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    yukimatiya222

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    yukimatiya222

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    イデマレwebオンリー『拙者の嫁が妖精王な件』で公開したイデマレ真ん中バースデーネタ。♀マレ様。

    #イデマレ
    imago-mare
    #せつよめ
    optimisticViewOfLife

    君と僕の掛け替えのないひと時「真ん中バースデーとやらを知っているか?」

     うだるような暑さに、思考が溶けて蒸発するのではないかと思う今日この頃、綺麗で可愛いあの子の楽しそうな笑顔が印象に残っていた。


     本日のマレウス嬢もこの暑さにも相変わらず涼し気な麗しいご尊顔。更に周囲に冷却魔法を使用しているため汗一つかくことは無いのだが、いつもは下ろされている髪はやや高めに纏められている。所謂ポニーテールというやつで、滅多に見られない白いうなじがまばゆく、これでもかと見せつけている。
     それがどうしても。

    「エロかわ…!!」
    「シュラウド?」
    「真ん中バースデーでしたな。知ってますぞ」

     アノリア充爆散しろと言わんばかりの所謂恋人達の記念日、というと語弊があるかもしれないが。
     推し達の記念日であれば大いに盛り上がり盛大に祝うのだが、自身には全くもっと微塵も関係ないと思っている。
     しかし、何故そんな日をマレウスが興味を持ったのか。

    「実はな…」

     いつもは怜悧な美貌に高嶺の花と言わんばかりの孤高の茨の女王様が、やや興奮気味に頬を赤らめている。
     それがあまりにも可愛すぎて、事情が事情でなければ大いに堪能し、心のフォルダに仕舞い込んだ後に暫く反芻して生きながらえることだろう。

    「私とシュラウドの真ん中バースデーが7月4日なんだ」

     どうだと言わんばかりの笑顔を見せる女王様に、異端の天才と言われてるはずの思考がフリーズした。
     今、誰と誰の真ん中バースデーと言ったか。
     何故、そんな笑顔を見せるというのか。

    「ダイヤモンド達から真ん中バースデーについて聞いてな」

     それは恋人や友人など親しい者との互いの誕生日の中間日を祝う物。
     他の者にとっては何でもない日でも、”二人”にとっては特別な記念日。

    「試しに私とシュラウドで調べてみたんだが、冬生まれの私達の真ん中バースデーが夏とは面白いものだな」

     同級生から聞いた話を楽しそうに話す彼女にとって、それは言葉通りの意味で、それ以上の意味など無いだろう。
     きっと、たまたま、そうたまたま自分を思いついただけなのだろう。
     それなのに、どうしようもないほど喜びに打ち震える自分がいて、自分自身引くほどだ。
     そんな自分の内心など気にせず、彼女は更なる爆弾を落としてきた。

    「それでな、シュラウド」
    「う、うん」
    「一緒に祝わないか?」
    「……は?」
    「別に他の者達を集めなくても、二人の記念日なのだから、私達二人だけでいいだろう」
    ー他の者にとっては何でもない、”私達”の記念日を祝わないか?

     あまりに自然に言われているが、頭の処理速度が全く持って追いつかない。
     異端の天才などと呼ばれる頭脳明晰な自分は宇宙の彼方へ消えていった。

    「そうと決まれば、場所はどこがいいだろう」
    「あの」
    「私は廃墟や古城などもとても良いと思うが、祝い事には不向きだろうな」
    「えと」
    「折角なのだから、この季節らしい場所がいいだろうか」

     矢継ぎ早に次々と提案していく彼女に、二文字以上の言葉しか出てこない。
    フリーズした自分を置いてけぼりにしながらも、彼女は楽しそうに聞いてくる。

    「シュラウド、お前はどこがいい?」

     彼女にとって、既に決定事項なのだろう、二人で真ん中バースデーを祝うというのは。
     けれど、気づいていないのだろうか、自分がいまだに返事もできていないことに。自分が賛成をすると微塵も疑いもしていないということに。
     いやいや相手の返事も聞かないまま進めていくってどうなの、行くって一言も言ってないんですけど分かってます?とか色々言うべきことがあるはずなのに。
     周囲に幻覚では無くて実際に花でも舞ってるんじゃないかってほどの笑顔を浮かべる彼女を目の前にして、言うべき言葉達が全く出てこない。
     それでも、ワクワクしながら自分の返事を待ち望む様子に、もうどうにでもなれとヤケクソな気持ちで答えた。

    「え、えっと、じゃあ…」



     まさか本当にオッケーが貰えると思わなかった。
     二人でお祝いするなど思いっきりデートみたいだ、というか他人から見たらどう見てもデートだろう。デート以外にあるのかこれは。
     ただ、こんな暑い中人混みに紛れて街中に出るとか冗談ではなく全力で遠慮したい。
     けれど、折角彼女が誘ってくれたのだ、”二人だけで”と。
     そういうわけで、やってきたのはこの季節らしい場所、海、の見えるカフェ。しかもこんなお洒落なカフェなんぞ自分のキャラでは全く無い。
     仕方なく、実家のコネフル活用の貸し切り状態にしてもらった。
     その際色々聞かれそうになったが全力でスルーし、お陰で自分達以外の客の姿はなく、店員にも必要最低限の対応をお願いしている。
     そんなオシャレなカフェに、取り合えず他人が目に入れても(ある意味)痛くない程度のジャケットにスラックスという無難な服装(オルト監修)で臨んだ自分。オルトからは『兄さん、これはチャンスだよ!頑張ってね!!』と満面の笑顔で送り出された。
     弟からの激励のもと送り出された自分が遭遇したのは、彼女にしては二度見三度見するレベルで途轍もなく珍しいものだった。
     何故その恰好を?と震えながら聞けば、『リリア達から勝負服?と言われたのがこれだったんだ』とのこと。
     勝負服ってなんだとイロイロツッコみたいことがあったのだが、目の前の彼女の姿にそれどころではない、こんなのキャパオーバーだろう。
     所謂ワンピースなのだが、普段彼女がよく着ている黒、ではなく見慣れぬ白。オフショルダーで胸元とスカートの裾は上品だが可愛らしいフリルであしらわれ、華奢な首元にはシンプルなプラチナのネックレス。トップのペンダントは耳元を飾るイヤリングと同じティアドロップ。更に、サイドからリボンと一緒に編み込まれたアップスタイルで白い首筋が顕わになっている。
     こんなの思わず両手で顔を覆って俯くしかなかった。 

    「尊し」
    「今度はどうした?」
    「お待たせしました、こちらご注文の品になります」

     カオス化しそうな空気を読んだ店員は、注文の品を置くと静かに去っていった。
     真っ白なテーブルにかけられた青と白のチェックのテーブルクロスの上には、目にも鮮やかな色とりどりのポップスクープとトッピングが散りばめられたアイスのバースデーケーキ。
     それを目の前にした彼女の瞳はキラキラと輝いてて、白磁の頬は鮮やかな薔薇色に染まっている。可愛すぎないか。

    「…これは、ケーキなのか?」
    「そ。しかも君が大好きなアイスのね」
    「全て?」
    「モチロン」

     満面の笑みを浮かべて喜ぶ彼女を見ながら、ヤケクソではあったがなけなしの勇気を振り絞って良かったと思う。
     こんなの、自分にとってご褒美でしかない。

    「マレウス氏、真ん中バースデーおめでとう」

     目の前のバースデーケーキに釘付けになっている彼女にお決まりの文句を告げれば、キョトンとした表情を浮かべた。
     それが何だか年相応の学生らしくておかしかったが、次の瞬間本気で目を奪われた。

    「シュラウドも、真ん中バースデーおめでとう」

     まるで大輪の花のように微笑む彼女を見て、今日で自分のなけなしの幸運を使いきったんだと悟った。でなければ、自分みたいな陰キャにこんな幸運が訪れて堪るか。
     そこからは、二人でバースデーケーキを食べたり、お互いへのプレゼント交換なぞしたりと、リア充のような時間を過ごした。
     彼女からのプレゼントに、嬉しいような未知との遭遇のような複雑な気持ちで受けとったが、意外と普通の物だった。

    「使い心地は悪くないと思うぞ」

     渡された物は純度の高い魔法石が組み込まれたペンだった。決して派手さは無いシンプルな物だが、見る人が見ればそれなりの物だと分かる。
     手に持ってみれば、案外自分の手に馴染むことに驚いた。まるで、何年も使っていたような感覚だ。
     ただ、深読みをするならば、ペンを送る意味としては一般的に”勉強を頑張れ”などの意味がある。自分でいうのもなんだが、飛行術を除けば成績優秀といっても差し支えない成績を修めているはずだが。
     それとも、もう別の意味の方だろうか、と考えてしまったが、特に意味など無いだろう。

    「それには私の祝福がかけられている。シュラウドは滅多に書くことは無いと聞いたが、使ってみてくれ。折角だから、私に手紙でも書いてくれると嬉しい」

     そう言われてしまうと、苦手な手紙を書かない訳にもいかなかった。

    「…じゃ、じゃあ、マレウス氏も、手紙、書いてくれるの…?」

     おそるおそる、伺うように目の前の相手を見つめる。
     手紙のやり取りなどもう何年もしておらず、メッセージのやり取りで十分なのに、彼女直筆の手紙をもらうチャンスである。
     陰キャが何言ってんだと思われるだろうが、無視だ。

    「もちろんだ。楽しみにしておけ」
    ―さて、どんなことを書こうか。

     自分へ送る手紙の内容をあれこれ考えながら、楽しそうに笑っている。
     そんな様子を眺めながら、もう、これで十分だろう、そう言う自分と、欲深い幻想を抱く自分がいた。

    「お前からは…イヤリングか?」

     小さなプレゼントボックスから取り出されたのは、星をモチーフにしたイヤリング。

    「マ、マレウス氏みたいな次期女王様が身につけるには貧相かもしれませんが使用した部品や鉱石は厳選に厳選を重ねた上で加工したものでして更に強度と親和性を鑑みまして妖精族にも安心して使用できる素材に」
    「シュラウドが創ったものなのか?」
    「えっと、その、ハイ…」

     説明を思いっきりばっさりと切られた。
     自作のプレゼントだなんてとんだ勘違い野郎な行為だが、仕方が無かったのだ。
     彼女に贈るのにふさわしい物が見つけられず、ならば自分で創ったほうがよっぽどいいと思ってしまったから。
     そんな自分の想いは一言も口にせず黙っていると、目の前の彼女はおもむろに今身に着けているイヤリングを外しだした。

    「どうだ?似合っているか?」

     髪を耳にかけて見せられた。
     着けられたイヤリングは、耳元で軽やかに揺れていて、ゴールドの星のモチーフと一緒になっているサファイアブルーの石が煌めいていた。

    「…よく、似合っているよ」

     嬉しそうに微笑む彼女を見て、自分の手に馴染む、ライムグリーン色の魔法石のペンが、やけに熱を持った気がした。



    「楽しかったな」

     夢のような時間はあっという間に過ぎてしまった。
     NRCまでの帰り道、彼女は先ほどまで過ごした時間を楽しそうに話している。
     一瞬すれ違った相手が二度見するくらい綺麗な笑顔に、どうしようもない想いが湧きあがる。

    「シュラウドと祝うことができてよかった」

     無邪気に笑いながら言うが、それは友人としてのものなのか自分にはわからない。
     嬉しい気持ちと、複雑な気持ちがごちゃまぜになって、思わず立ち止まってしまった。
     立ち止まった自分に、彼女は不思議そうに振り返った。

    「シュラウド?」

     首を傾げながらこちらを伺う。
     このまま何も言わなければ、このまま何も変わらないはずだ。今まで通り、ただの同級生として変わらないまま。

    「どうした?」

     そう言って自分に触れようとした腕を掴んだ。
     驚いた表情を浮かべたが、何も抵抗されなかった。

    「大丈夫か?シュラウド」

     腕を掴まれたことには触れず、自分を心配する様子に腹立たしい気持ちにもなる。
     先ほどまでは、彼女とあんなにも楽しい時間を過ごしていたというのに。
     けれど、これ以上このままでいたくなかった。

    「あの、さ」
    「うん?」
    「…僕も、知ってたんですわ」
    「?何を…」
    「僕達の真ん中バースデー」

     目を丸くしながらこちらを見つめる様子に、思いもよらなかったのだと分かる。
     そんな様子に構わず話を続ける。

    「…本当に、たまたま推しキャラの真ん中バースデーが、あって、それで、たまたま君との真ん中バースデーについて調べてみて…」

     茨の谷に次期領主、最も尊い存在である彼女の誕生日など調べればすぐに分かる。
     自分と一カ月違いの冬生まれ。
     そんな自分達の真ん中バースデーが夏だと知り、そんなに遠い日でも無いことを知った。
     そしたら、一緒に祝えなくても、二人の特別な日を、一緒に過ごすことはできないか、とも思ってしまったのだ。
     つらつらと、時々つっかえながら話した。彼女は一度も口をはさむことなく静かに聞いていた。

    「そ、それで、何でそんなことを思っていたかって、言うと、です、ね…」

     最後の一言を口にすればいいだけなのに、それ以上言葉が出なくなった。
     この一言を口にして、どうするというのか。このままでいたくないと思ったからといって、拒絶されたら絶対に立ち直れない。
     頭の中でグルグルと考え込んでいたら、いつの間にか握っていたはずの腕が、彼女の掌に変わっていた。

    「シュラウド」

     掌に感じる温もりと、いつものような静かな声に、俯いていた顔を上げる。

    「教えてくれ」

     彼女の綺麗なライムグリーンの瞳が、じっと自分を見ている。
     それに勇気づけられるように、ぎゅっと手を握りしめながら伝えた。

    「君が好きなんだ」

     伝えられた。
     脱力しそうになりながらも、震えながら返事を待っていると、静かに残酷な言葉が聞こえた。

    「手を放してくれるか」

     その言葉に、今すぐ逃げ出したい気持ちになりながらも、名残惜し気に、ゆっくりと彼女の手を離した。
     やっぱり自分なんかには無理だったんだ、と立ち去ろうとした瞬間、彼女が腕の中に飛び込んできた。

    「…へ」
    「シュラウド」
    「は、はいッ!?」

     何が何だか分からないまま、首に腕を回され抱き着かれていると、耳元でくすくすと笑い声が聞こえる。

    「知っていた」

     楽しそうな声に、体が一瞬固まった。けれど、頭の中は目まぐるしく疑問で回っている。
     知っていたとはどういうことなのか、その疑問を口にする前に教えてくれた。

    「だから誘ったんだ」
    ー私もシュラウドが好きだから。
     
     と、嬉しそうに自分の想いを伝えてくれた。
     そのまま彼女を思い切り抱きしめたのは、言うまでも無いだろう。

    「特別な真ん中バースデーになったな」

     来年も一緒に祝おう、決定事項のように言う彼女に、反対する理由なんて無かった。





     知っていた。
     ずっと以前から知っていたんだ。
     シュラウドが特別な思いで私を見つめていることを。
     何故分かったか?
     本人は分からないだろうな。
     あんなにも“貴女は特別な存在だ””と知らしめるほど情熱的に見つめていたことなど。
     側にいなくても、いつもその視線は感じていた。
     たぶれっと?という写し身の存在でも、振り向けばやはりいた。
     私達妖精に嘘偽りは通用しない。
     ただそこにある事実、真実は変わらない。
     けれど、いつまでたっても変わらない。
     何故側に来ない。
     何故、思いを口にしてはくれないのか。
     そんな時に知ったんだ、真ん中バースデーというものを。
     だからダイヤモンドに頼んで、私とシュラウドの真ん中バースデーを調べてもらった。

    「二人の真ん中バースデーはっと……7月4日って、もうすぐじゃない?」

     この好機を逃すわけにはいかない、そう思ったんだ。
     逃さなくて良かっただろう?

     悪戯が成功したように笑う彼女に、このままずっと振り回されるのだろうなあと、当然の未来を思い浮かべた。



     イヤリング:いつも一緒にいたい、自分の存在を常に感じて欲しい、あなたを守りたい
     ボールペン:仕事(勉強)を頑張って、あなたは特別な存在、期待している
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