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    yukimatiya222

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    イデマレワンドロライの薔薇、新婚生活追加バージョン。

    #イデマレ
    imago-mare

    朝も夜もずっと①Idiaサイド
    遠くに聞こえる鳥のさえずり。
    瞼を刺激する朝日の光。
    そろそろ目を覚ませと言わんばかりの外界からの刺激に、まだもう少し微睡んでいたいと寝返りを打つ。
    おもむろに腕を伸ばせば、隣で眠る君の体温が。

    「…無い」

    その事実に気づい瞬間、全身の血の気が引いたと同時に飛び起きた。
    見れば、昨夜一緒に眠りについたはずの彼がいない。

    「マ、マレウス!?」
    「どうしたイデア?」

    あまりの恐怖に叫ぶと、柔らかな声が後ろから聞こえてきた。
    思わず振り向けば、そこにいた。

    「おはよう」

    自分の愛しい伴侶が、柔らかな笑みを浮かべて自分を見ている。
    その事実を認識すると、先ほどまでの恐怖が一気に霧散し、力尽きるようにベッドに沈んだ。
    ドッドッドッと心臓が早鐘のように打っていることに今更ながら気づく。
    ゆっくりと緊張をほぐすように息を吐いた。

    「朝からどうした?」
    「……君も一緒に寝てると思ってたら、いなかったから」
    「フフフ、それはすまなかったな」

    すぐ側でベッドが沈み込んだのに気が付き、顔を上げると、麗しいご尊顔が目の前に現れた、と思った瞬間口づけられた。
    チュッ、と軽いリップ音とともに離れるのを見送ると、可笑しそうに笑っている。

    「許してくれるか?」

    分かっているだろうに、からかうように細められる瞳に内心溜息をつきながら目の前の体を引き寄せる。
    抗うことなく自分に身を任せる彼をぎゅっと抱きしめると、少しひんやりとしていた。
    自分のなけなしの体温を移すように、隙間をなくすように抱きしめながら耳元で囁く。

    「もっとしてくれないと許さない、って言ったら?」
    「おやおや」

    くすくすと笑う声を聞きながら、そっと体を離す。

    「愛しい伴侶の仰せのままに」

    そう言いながら、ゆっくりと顔を近づけてくる。
    先ほどまでは気づかなかったが、微かに薔薇の香りがする。

    「君の薔薇園に行ってたの?」
    「んッ、そうだ。朝詰み立ての瑞々しい薔薇をお前に見せたくてな」

    チュッ、チュッと軽く口づけながら会話を交わす。
    少しずつ、少しずつ、深いものに変えていきながら、もっともっとというように。

    「君から、薔薇の香りがする」
    「お前に捧げるものを吟味していたからな、思ったよりも時間がかかってしまった」
    「…だから体が冷えてたんだ」

    ゆっくりと、とろ火でくつくつと煮込むように、冷えた体を摺り寄せ、篝火をともすように熱を分け与える。
    ほんのり温まっていく体から香る、極上の薔薇の香り。彼自身の香りと合わさって、くらくらしそうだった。

    「だが…」
    「?」

    彼から香る香りに頭が酩酊しながら、言いよどむ続きを促すように、その瞳を覗き込む。
    少し困ったような、嬉しそうな笑みを浮かべながら告げられた言葉に、笑ってうなづいた。

    「それよりも、イデアと一緒にあの美しい光景を見たい、と思ったんだ」
    ー一緒に行ってくれるか?

    「君が望むなら」

    いつだって叶えるから。

    ②Malleusサイド

    うっすらと目を開けると、青い炎が揺蕩う。
    辺りを見渡せばまだ薄暗く、夜明け前であることが分かる。
    まだ目覚めるには早い時間であるが、これ以上は眠れないだろうと体を起こす。
    傍らを見やれば、青い炎の髪の持ち主、愛しい伴侶が眠っている。

    「んッ…」

    小さなくぐもった声に、起こしてしまったかと心配したが、静かに聞こえてくる寝息にほっと安堵した。
    昨晩もお互いの熱を分け合い、ともに微睡みながら眠りについた。
    こうして一番近くでお互いの存在を感じる日々を過ごすことがどれほど貴重で、どんなに愛おしいものであるのか、傍らの伴侶は知らないだろう。
    安らかな寝顔を見ながら笑みがこぼれる。
    このまま彼が目覚めるまで側で見守っていようかと思案する。それも魅力的ではあるが、そろそろ咲くであろう薔薇を脳裏に描く。
    長年自身が手掛けてきた薔薇園の薔薇達。その中でも今、特に目をかけている薔薇がある。

    「ふむ」

    折角ならば、一番美しく咲いた物を見せたい。
    そう思ったら、次の自身の行動が決まった。
    軽く額に口づけ、ゆっくりと起こさぬようベッドから出る。

    「お前が起きる前に戻ってこねばな」

    次の瞬間転移魔法で薔薇園を訪れた。
    辺りには何の気配もなく、静寂が支配する中、かぐわしい芳香が漂っている。
    目的の場所を見やると、それは在った。

    「…美しいな」

    待ち望んでいた薔薇が、美しく咲き誇っていた。改良を加えながらも、咲くかどうかは五分五分で、想定した通りに花開くかは全くの未知だった。

    1番美しく咲いた薔薇を、と選定し摘もうとしてはまた悩みと時間だけが過ぎてしまう。
    美しく咲いた薔薇を見せたいというのに決めきれない。
    そろそろ目覚めるだろう相手を思い浮かべる。
    自分が傍らにいなければ血相を変えて探そうとするだろう。あれはまだ分かってないらしい。自分が誰のものなのか。それは永遠に変わらないというのに。
    しかし、それもまた愛おしいと思う。

    「選ぶのは諦めるか」

    そして、もう一度ここに、2人で薔薇を見に来よう。この美しい光景を2人で。
    そうと決めたらすぐに寝室へ転移魔法で戻った。
    すると案の定、慌てた様子で僕を呼ぶ伴侶がいた。

    「マ、マレウス!?」

    全く、そんなに必死にならなくても良いのに。という思いとは裏腹に、喜びを隠せない自分もいる。

    「どうした?イデア」

    安心させるように声をかけると、普段は見慣れぬ素早い動きで振り向かれた。

    「おはよう」

    ことさらゆっくりと朝の挨拶をすれば、力尽きたようにベッドに沈み込む。
    そんなに離れすぎていたか。
    慰めるようと近づき、そっと頭を撫でる。
    しかし、反応を示さないため、よっぽど驚いたのだろう。

    「朝からどうした?」

    すると、くぐもった咎めるような声が聞こえる。

    「……君も一緒に寝てると思ってたら、いなかったから」

    隠しきれない不満の声に、笑いをこらえることができない。
    さあ、どうしたら機嫌を直してくれるだろうか。

    「フフフ、それはすまなかったな」

    ゆっくりと側に座り込みながら顔を近づける。
    訝し気にあげた顔に、更に近づいて口づける。そのまま軽く吸い付きながら離れると、目を丸くさせながらこちらを凝視していた。

    「許してくれるか?」

    許しを乞うように伺うが、驚いていた表情は見る見るうちに不敵なものに変わっていく。
    と思っていた途端に引き寄せられるが、抗うことなくその腕の中に身を寄せる。

    「もっとしてくれないと許さない、って言ったら?」
    「おやおや」

    我が伴侶殿の怒りはこの程度では治まらないらしい。
    可愛らしい訴えに、口元が引きあがるのを止められない。
    伺うように覗き込まれながら、再度顔を寄せていく。

    「愛しい伴侶の仰せのままに」

    告げるのと同時に口づけると、より一層抱きしめられた。
    じんわりと自身に溶け込むような温もりに、自分では気づかなかったが、思った以上に自分の体が冷えていたことに気づく。
    合わせた唇の互いの温度差に、怯む様な感触があったが、それも一瞬だった。

    「君の薔薇園に行ってたの?」

    軽い口づけを交わし合いながら、会話を続ける。
    それのなんと愛おしいことか。

    「んッ、そうだ。朝詰み立ての瑞々しい薔薇をお前に見せたくてな」
    「君から、薔薇の香りがする」

    うなじの辺りを嗅ぐような仕草をされると、軽く口づけられた。それが少しくすぐったい。
    吟味している最中は夢中であったから、いつのまにか移ってしまったのだろうか。

    「お前に捧げるものを吟味していたからな、思ったよりも時間がかかってしまった」

    冷えていた体は、愛しい伴侶の体温によってゆっくりと、しかし確実に熱を持ち始める。
    温まったことで自身にも香る薔薇の香りと、相手の匂いが絡まり、それは夜のひと時を思わせる。

    「…だから体が冷えてたんだ」
    「だが…」

    このまま溺れてしまうのも悪くない。そう思うのだがしかし。

    「?」

    言いよどむ自分を覗き込む琥珀の瞳に微かに宿る熱。
    それに嬉しくも申し訳なさが少し混じる。

    「それよりも、イデアと一緒にあの美しい光景を見たい、と思ったんだ。一緒に行ってくれるか?」

    告げた言葉に一瞬、きょとりと瞬きをした。

    「君が望むなら」

    そう言って穏やかに笑う姿を見て、自分は世界中の何者よりも幸せな妖精だと実感した。

    「ありがとう、イデア」

    シーツに沈むのはそれからでも悪くない。
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