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    さち倉庫

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    POIPOI 23

    さち倉庫

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    忘羨/会社員藍湛×専業主夫魏嬰/現代AU

     専業主夫、魏無羨の朝は少しだけ遅い。何度鳴ったかわからない目覚まし時計が再び鳴り、魏無羨は小さく唸りながら目覚まし時計に手を伸ばし音を止める。それから自分の隣のスペースをぽんぽんと叩いたり、探るような手つきでシーツの上をなぞる。

    「……らんじゃん」

     彼はぽつりと呟いてから体を起こし、猫のような欠伸をしながら背伸びをするとベッドから下りた。そこで食欲をそそるいい匂いが鼻先をくすぐり、魏無羨の意識がはっきりする。寝室を出るとリビングには彼のパートナーである藍忘機がテーブルに出来上がったばかりの朝食を並べていた。
     魏無羨は藍忘機に近寄り抱き着くと軽くキスをする。

    「藍湛、おはよ!」
    「おはよう、魏嬰」

     藍忘機は僅かに微笑むと魏無羨がしたようにキスをした。起床後のキスは日課のひとつで魏無羨はふにゃりと幸せそうに笑った。
     それから魏無羨はキッチンに立つと会社員である藍忘機が食べる弁当を作りはじめる。その間、藍忘機は一足先に朝食を摂るのだ。一人で食べるのは少しばかり寂しさを覚えるが、魏無羨が自分の為に弁当を用意してくれていると考えればその寂しさもどこへやら。
     テーブルに並んだトースト、ハムエッグ、サラダ、コーンスープを黙々と食べている藍忘機に魏無羨が話しかける。

    「なぁ、今晩なに食べたい?」
    「……君が食べたいもの」
    「俺? うーん、最近すっかり寒くなってきたしなぁ……あ、鍋とかどうだ? キムチ鍋!」
    「うん。それにしよう」

     よし、決まりだな!と魏無羨はにこりと笑う。部屋に射し込む朝日も相まってその笑顔はいつもより眩しく見え、藍忘機は目を細めた。

    「ほらほら、俺に見惚れるのもいいけど朝メシ食べ進めないと遅れちゃうぞー」
    「うん」

     こくりと頷き返して藍忘機は黙々と朝食を続ける。
     魏無羨は弁当箱におかずを詰めていく。殆どが作り置きのものだが玉子焼きだけは朝に焼くことにしている。ほどよく焼きあがった赤い玉子焼きをまな板に移し、切り分けて弁当箱に二つほど入れる。そして白米をよそいひと手間加える。このひと手間が魏無羨が弁当作りをする上での楽しみだ。あとは蓋をして弁当箱用の巾着に箸を添えて入れるだけ。
     きゅっと巾着の口を閉めると同時に藍忘機が椅子から立ち上がった。どうやら食べ終わったようだ。
     空になった皿やカップを流し台まで持ってくる彼に対し魏無羨は俺がやるからいいのに、と言うが本人は無言で首を横に振る。
     それから藍忘機はスーツとコートに袖を通し通勤用のカバンを手に取ると玄関へと足を運ぶ。そんな彼の後ろを歩く魏無羨はまるで慎ましやかな妻のようだ。
     汚れひとつない革靴を履いた藍忘機が魏無羨に向き合う。

    「今日は帰り何時くらいになりそう?」
    「いつも通り。定時になったらすぐに帰る」
    「俺のために?」
    「君のために」
    「んっふふー。嬉しいなぁ! 藍湛だーいすき!」
    「私も君が好き」

     玄関で熱い抱擁をし、二人は何度か口づけ合う。名残惜しそうに唇と体を離すと魏無羨は手に持っていた弁当箱を渡す。

    「いってらっしゃい」
    「いってきます」

     最後にもう一度だけ口づけてから藍忘機は出勤する。その後ろ姿を見送った魏無羨は踵を返し再びリビングへと戻った。
     リモコンを手に取りテレビを点けながら椅子に座り、テーブルの上に用意された朝食を口にする。

     ──今日はさっさと洗濯を済ませよう。洗濯機が止まるまでの間に部屋の掃除をする。今日は天気もいいし布団も一緒に干して、そうしたら昼になるだろうから昼メシを食べたら夕飯の買い出し……でいっか。うん、そうしよう。

     もぐもぐと朝食を食べながら一日のスケジュールを頭の中で組んでいく。主夫業もすっかり板についてきたなと自分ながらに感心した。
     朝食を済ませ、洗い物をし、洗濯物を洗剤と一緒に洗濯機の中に放り込む。スイッチを押せば洗濯開始。次は布団を干す。ベッドから掛け布団や毛布、敷布団と剥がしベランダの柵に引っ掛け軽く叩く。

    「今日はふかふかの布団で寝れるぞ!」

     太陽の匂いがする布団に包まれながら愛する旦那と一緒に眠る夜が今から楽しみだと魏無羨の頬が自然とゆるむ。
     さて、次は部屋の掃除だ。まずは掃除機をかけ、それが終わったらフロアワイパーでフローリングを磨く。二度手間のように見えるが掃除機では吸い取れなかった埃などをフロアワイパーで取り除くことができ、除菌対応のウェットシートを使えば更に清潔に保つことができる。
     そのあとは棚の隙間やテレビ台など細かなところを手作業で拭いていく。普通は手順が逆ではないかと思われるが、最後に掃除機をかけると風圧で隠れていた埃が舞い上がりせっかく拭き取った箇所がまた汚れてしまうのだ。

    「ふぅ、こんなもんかなー。あ、洗濯機とまった」

     掃除が一通り済んだタイミングで洗濯機が電子音で終了を知らせてくれた。
     洗濯物を籠に移し、再びベランダへと移動する。あとはいつものように手早く、かつ皺が残らないように手で叩きながら干していくだけ。

     ここまで終わらせて魏無羨はふぅとひと息吐く。リビングに入り壁の時計を見るともう少しで昼時だった。

    「藍湛もそろそろ昼メシだし、俺も何か食おう!」

     とは言え、平日昼間のひとり飯。そんなに手の込んだものは作らない。魏無羨はキッチンにある棚の中から一袋の即席ラーメンを取り出し、片手鍋で湯を沸かすとその中に麺を放り、丼を用意してスープの素と調味料を入れた。麺を箸でほぐしちょうどいい硬さになったところで湯と一緒に丼へ移し替える。
     見るからに辛そうな赤いラーメンに魏無羨は更に香辛料をたっぷり追加する。常人であれば湯気で噎せ、目に滲みそうなラーメンだ。
     それを魏無羨はテーブルに運び、椅子に腰掛けるといただきますと手を合わせ麺を啜っていく。至って普通に、汗ひとつかかずに超激辛ラーメンを食べ進めていく。
     最後にスープも一滴残らず飲み干し彼の昼食は終わった。

     食器を片し、買い物に行くにはまだ早いと判断した魏無羨は昼寝をすることにした。ソファに横になり、ブランケットをかける。暖かな陽射しと昼食後の満腹感で眠気はすぐにやってきた。

    「(……藍湛、弁当食べたかな。……鍋、早く藍湛と食べたいな。風呂にも一緒に入りたいし、ふかふかの布団で寝たい……嗚呼、あいつの顔が見たい、なぁ……)」

     眠りに落ちる間際まで愛しい旦那のことを考える。瞼がだんだん重くなり、魏無羨は昼下がりの微睡みに落ちた。

    ***

    「ぅ、ん……」

     魏無羨が昼寝から目を覚ますと外は日が落ちかけていた。

    「やば! 寝過ぎた……!」

     勢いよくソファから起き上がり洗濯物と布団を取り込む。布団はひとまずベッドの上へ。衣類やタオルなどはあとで畳んで仕舞おう。
     今はそれよりも──。

    「買い物!」

     コートを着て、財布とエコバッグを持ち、家の戸締りもしっかりして近くのスーパーへと足を運ぶ。
     スーパーに辿り着くと夕方ともあって人が多かった。レジ並びそうだなとぼんやり思いながら買い物カゴを手に取り、鍋の食材選びをする。
     白菜、しいたけ、長ネギ、豆腐、豚肉の薄切り肉に──。

    「水餃子も入れよっと」

     次々と食材をカゴに入れていき、だいたいが揃ったところで魏無羨は調味料コーナーへ寄った。

    「キムチは家にあるからキムチ鍋の素と、追加の香辛料……よし。あとは酒があればいいかな」

     酒、酒。と上機嫌で酒コーナーまで行くとお気に入りの酒を二、三本取る。藍忘機は飲まないので全て自分用だ。
     食材、調味料、酒……とカゴの中をチェックし、魏無羨はレジに並ぶ。一番混む時間に来てしまったため、レジには長蛇の列ができている。
     魏無羨はスマートフォンをコートのポケットから取り出し時間を見る。藍忘機の定時は五時半。そして今は五時。

    「うーん、なかなか際どいな……」

     幸いにも今日は鍋なので夕食の準備にはそう時間は取られない。一番気がかりなのは帰宅する藍忘機を出迎えられないことだった。

    「(あいつはまず寄り道とかしないし、もしするときはメッセ送ってくるし……)」

     職場から家に着くまでの時間を考えてもだいぶギリギリだ。会計が終わったら猛ダッシュで帰るしか──と考えているのレジに立っている店員に呼ばれた。
     そわそわと時間を気にしながら会計を済ませ、カゴの中身をエコバッグに詰めていき慌ててスーパーを出ていく。

    「魏嬰。──魏嬰!」
    「へっ?」

     スーパーを出たところで聞き慣れた声に呼び止められ、魏無羨はバッと振り返る。そこには帰宅中の藍忘機が立っていた。

    「あ、あれ!? なんで藍湛がいるんだよ……時間早くないか?」
    「今日は早く仕事が片付いたから」
    「でもメッセとかきてないぞ……? あ! さてはお前……!?」
    「うん、君を驚かせたくて」

     ふわりといつもは無表情な顔がやわらぐ。つられて魏無羨も頬をゆるませた。

    「まったく! 藍湛お前ってやつは──なんて最高な旦那様なんだ!」

     往来の場だというのに魏無羨は構わず藍忘機に抱き着く。藍忘機もそんな彼を愛おしげに抱き返した。

    「藍湛、早く帰ろう。キムチ鍋すぐ作るから」
    「私も手伝う」
    「じゃあ洗濯物畳んでくれないか? 今日はちょっとバタバタしちゃってさ」
    「うん。構わない」
    「あと今日は布団干したんだ。ふかふかできっといい匂いがする。お日様に包まれながら眠れるよ」
    「楽しみにしてる」

     抱き合う体が離れる。藍忘機は魏無羨が持っていたエコバッグを持とうとしたが、持ち手の半分だけを渡された。

    「一緒に持とう」

     な?と歯を見せて笑う魏無羨に藍忘機は小さく頷き返した。

    「帰ろう、俺たちの家に」
    「うん」
    「やること色々あるけどさ、家に着いたら真っ先にキスして欲しいな」

     とんとん、と自分の唇を指先でつつく魏無羨は口角を上げ艶やかに目を細める。つい見惚れてしまいそうな仕草に藍忘機の耳が赤くなる。

    「あ、なに耳赤くしてるんだよ。もしかしてやらしいことでも想像しちゃったのか?」
    「ち、違う。そうでは……」
    「じゃあどうして?」
    「…………君が、とても魅力的だったから」
    「……っふ、はははっ!! 藍湛! やっぱりお前は最高だよ! 俺を喜ばす天才だ! そんなこと言われたらさ、」

     ──食べたくなっちゃうだろ?
     悪戯に笑いながらそう囁く愛しい人を見て、藍忘機の中で何かが切れる音がした。

    「魏嬰。明日はコインランドリーに行こう」
    「ん? なんで?」
    「布団を洗濯しなくてはいけなくなるから」
    「…………マジか」

     余計に焚きつけてしまったと魏無羨は苦笑をこぼす。
     家に着いたらキスをして、それから……。

     どうなったかは、二人だけが知っている。

     
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