じんさんとねこ「動けぬでは無いか」
視線を落とせば、膝の上で眠る仔猫。
そっと毛並みに沿って背中を撫でてやれば、すべすべでふわふわの感触が剣だこだらけの手に伝わる。
ああ、あたたかい。
ふっくらとした体が、緩く上下している。
そっとなで続けると、何だか自分も眠たくなって来る気がしてくる。
そもそも、何故仔猫が膝の上にいるのか。
先程の出来事を思い出す。
猛る気持ちを鎮める為に尺八を吹くのは常ではあったが、ここ壱岐では時折動物が寄ってくる事もある。
その都度、触れ合う事で心穏やかになっていたりはしたが、先程現れた仔猫は触れ合った後も帰ることなく、俺の後を何故か着いてくるのだった。
よちよちとおぼつかない足取りで一生懸命俺の後ろを歩く姿は、何とも愛らしいものではある。
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