絆の旅路-捏造7章5.6話の別の部屋 呑んだくれな大人たち-マトリフとアバンが割り当てられた部屋にて。
外で寝るなら床で寝てもいいだろうと誘われたクロコダインがかなりの酒瓶を消費している。
マトリフ
「ってぇことは、おめぇが凍ったハドラーをかっぱらった張本人か!」
アバン
「マトリフ。『かっぱらった』は無いでしょう。当時のクロコダインの立場からすれば『頼まれて、取り返した』ですよ」
マトリフ
「うちの弟子が地面を火炎呪文で掘ったことがある。それはおめぇさんに倣ったってハナシだが。それの大元があの時のハドラー強奪たぁね」
アバン
「どこで縁が繋がるかわかりませんね」
マトリフ
「オレが使うには気持ちのわりぃ言葉だが、これもピラの言葉を借りると絆が繋がったってやつかね」
クロコダイン
「……ピラ殿か」
アバン
「どうしましたクロコダイン」
クロコダイン
「お二人はどう考えている。あのゼバロの額の印と、ピラ殿の尾の形と」
アバン
「同じでしょうね」
マトリフ
「結局ゼバロの封印を解いたのは誰かはわからねぇ。ってことは、ポップのようにゼバロに呼ばれて一時的に意識が混濁したピラが封印を解いたってセンもあるだろ。ゼバロとピラに共通する印は、その時の名残かもしれねぇ」
クロコダイン
「ポップのように、か。ポップほどの者を呼び込む力があるのなら、ピラ殿も操られて当然かもしれん」
アバン
「ポップほど、ではなく、ポップだから呼ばれたのかもしれません。ポップは勇者の魔法使いとして、元勇者のゼバロが魔法使いロウィを求める声に応えてしまったのでないでしょうか。しかしゼバロも結局はポップが自分の魔法使いでないことに違和感を覚えて手放した。そんなところではないですか」
マトリフ
「あのバカ弟子は妙に色んなもんに肩入れするからな」
アバン
「口が悪いのに面倒見のいい誰かに似たのでしょう」
マトリフ
「誰のことだ?いつの時代も勇者ってのは危なっかしぃからな。どうしても世話焼きになっちまうんじゃねぇか」
アバン
「私、そんなに危なっかしいですかねぇ。どのあたりが危なっかしいか教えてくれませんか」
マトリフ
「うるせぇな、15年前から色々と山のようにあるだろうが」
アバン
「幾つかは覚えがありますが、そんなにありましたっけ。教えてくださいよ、マトリフ」
マトリフ
「今は無自覚バカ勇者に説教するのは後回しにするとして。……なんだクロコダイン」
クロコダイン
「アバン殿が誰かに甘えているのは珍しい、と」
マトリフ
「あ、あ、あまえ?!」
アバン
「マトリフ、そこであなたが狼狽してどうするんです。それに話を戻しましょう。ピラさんです」
マトリフ
「ったく誰のせいだと思ってんだ。で、ピラな。ピラもピラだからゼバロに呼ばれた可能性がある。ピラがあんだけゼバロを慕ってんだ。ゼバロだってピラのことを悪いように思ってねぇだろ」
クロコダイン
「ピラ殿は利用されたということか」
マトリフ
「単純にお互いに呼びあっただけじゃねぇか。絆や縁が世界にもたらすのは良い結果だけじゃねぇって話だな。アルキードが滅んだのも縁がもたらしたことだろう。腐れ縁ってのもあるしな、なぁアバン」
アバン
「そうですね、マトリフ。でも私はあなたとの縁が腐っているとは思いませんよ」
クロコダイン
「……」
アバン
「はい、今度は話をそらしませんよ。そうなると、ピラさんの記憶が無いのはポップと同様の理由かもしれませんが、もしかするとピラさんのために神であるロウィ様が記憶を消したのかもしれません。あるいは、ゼバロが」
クロコダイン
「ピラ殿は、自分が封印を解いたことに気付かないままの方が良いのかもしれんな」
アバン
「そもそもピラさんが封印を解いたというのも憶測ですけどね」
マトリフ
「確かに憶測だな。ま、もしもピラが封印を解いていたとして、それに向き合う時が来たらピラの隣にゼバロがいるほうがいいだろ。ってのは理想論だけどな」
アバン
「わかってますよ。そうも言ってられない事態になればゼバロの救出は諦めます。私がゼバロに止めを刺します。あの子たちが動く前に」
クロコダイン
「元の世界ではダイ達に色々と背負わせてしまったからな。せめてここでは荷を軽くしてあげたいものだ」
マトリフ
「そうだな。さ、そろそろ年寄りは寝るぜ」
アバン
「そうですね。名残惜しいですが私も若くないですからね」
クロコダイン
「アバン殿の年齢はオレと変わらないはずだが」
アバン
「あなたほどタフではありませんよ」
マトリフ
「オレから見りゃ2人とも若造だ。とっとと寝ろ」
クロコダイン
「年甲斐もなく叱られてしまったな。元の世界に戻ってもまたこうやって酒を呑みたいものだ」
マトリフ
「元の世界に記憶はもっていけねぇかもしれねぇが、おまえさんとなら縁がどこかで繋がるだろ」
アバン
「15年前から繋がっていましたしね。次は15年後になるかもしれませんが、大丈夫ですよね、マトリフ」
マトリフ
「任せな。ちゃんと長生きしておまえらの相手してやるよ」
-END-