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    七篠(Nanashino)

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    七篠(Nanashino)

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    BG雪大の新刊小説(短編集)『アルカディア』(A5・70ページ前後 R-18)の本文チラ見せです。
    本当にちょっとだけです。すまんやで!
    「Drifter」以外の4編は発行前にwebでも公開予定です。間に合えば……。
    七篠の今後にご期待下さい。キリッ

    新刊『アルカディア』本文チラ見せ【口実は夜に咲く】

    <あらすじ>

    玉田の部屋を一日だけ追い出された大は、雪祈のアパートに居候する。アルコールと隣家から聞こえる湿った声に煽られて、ふたりは……

    <本文抜粋>

     ――イラッ。とする心情というものは、ムラッ。と欲望を抱くときと、どこか似ているのかもしれない。と、雪祈はこの時人生で初めて知った。

     ……なんだか、良からぬ気分になってしまう。それに、隣から聞こえる女の嬌声は今日に限ってなかなか止まってくれなかった。
    「あのさぁ。『恋をすると演奏が上手くなる』ってホントなんだべか」
     ピンク色にまみれた空気の中で、突然、大は雪祈に質問してきた。

    ***

    【Quichsand(流砂)】

    <あらすじ>
    ふとしたことから、カラダだけの関係を持ってしまった雪祈と大。野良猫のように部屋にノコノコと現れるようになった大に、雪祈が抱く感情とは。

    <本文抜粋>
     オレはゲスト出演したジャズバーで、はじめてヤツと出会った雨の日のことを思い返した。あの時は実際に音も聴いてなかったのにバンド結成の話を受けるのかよ、って今更ながら思う。オレってほんとバカだな。
     そうしなければ、こんなふうに人生ごと巻き込まれることもなかったのに。バンドを組んだことは音楽的には一ミリたりとも後悔していないけれど、その結果、カラダだけのおかしく爛れた関係を持つまでになってしまったということにオレはなにか運命の因縁すら感じつつあった。

    ***

    【君の胸に抱かれたい】

    <あらすじ>
    なんとなく付き合ったのはいいけれど、最後まで致さない雪祈に不満を持つ大。オレたちは身体の関係だけなのか?という疑問は膨れ上がるばかりで、演奏にも集中できなくなってしまった。雪祈とケンカした大は、テイクツーを飛び出して……。


    <本文抜粋>
    「……オレって、おまえのただのセフレなワケ?」
     思い切って、やっと心の裡を打ち明けたものの、さすがにこんなことをハッキリとは言い出せなくて、大の口もモゴモゴした。
    「…………は???」
     大の口から飛び出した聞き慣れない単語に、雪祈の耳がピクついた。部屋に漂う甘いムードがスッ……と音もなく消える。
    「いや、だから、その。オレっておまえの、ただの、欲望を解消するための、せ、セックス、フレンドってヤツなのかな。って思って……」

    ***

    【永遠(とわ)と刹那のカフェオレ】

    <あらすじ>
    色々あって、ようやく本当の恋人同士になった雪祈と大だが、運命の日が近づきつつあった。ソーブルー出演、そして二人の仲はどうなる?

    <本文抜粋>
    「実は、このアパートからそろそろ引っ越そうかと考えてるんだ」
     大の後ろから雪祈はコアラのように身を寄せてハグしながら話した。好きな人と身体をくっつけると、誰でも温かくて幸せな気持ちになる。
    「さすがに、ボロボロだもんなぁ。初めて来たときにはビックリしたべ」
     大は狭いアパートの室内をぐるりと見渡した。築五十年という木造アパートは防寒性も低く、エアコンの効きも悪いが雪祈があえてここに住んでいるのは都心部では破格の家賃と、最寄り駅が三軒茶屋だというブランドが欲しかったからだった。でも、JASSとしてある程度名を上げた今となってはそこにこだわる理由はもうあまり無かった。
    「もうすこし郊外の街に移るのもいいかと思って。それこそ、二人でも住めるくらいの広さのところに」
     得意げに、雪祈は大の肩に顎を載せる。

    *

    「正直、おまえのことそこまで好きなわけじゃなかったんだ」
    「遊びみたいなものだったけど、それでも一緒にいる時間はまぁ悪くなかったです、」
     色のない暗い瞳をした雪祈はベッドに横たわりながら、淡々と、冷酷に、大に言い放った。

    ***

    【Drifter】(※未単行化部分のネタバレがちょっとだけあります)

    <あらすじ>
    JASS解散から3年後、ふたりはボストンで再会した。大のバンドがボストンを離れる前日の夜、雪祈は元カレの大を自宅に招いて、長い年月のことを話し合う。

    <本文抜粋>
     その日は夕方なのに、もう月が見える薄い水色の空だった。夏の終わりのさわやかな風が、街に行き交う人々の頬を心地よく撫でる。
     ボストンでのライブ予定の全日程が終了し、モメンタムが次の街に向かう前日の夜に『少しだけいいか?』と大は雪祈の住むアパートメントに誘われた。

    「えーっと……。ここだべか」
     メッセージで教わった住所に大が足を運ぶと、そこには緑色の蔦が這う赤レンガ壁のフラットが何軒か並んでいた。該当の号室を探して、インターホンを押す。
    「おう。来たな、大」
     玄関のドアがカチャと静かに開いて、家主がゆっくり顔を出した。何年間も会っていなかったのに、その間もずっと友達でいたみたいな感じの受け答えを雪祈はして、大はリビングの中に通された。

    ***

    こんな感じです!よろしくお願い致します。
    七篠
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    Replies from the creator

    七篠(Nanashino)

    DONEBG/雪大
    ボストン再会後、遠距離恋愛中のふたり。
    二次BLですが、作中に具体的なセクシャル描写はありません。全年齢。
    既刊同人誌『アルカディア』の中のセリフがちょっとだけ出てきます(未読でもOK)

    クリスマス合わせに書いていたものです。
    遅刻すみません。
    ハッピーホリデイズハッピー ホリディズ

     ――新しい年が、あと数日でやってくる。
    「今年も、もう終わりか……」
     雪景色のボストンの夜のよく冷えた大気の中で、沢辺雪祈は白い呼吸をした。東京でバイト中に事故に遭ったのち、ある程度回復してから渡米したバークリー音楽大学で作曲の勉強をして、それから大と再会して。この土地に来てから既に三年すこし経った。
    (なんだか、あっという間のことだったな)
    と雪景色の中で彼はしばし感慨にふけた。来年は作曲科の卒業試験を受けて、更に勉学を深めるために大学院に進むか、それとも職業作曲家の道に行くのか、それとも……。少し先のことを雪祈はまだ決めかねていた。
     年の瀬でキラキラと華やかさを増す街に、今宵は雪がしんしんと降っている。ボストンにも強い寒波が来ているらしい。あたり一面に白い化粧を施された街中で転ばないよう、雪があまり積もっていない辺りの道を選びながら雪祈はてくてく歩いた。
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    七篠(Nanashino)

    DONE「2回目のアニバーサリー」
    2回目の同棲記念日に、雪祈にプロポーズしようと頑張る大の話(全年齢向)

    同人誌『アルカディア』収録「Drifter」からさらに数年後のイメージで書いてます。(未読でも読めます)
    中途半端な完成度になってしまったので、加筆して未来の新刊に入れるかも。

    (※イベント時パスワード制にしてましたが、パス外しました。ご自由にお読みください)
    二回目のアニバーサリー 三十路手前のオレたちがNYのフラットで同棲しはじめてから二年目の季節がやってきて、記念日の今日はレストランで食事することになった。
     一年目の記念日の時はオレ、宮本大は演奏旅行のツアー中、沢辺雪祈は依頼を受けた作曲の締切前で忙しかったので、今日が実質はじめてのアニバーサリーデイみたいなものだった。

    「えーっと、今日の店はキングダムホテルの3F【ブルー・サファイア】か」
     店の選択と予約は雪祈のやつに丸投げだったので、オレは今日の店については名前しか知らない。でもホテル3Fの、低層フロアにあるレストランならそこまでかしこまるような場所では無さそうだ。
     本日のオレの装いはコットンのパリッとした白いシャツに、おろしたてでまだ真っ黒のデニム。それにカジュアルめの蝶ネクタイを合わせて、髪もワックスでアップに整えた。いつもと違う格好だったから練習中にバンドメンバーから「おッ。リーダー、今日は愛するユキチャンとおデートですか?」と散々いじられたけど気にしないで演奏に励んでいたオレです。
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