いくつになっても男の子 主が不在の屋敷は静かなものだ。
静かであると、仕事が捗る。
日光の入る部屋の文机に向かい、月島はロシア語の郷土資料と辞書を並べて、内容を日本語でノオトブックへ書き出していた。文机の上には他に、薬缶をそのまま小さくしたような急須と湯呑がのっていた。月島は思い出したように湯呑へ手を伸ばし、湯呑が空になれば薬缶から中身を移し、また湯呑を手に取ってノオトブックへと戻っていたが、その動作を幾度か繰り返して、ふと顔を上げた。
日が傾いて、部屋が薄暗くなっていた。どうりで文字が見えづらい気がすると思った。細かい文字を読むというのでなければ、別に支障があるというほどではない。それでもあと一時間ほどすれば、灯りをつける必要があるだろう。
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