ある男とある鬼の話 ある山奥にある、ある村では昔から森に潜む妖に困らされていた。
その村の者たちは森で採れるもので生計を立てているため、度々森へと入って行くのだが、その森で奇妙で不穏なものに巻き込まれ、精神を侵される者が極たまに出ることがあった。それでも森を必要としていた村の者たちは森に入っていった。注意深くしていれば、まだそれは避けることができていた。
しかしそれがある時代から『森に入った者が帰らない』ことが頻繁に起こるようになった。無残な姿で見つかることまであった。
その出来事は今までの奇妙で不穏なものから、酷く恐ろしいものとして語られていった。ある時代、運よく逃げ帰ってきた者は『鬼を見た』と証言した。
村の者は恐れ慄いた。
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