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    usizatta

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    花と海とポケモンの楽園【ルネシティの友人から見て】
     ルネシティは噴火が止まった火口の中にできた町で、下から見上げると星空が火口の白い壁に縁取られたような景色が広がる。住人の誰かが「私が一番好きな景色」と言っていた。
     この町のジムリーダーを務めるミクリももちろんその風景を愛しており、今日は友人を招待して一緒に星空を眺めていた。この友人は、立場的に忙しいことが容易に想像がつく上に、私生活でも少し放浪癖があるのか、会いたい時に必ず会えるという相手ではなかった。今回はたまたま捕まえることができたのだった。
    「この町で出会った人が、あの縁取られた星空が一番好きな景色だと言っていたよ」
    その友達が、今まさにミクリが考えていたことと同じことを言った。
    「ああ、私も好きだよ。白い額縁のようにも見えるけれど、私としては瞳に映りこんだ星にも例えられるようでね」
    「きみはそういう、ロマンチックな言い回しが様になるからすごいよね」
    目線は星の方へ向けたまま、友達がそう返した。そして割と研究熱心な性格なせいか、たまに「あれは何座だったかな」と尋ねてくる。それこそ彼の目を見ていると、今彼が何座に目をやっているのか分かって、ミクリにはそれが面白かった。しばらくして
    「星か。そういえばこの間、カントーの方へ調査に行ったのだけど」
    友達は、以前に他の地方へ出張していた時のことを話し始めた。
    「ニビシティの博物館に寄ってみたら、そこに隕石が展示されていたんだ。素敵なものが見られたな。空にある光全てがボクの知らない石なんだなと思ったよ」
     ミクリは思わず、きみこそ随分ロマンチックなこと言うじゃないかと笑いたくなってしまった。
    「きみ、博物館好きだな。ホウエンにある博物館にもたまに立ち寄って石を眺めてたじゃないか」
    「うん、カイナシティの海の科学博物館のことだよね」
    「たしか、海底の水の動きが砂に残ったまま化石化したものがあったね。なんと言ったか……そうそうリップルマークか」
    友達がミクリの方へ顔を向けて微笑んだ。
    「水の形なら、水タイプのポケモンの使い手のミクリも興味あるんじゃないかなと思ったのだけど」
    「まあ、そうだな。古来の海の形が残るなんて、ファンタスティックだね」
    「フフ、いいよね」
     いよいよ、こちらにいい笑顔を向けてくる。
     ミクリから見たこの友人の印象は、強い割にそこまでポケモン勝負をしないで石を集めてばかりいる人、だった。「これはこちらにも同じ趣味を共有させようとしているかな」と思い、星を眺めていたい今はとりあえず避けることにした。
    「とはいえ、きみほど石石! キラキラ! と夢中にはなれないかな」
    「そう?」
    特に無理強いはしてこず、友人は再び星空を見上げ始めた。
    「それにしても」
    友人の声が真面目になった。星から目を離し、暗くなってしまった町を見渡している。何しろ火口の中に作られた町なので高低差があり、一番高い位置にある家なども、二人が立つ場所からだと見上げる高さにあった。そして町の一番下では海の水が静かに満たされていた。夜の闇と星の光を映してたゆたい、たまに何かのポケモンが跳ねる水音をたてている。
    「来るたびに思うけど、星に夢中になって歩いていたら、段差で転んだり、水に落ちてしまいそうな町だよね」
    大真面目に友人はそう言った。ミクリは思わず、いよいよ、笑ってしまった。
    「やっ、そこは、この町の住人は慣れているからね。それともきみは落ちてしまったことがあるのかい?」
    「今のところはないよ」
    友人もそう言って苦笑した。

    (追加部分、書きかけ)
     「水に落ちてしまいそう……だけだと、この綺麗な町に対する感想として不十分かな」
    「おや、もっと褒めてくれるのかい」
    「うーん。でも今思いついたのは、見た目の綺麗さとは関係ない部分だね」
    「かえって気になるな。教えておくれ」
    友人は、今度はある一点を見つめ始める。視線の先もまた夜の闇でよく見えなかったが、もちろん はそこに何があるか知っていた。
    「目覚めの祠の方を見ているのかな」
    「うん、あの祠は山に入っていくように入り口があるよね」
    「奥では海に繋がっているけどね」
    ここで友人は、「そうそれ」と言った。彼は中に入ったことがないはずだが、と が訝しんでいると友人はこう続けた。
    「まず前提としてホウエンの人は、海を心に残る大事な風景だと思ってそうだけど、この町や『おくりび山』のことを考えると、山に対する信仰心も強そうな感じがするんだよね」
     が同意した。
    「この町は、海も山も、両方の神秘的な力が漂っている感じがする。見た目からしてね」
     確かに山の岩壁に包まれ、海の水が底を満たす、他に類をみない光景が広がる美しい町、それがルネシティだ。
     この町の人々は海の大きさを、前に広がる一面の水面や波の音で知るのではなく、下に広がる深さと静けさで知る。同じホウエンの町であり、海の上に立つキナギタウンという場所とは対照的とも言えた。こちらの方は、「海が前に続く限りそこはずっとキナギ」と言われているからだ。
     そしてルネシティは山の神秘もまた、常に腕に抱かれた状態で知る。こちらはホウエンにあるフエンタウンと対照的だ。「えんとつ山」という山の麓にあるフエンは、その恩恵を温泉や地熱といった外に現れた部分で受けている。
    「あの目覚めの祠って、ルネの人は入っていけないんだっけ」
    友人がそう聞いた。
    「そうだけどね、私は中に篭っている時もあるんだ。そんな事態があった際にはむしろ、きみが見立てた人を中の私のところまで通してほしい」
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