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    cho_tyo

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    暇な日は美味しいものを食べるに限る③

    最後は豊前のターン。焼肉食べに行きます。これにて三振りの平成遠征はおしまいです。

    暇な日は美味しいものを食べるに限る③辺りはすっかり暗くなり、街は灯りが光り出していた。昼間とは違う明るさが周囲を照らしていた。
    三振りは上機嫌で本日の最終目的地へと辿り着いたわけだが…

    「めっちゃ並んでんなぁ」
    「休日の焼肉屋が混むことを忘れてたにゃ……」

    今日はこの時代では土曜日。翌日も休みの人が多いことも相まって、焼肉屋は満員。待合の場所には人が溢れて、店の外にまで人が待っている状態だった。画面には『待ち時間70分』と表示されている。
    豊前江と南泉は人の多さに少しだけ落胆したようで、肩を落とす。先ほどまで派手に戦闘をしていたのだ、当然のように空腹なのである。その状態で70分も待てる訳がない。
    そんな二人を他所に、長義はすたすたと人を掻き分け扉へ向かい、店内へと入っていこうとする。

    「おいおい、お前、順番は守れよ!」
    「そうだぞ、いくら腹が減ってるからって、守るもんは守んねーと」

    南泉が長義の腕を掴み、静止させる。豊前江も長義の肩に手を置いた。長義は、こいつら何をやっているんだ?というような表情を二振りに向けて、言い放った。

    「昼間に行ったハンバーガーの店も、合間に寄ったスタバという店も、皆一様に人が溢れていた」
    「おう……」
    「そうだな。めちゃくちゃ人が多かったな」

    長義はわざとらしい溜息をつく。

    「そこから導き出される答えは?」
    「は?」
    「えーと?」

    長義の質問に、二振りは首を傾げて考える。答えが出なさそうな様子に長義は少しだけ肩を落としつつ、南泉と豊前江の手首を握り、店内へと連れていった。

    「その答えは……」
    「3名で、19時予約の一文字様~!お席ご用意できましたので、こちらへどうぞ~!」

    店内に響く店員の声、3名、一文字様と呼ばれてようやく二振りは気付く。
    誉を取った時以上にしてやったりという顔を浮かべた長義がそこにいた。

    「予約してたのか!!にゃ!!」
    「すげぇ!!いつの間に予約してたんだよ!!」
    「まぁ、戦闘が始まる直前にね」

    長義の持つ端末の画面には
    『〇月〇日19時に焼肉屋食べ放題プレミアムコース予約しておいたよ~。お土産わすれてないよね?よろしく~ 加州』
    我が本丸の近侍様からの連絡が綴られていた。

    どや顔の長義は大抵の場合、南泉を少々苛立たせることが多かったが、今回ばかりは救世主に見えた。
    よくやったと褒めてやってもいいかなと少し思ったが、それは更に調子に乗りそうなのでやめておいた。
    南泉の代わりに豊前江が思い切り長義の頭を撫でまくっていた。長義の頭はぼさぼさになっていたが、どこか楽しそうだった。

    「さぁ、心ゆくまで食べようじゃないか」
    「そうだな!すっげー楽しみだ!」
    「そうだにゃ!」

    案内された席へ座ると、食べ放題の説明を受けた。どうやら注文はテーブル奥のディスプレイでするようだ。
    店員がテーブルの下を弄ると、真ん中の丸く網が置かれた場所が温かくなる。どうやらここで肉を焼くようだ。


    早速、ディスプレイを見ていく三振り。あれがいい、これが食べたい。これも気になる。口々に食べたいものを言ったり、画面を指さしたり、これが食べたいが…と悩んでいると、
    「食べ放題なのだから、とりあえず頼んでおこう」と聞こえて、頷くと同時に注文する。
    そんなことをしていると、画面の真ん中に大きな文字で『これ以上注文できません。注文ボタンを押してください』と表示された。どうやら一回の注文には限りがあるらしい。
    もっと頼みたい気持ちもあったが、ひとまず注文のボタンを押した。

    「あまり頼めなかったな」
    「……注文ボタンを押したら、注文したってことだよにゃ?」
    「ということは……」

    そして、また画面を見て、あれもこれもと注文をしていくのだった。

    そうこうしている内に、注文した肉たちがどんどんテーブルへ運ばれてきた。
    塩タン・カルビ・ロース・鶏モモに、ホルモン系。生卵がついたカルビの焼きすきなるものまで。付け合わせ程度だが野菜も忘れずに……。もちろん箸休めと称したキムチやサラダもしっかりと頼んでいる。
    すべてが三人前なので、皿も大きくなるようで、テーブルに所狭しと肉が並んでいく。
    わくわくしているのが隠し切れていない、楽しげな表情でテーブルを眺める。

    「よし。じゃぁ焼くか!!」

    待ちきれないとばかりに豊前江はトングを掴んだ。どれから焼けばよいのか…と悩んでいると、長義がふと考え込むように呟いた。

    「とりあえず、あっさりした肉から焼けばいいんじゃないかな?三振りいるから、三枚ずつ焼いていけばいいのではないか?」

    一瞬時が止まった。
    南泉も豊前江も目をパチクリさせている。長義は何かおかしなことを言ったのかと、少し動揺しているようだった。

    「何かおかしなことを言ったかな……?」

    長義の少しまごつくような問いかけに、はっと我に返った豊前江はトングで塩タンをどんどん網の上に乗せていく。
    南泉も我に返って、長義に箸を渡しつつ、言い聞かせるように話した。

    「食べ放題で、時間制限もあるからよぉ……。こういう時は!」
    「とにかくいっぱい焼いて、いっぱい食う!にゃ!!」
    「だな!!」
    「なるほど!それは一理ある!」

    二振りの満面の笑顔に、長義もつられて笑顔を見せた。
    食べ放題の焼肉店なのである。作法も焼く枚数もそこまで考える必要などないのだ。焼きたい肉を食べたいだけ焼いて食べる。それだけなのである。
    互いの焼肉への認識が共有されたところで、食べ放題の火蓋は切って落とされた。

    「美味しいにゃぁ~!」
    南泉は次から次へと焼かれた肉を口に運び、体中を駆け巡るかのような肉の旨味に感動しているようだ。
    「んっ!このお肉も美味しいっ……」
    初めて食べる焼肉に目を輝かせている。箸が止まる気配はなさそうである。
    「これもうめぇ!!これも!なぁっ!これも食ってみ?めっちゃうめぇ!」
    豊前江も待望の焼肉に来れて感無量のようだった。美味しいと思った肉は南泉と長義にどんどん薦めている。どうやら豊前江はカルビとハラミが気に入ったらしい。
    各々が食べたい肉を焼き、気になる肉を乗せ、焼きあがった肉を取り、たれで食べるか塩で食べるか悩みつつ、食べた分はまたしっかりと注文をして……。
    焼き終わった皿がテーブルの端にどんどん積まれていく。網の上は常に肉が焼かれている。

    「あっ!それは俺が焼いていた肉だ!」
    「は?もう焼けてるから食えるだろ?」
    「まだ焼けてないだろ。もっと焼け」
    「これくらいがちょうどいいんだにゃ~」
    「山姥切は良く焼く派なんだな!オレはほどほど派!!」

    さっと焼く派の南泉が、長義がじっくり焼いていた肉を横から掻っ攫ってしまい、プチ小競り合いが始まる。それも楽しいのか、怒っているというよりは言い合って笑っているようだ。声が弾んでいる。豊前江もそれを見て、笑っている。笑いながら焼けた肉を数枚取っては食べている。その中には長義がじっくり焼いていた肉も入っていたので、長義が豊前!!と声を荒げる。
    豊前江は爆笑しながら、網にハラミを乗せまくっていた。南泉も声を上げて笑っている。

    「軽く焼くのを食べてもいいから、俺のはしっかり焼かせてくれ!」

    トングを豊前江から奪って、長義も網の上に肉を乗せていく。豚トロと塩タンが気に入ったようである。豚トロが焼けていくと、油が滴り落ち、そして思っていた以上に大きな炎が上がる。

    「すっげぇ!!燃えてる!!」
    「笑っている場合か!」

    豊前江は燃え盛る網を見て、さらに笑っている。長義はただただ驚いて、俺が置いた豚トロが!?と慌てふためいている。

    「氷入れたらいいんだにゃ!」

    はいはい、と落ち着いた様子で氷を網の上に数個落とした。燃え盛る炎は次第に落ち着いてきた。無事沈下した網を見て、胸を撫で下した。
    燃えた網を交換してもらいつつ、さらに注文を追加していく。
    新しい網に、たっぷりとタレに浸かったつやつやと光る肉をまた乗せていく。先ほどまで食べていた薄く切られた赤い肉とは違う形状をしていた。ぷりぷりとしたピンク色のものだった。ホルモンである。
    焼くとまた油が滴り、肉とタレが一緒に焼けた香りがまた広がる。その匂いで、また腹が減るような気持ちになるので、不思議な食べ物である。
    三振りはしっかり焼いたその肉を、各々取り口へと運んだ。ぷにっとした触感で噛めば噛むほど肉の旨味が口に広がっていくのが分かった。

    「これも美味いな!」

    満面の笑みで豊前江は網に乗っているホルモンをもう一つ取る。南泉は、少し驚いたような表情で豊前江を見る。

    「食うの速いな!?オレ、まだ飲み込めてない、にゃ」

    南泉はまだ口の中のホルモンがまだ飲み込めてないようだった。もぐもぐと口を動かしつつ、ようやく飲み込んだと思ったら、もう一つホルモンを皿へと取る。食べにくいかもしれないが、味はどうやら気に入ったようだ。
    何事にも速い豊前江とそこそこ食べ方と知っている南泉が、ホルモンを食べては焼き、取っては食べてまた焼いて、を繰り返している。二振りはワイワイとあれが美味いこれをもう一度頼みたいと話している。
    ふと、気付く。

    「山姥切~?大丈夫か?」
    「まだ飲み込めてねぇのか?」

    ワイワイしている間、ずっと黙っていた長義。二振りに話しかけられても首を上下に振って頷くだけである。
    若干眉間に皺を寄せつつ、もぐもぐとずっと口が動いている。ずっと噛んでいる。完全に飲み込むタイミングを逃しているのであった。
    だんだん険しい顔になってくる長義。しかし一度口に入れたものを吐き出すなど彼にはできるはずもなく、ずっと口を動かしているのだった。
    そういえばと、南泉は豊前江にどのタイミングで食べたのか聞いたが、豊前江の答えは「わっかんねぇ!今!って思った時に飲み込んだぜ!」だったので、何も参考にできなかった。

    「っはー-!!味は美味いが食べるのが難しいな、これは!」

    どうにかこうにか飲み込んだのか、ようやく長義が口を開いた。味は良かったらしい。ただ、さすがにもう一つとはいかなかったのか、ホルモンの隣でちょうどよく焼けている上ロースに手を伸ばすのだった。隣で豊前江がよほど気に入ったのか、ホルモンをもう2人前注文していたので、長義もハラミを追加した。南泉は二人がホルモンでワイワイしている間に、静かに上カルビの焼きすきと長~いハサミで切って食べるカルビを頼んでいた。


    「ところで、にゃ……」

    タッチパネルを見ながら南泉が話しかけた。顔は少し険しく見える。画面を二振りに見えるように持ち替えた

    「シメは、どうするにゃ…」
    ラストオーダーはあと10分ほどである。
    タッチパネルの画面には数種類のご飯ものと麺類が表示されていた。
    いや、そもそも約80分間肉を食べ続けていたのだ。シメどうこうの前に腹に食べ物が入るのか?という疑問が周囲のテーブルに座る客たちの脳裏に浮かぶ。それほどまでに食べ続けていたのである。きっと、銀髪の青年はもう食べられないと上品そうに言うのだろう、とか、黒髪の彼もあれだけ肉と白米を食べていたのだから食べないのでは?と考える。

    「これも食べ放題なのかな?」
    「おう!そうにゃ!」
    「そうか。ならば俺はこのクッパと冷麺をいただこうかな」
    「じゃぁ、オレは石焼ビビンバと卵スープ!!」
    「だったらオレは、冷やしうどんにするにゃ~!」

    注文の内容を聞いて周囲の客は驚いた。まだ食べられるのか!と。ただ、本当に楽しそうに美味しそうに食べている彼らを見ていて、自然とほかの客たちの箸も進んでいった。あとで食べ過ぎたと後悔の言葉を吐きつつ笑い合うのも食べ放題の醍醐味であろう。
    ただ彼はただの人ではなく刀剣男士なので、人とは造りが少し違うのかもしれない。よく動いているからかもしれないが、とてもよく食べるのだった。

    しばらく経って注文した米と麺が届けられた。テーブルの上を彩る大きめの器たち。クッパは卵がトロトロなのが見るからにわかる。器からもわもわと湯気も上がり熱々なことが伝わってくる。石焼ビビンバに至っては湯気というより熱気と言った方が良いかもしれない。じゅわじゅわと音を立てて焼ける米やタレ、具材が焼けているのが音だけでもわかる。この音だけでも美味しいのだろうと伝わってくるのだから、不思議である。
    冷たい麺類も、麺がキラキラと輝いている。冷麺は銀色の器に入れられていて中にも氷が入っている。視覚からも涼を感じられる。うどんは器もひんやりとしている。上には山芋のとろろがたっぷりとかかっていた。しっかりとすりおろされ出汁も加えられたのだろうと分かる。


    並べられたシメのご飯達を目の前にして、三振りは目を輝かせている。先ほどまでたらふく肉を食っていたこともすっかり脳内から消えたのか、勢いよく各々が頼んだご飯や麺に箸を下した。

    「めっちゃ美味ぇ!!まだ食ったことない美味いものがあったんだな!!」
    「うどんもさっぱりしてうめぇにゃぁ!!」
    「クッパもとても美味しいよ、冷麺も初めて食べたが、これはいくらでも食べられそうだね」

    今日初めての食事をしているかの如く三振りは勢いよく食べ進めていく。その食べっぷりはもはや圧巻である。

    美味しいと合間合間に感想を挟みつつ、食べていると突然長義が声を上げた。どこか焦りのような色がある。

    「デザートをまだ決めていなかったのではないかな!?」
    「そうだ!まだ選んでねぇ!」
    「時間もあんまり無いぞ、すぐ決めるにゃぁ!」

    すぐさまタッチパネルとにらめっこを始める。
    すぐに決まれば良いのだが……いかんせん……

    「食べ放題のデザートなのに、こんなに種類があるなにゃんて……」
    「どれも美味しいそうで……選び難いな……」
    「だめだ。どれも食いたくなっちまう……」

    画面の中には多種多様なスイーツの画像が並んでいる。どれも輝いて見えるようだ。
    アイスもあればパフェ、パンケーキまで揃っている。なんと期間限定のスイーツメニューまであるのだ。三振りは至極頭を抱えてしまった。
    どうしてここまで悩んでるいるのかといえば、お一人様一品だからだ。デザートも食べ放題ならこんなにも悩まないだろうに……。


    「決めた……!オレはこれにするぜ!」

    豊前江は意を決したようで、タッチパネルに指を置いた。期間限定のパフェを頼むようである。

    「君がそれを選ぶのであれば、俺はこれにしよう」

    長義は豊前江に続いて、一つの画像を選ぶ。それは柑橘類のシャーベットだった。

    「に、にゃぁ……どうするにゃぁ……よし、オレはこれにす!にゃぁ!!」

    南泉は悩みに悩み抜いてようやく腹を括ったようだった。選んだのはクリームブリュレである。

    なんとか時間内にデザートを頼めたことで安心したのか、まだ食べかけていたシメのご飯と麺を食べることを再開した。
    先ほどの混沌とした悩みの時間が嘘のように穏やかである。
    ちょうど長義がクッパのスープを飲み干したところで、デザートが登場した。
    悩んで悩んで選び抜いた自分のデザートは、どうにも今まで食べた甘味よりも輝いて見えるようだった。
    豊前江がパフェのクリームもスプーンで一救い。長義がシャーベットを口にする。南泉はクリームブリュレのパリパリとした部分をスプーンで慎重に砕いている。
    小さめのスプーンで一口食べると、三振りは口に広がる甘さに思わず声をもらす。

    「「「うまぁ〜」」」

    声もタイミングもまったく同時に出たことで三振り共々声を上げて笑ったのだった。

    宴もたけなわ。デザートもしっかり食べ終わり、制限時間の2時間もあっという間に経過した。
    美味しいお肉にご飯、最後はデザートまでも、心ゆくまで食べられて満足そうな表情で三振りは会計のために席を立つ。

    食べ放題とタッチパネルは良いものだな。豊前が店員を惚れ殺さないですむ。
    今度行くときもこういう店に来たら犠牲者は少ないんだにゃ。

    南泉と長義は今日の豊前の犠牲者達を思い出し、小さく頷く。豊前江の笑顔はあまりにも多くの被害を出す。遠征するには如何に被害を少なくするかも考えなくてはならないのである。

    さて会計を南泉が済ませた後、店員がこちらどうぞ、お口直しですと、小さなガムの粒を3つ豊前江へと差し出した。
    豊前江は素直に受け取って、それがガムだと認識したその瞬間だった。

    「これ、くれんのか?あんた、すげぇ良いヤツだな!あんがとな!!」

    今日一番の笑顔が無防備な店員を襲う。美味しいものを沢山食べて満足している豊前江の満面の笑顔である。食らった者はひとたまりもないであろう。
    店員は声も出せないまま、顔も首も掌も真っ赤にして、そのまま静かにレジカウンターの中へと消えていった。あまりの眩しい笑顔に腰が抜けてその場に座り込むしかなかったのである。
    豊前江は何がどうなっているのか良くわかっていないのか、ガムを一粒ずつ南泉と長義に渡した。
    そのまま三振りは店を後にしたが、満足そうに鼻歌を歌う豊前江の背中を見つめながら、

    結局どうあがいても豊前に勝てる者はいないのか……
    タッチパネルでも無理か……すげぇな豊前江

    二振りはもうどうにもならないことを悟って少しだけため息をついたのだった。
    そんなことなど気付いていない豊前江を先頭に店を出た三振り。

    春と言えども夜になると吹く風は冷たい。だが、焼肉の熱で火照った体にはちょうど良い熱冷ましのようであった。
    今日一日一頻り、美味しいものを食べて満足したのか、冷たい春風が心地よく感じる。

    「楽しかったし、美味かったな!」
    「そうだな。思った以上に良かったよ」
    「素直に楽しかったって言えばいんだにゃ」

    憎まれ口も反論する言葉もどこかいつもの鋭さはない。充実した時間を過ごせば、心は豊かになるのだろう。三振りの顔には今日の始まりにあった退屈さなど微塵も感じられず、清々しい笑顔で彩られていた。

    「じゃぁ、次は山姥切の行きたいとこへ行くんだな!」
    「そうだにゃ~。ちゃんと決めとけよ」
    「そうだね……。じゃぁ次は寿司でもどうかな。回る寿司があると聞いた」

    足取り軽く帰路に就く。歩いていく足元では夜桜がふわりと舞った。

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