式神vsrと夢主昔々あるところに式神を使役する術師の姫君がおりました。世が世なれば姫君の一族は陰陽寮に勤める貴族の末席でしたが、落ちぶれてしまい、京から遠く離れた神社に、式神と暮らしておりました……。
日も沈み、月灯りも無い夜……つい先程まで庭を照らし出していた灯籠も消え、完全な暗闇が支配する。
人である姫君……夢主が床につく時間。
もう身軽な単姿になって布団代わりの衣を掛け、あとは横になって寝るだけだ。
「 Добрый вечер (ドーブライ ヴェーチェル) 夢主」
「ゔぁーしゃ。お庭の灯り消してくれたのね。ありがとう」
この土地の言葉ではない不思議な呪文を唱えたのは、夢主の使役する美しい式神。いつもは濃い檜皮色や玄に純白の衣を重ねて着ているが、いつの間にか藤紫がかった月白の衣に着替えている。口元は袖と同じく白い色の布で隠し、今は烏帽子で見えはしないが、その下には……鬼である証の角が生えている。
4091