ChocolatlChocolatl
ソファに半ば寝そべるようにしたハングマンの上に我が物顔で乗り上げてくる様はまるで猫のような気ままさを感じるが、ハングマンの上に乗り上げているのは猫ではない。
猫にしては大きすぎるし、そこには愛らしい耳はおろか揺れる尻尾さえも存在はしない。
その気ままにも思えるハングマンの恋人は手にした小箱から取り出したひと粒を指先で摘むとハングマンの唇に無言で押し付けた。
唇に押し付けられたそれを口の中へ招き入れればとろりと甘い物質が柔らかく舌の上で溶けて広がる。
光の少ない室内では深い飴色にしか見えない瞳が細められ、くすりと笑った。
「どうだ?」
「何がだ」
意味がわからず問い返したハングマンの目の前で、ルースターは指先に残ったチョコレートの名残を舌で舐めとった。
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