「何すんだよ……こんなとこでぇ」
    「あんまりお前がかわいかったんでな。」
    「……言ってろ、」
     気恥ずかしげに顔を背ける二郎のうなじは桜色。
     胸を過るいとおしさのままに、そっとその黒髪に唇を寄せた。


     できるなら、おまえはそのままで。

     俺には眩しいほどの光でいて。
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