「フィガロ先生、まだ寝てるんですか?」
陽の光から逃げるようにかぶっていた上掛けをひっぺがされて、一気に光が満ちたなかに連れ出される。眩しさに眉を顰めて、それから、駄々を捏ねるようにもぞりと寝返りを打った。そうすれば、案の定ミチルからもう、と体を揺さぶられる。少し膨らんだミチルの頬が簡単に想像できて、フィガロはたまらず笑い声を立てた。
「もうっ、先生起きてるじゃないですか!」
「ごめんごめん、ミチルが頑張って起こそうとしてくれるのが嬉しくて」
腰に手を当てて声を荒げるミチルの頬はやはり想像したとおり少しばかり膨らんでいた。
体を起こして、おはよう、とミチルの頭を撫でながらフィガロが笑みを深めれば、それをますますこども扱いされたと思ったのか今度は唇を尖らせて、少しばかり拗ねたおはようございますが返ってくる。だからか、フィガロがベッドから降りたのを見届けたミチルはすぐにパッと扉へと向かってしまった。
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