始められないから終わらない「わかってる、うん、わかってる。おれに抱かれるのが嫌で、おれを抱く方なら良いとか、そういうことでもないんだろ。わかってる。おまえがおれのことを一番好きってことは疑ってないよ。おれが望めばおまえはおれの傍に一生いてくれる。おれが望めば死者だって蘇らせてくれるかもしれない。ただ、気持ちだけはどうしようもないよね。おれの好きと、おまえの好きは少し違うから、仕方ないよ」
「ダイ、おまえが望まなくても、できるならおまえの傍にはいたい。おまえが誰と共にいようと。ただ……」
「じゃあ、じゃあこれはいいかな?」
「うん?」
「おまえがこの先、誰を抱いてもいい、誰かに抱かれてもいいよ。子どもを作るのもいい。でも」
「でも?」
「でも、おまえが頭を撫でるのはおれだけにして。この先ずっと、この世界で、おれだけ」
「わかった」
「いいの、本当に?ずっとだよ?」
「わかってる」
「誰にも、だよ?無意識で誰かの頭に手を伸ばしてもちゃんとおれを思い出して止めろって言ってんだよ。おれは酷いこと言ってるよ」
「わかってる。おまえのことをいつも想うってのは今もそうだから、そんなこたあ酷くともなんともねえよ。それに」
「それに?」
「それにその代わり、おまえも他の誰にもおまえの頭を撫でさせるんじゃねぇ」
「勿論だよ!よかった、じゃあ変わらないしむしろ増えたね」
「そうかもしれねぇな」
「だから、ね」
「いつまでだっても子どもだな、ほら来い。髪の毛ぐしゃぐしゃにしてやらぁ」
-END-