天国に一番近いこの場所で Maverick Ver. 明るい日光が優しく降り注ぎ、穏やかで静かな空気が漂うこの場所は、天国に一番近しい場所、墓地であった。人の気配がない墓地の一本道を一人の男が歩いていた。ピート・“マーヴェリック”・ミッチェルである。
彼は、親友夫妻の墓参りにやってきていた。毎年の命日はもちろん、大きな任務後などにもマーヴェリックはよく墓参りに来ており、今日は先日の極秘任務を終えたため墓地にやって来たのである。
行きなれた道を無言でマーヴェリックは進んでいく。目的の墓まで到着した。親友である“グース”と“キャロル”の墓である。
墓に着くとマーヴェリックは持ってきた花束を供えて、目線を墓標に合わせた。
「…久しぶりだな、グース、キャロル…。元気かい…?僕は元気だよ。」
いつものように親友に話しかけるマーヴェリックだが、いつものように話が続かなかった。普段なら、最近の戦闘機の事、任務で大変だった事、上官を怒らせた事、を生前3人で話していたように話していたが、今日は続けようとしても言葉が出てこないのか、口を開けたり閉めたりしていた。
そんな状態が数秒続き、その後口をキュッと閉めたかと思うと、マーヴェリックは崩れ落ちた。顔は地面に向いているため見えないが、嗚咽が聞こえてきたため、おそらく泣いているのだろう。
「…すまない、すまない…グース、キャロル…。ルースターを、ブラッドリーを危ない目に合わせてしまった…。」
「キャロルに…言われていたのに…ブラッドリーをパイロットにしないでって…でも、止められなくて…」
「…任務も、違うパイロットを指名すれば良いのに…それもできなくて…。」
「俺は、サイテーだ。…願書を抜いて大切な時間を奪ったのに、ブラッドリーと飛べることに喜びを感じていた…。」
嗚咽に紛れて出てきたのは、マーヴェリックの親友に対しての謝罪と懺悔であった。
キャロルとの約束である彼女らの息子、ブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウをパイロットにしないという約束は達成されず、先日の極秘任務には参加メンバーとして名を連ね、尚且つマーヴェリックは本番の任務にルースターを指名してしまった。今回は何とか無事生還出来たが、危険に会わせないと誓っていたのに、命を懸けて守ろうと思っていたのに、出来なかったことがマーヴェリックに重く圧し掛かっていた。しかも、パイロットとして、同じ空を飛べることに淡い喜びを感じていたことがマーヴェリックにさらなる罪悪感を感じさせていた。
「…あぁ、すまない…すまない…どうか、嫌わないで…グース、キャロル…」
マーヴェリックの悲痛な懺悔と嗚咽は、明るく静かなこの場所ではよく響いた。