六月の花婿季節は梅雨に差し掛かろうとする頃だった。中庭の小さな池の周りでちらほら紫陽花が咲き始めていることに気がつきながら、銀時は薄花桜の着物を襷掛けにして洗濯物を干していた。それを眺めながら高杉は縁側に腰掛けて腕に抱いた娘に苦戦しながら哺乳瓶でミルクを与えている。初めこそ、その腕に抱いた時はそれはもう見たことがないほどおっかなびっくりだったのに、随分マシになってきたものだと銀時はちらっと振り返り笑みを溢した。まあ最初から神楽が抱くよりはだいぶマシだったが、危なっかしくて見てられないと言う月詠やお妙、噂を聞きつけやって来たさっちゃんにどうにか娘の父親として認めてもらおうと奮闘していたしな。
『あの眼鏡の女には伊賀での借りがあるが、他の奴らには何故あんな目で見られるのか分からねぇ。』
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