小さな勇者 半分だけ帰還夜、とある宿屋にて。
「ダ、ダ、ダ、ダイ?!」
「そうだよ、ポップおれだよ!」
「さ、触れねぇ!なんだこれ、幽霊か?おめぇ生きてんのか?!」
「多分、生きてる」
「多分てなんだ、どういうことだよ」
「目が覚めたらおれの体とおれが分かれていたんだ。おれは眠っているおれの体を見ていたんだ」
「肉体と精神が分かれてたってことか?」
「うん。眠っているおれの体の下には何かの結界が描かれていたよ」
「誰かがおめぇをとらえたってことか?もしかするとあの爆発の瞬間に?」
「わからない」
「無事なのか、おめぇの体」
「心臓はゆっくり動いてた。黒の核晶の爆発の時の父さんみたいにぼろぼろだけど」
「そっか……。よし、おれが治してやる。で、体はどこにある」
「わからないんだ」
「は?」
「おれはおれの体に戻ろうとしたけども、どうしてもできなかった。だから、おれはその結界がある部屋の外を出てあちこち行ったんだけど、どこまで行っても全然知らないところだったんだ」
「おめぇが行ったことがない国ってことか?」
「空には太陽が無かった。あそこはもしかして」
「魔界か」
「かもしれない。おれはどうしていいかわからなくて、なんとかしたくて、ポップのところへ行きたいって思ったんだ」
「そうしたらここにいたってか」
「うん」
「なるほどなぁ」
「ごめんよ。わからないことだらけで」
「なんで謝んだよ。いいさ、全部じゃねぇけどおめぇが戻ってきた。あとは朝になったらみんなに知らせて、おめぇの体を探す方法を考えようぜ」
「ありがとうポップ」
「にしてもよぉ、なんでまずおれんとこなんだよ。姫さんとこへ行ってやれよ。ずいぶん、心配していたんだぜ」
「だって」
「だって?」
「レオナにすごく逢いたかったよ。でも昼も夜もわからなかったし、急におれが現れたらレオナが困るだろ」
「そうか、姫さん喜ぶと思うぜ」
「だめだよ、レオナは女の子なんだぞ」
「おめぇ、そういうところ、ちゃんとしてるよな。わかったよ、朝になったら一番に姫さんのところへ行くぞ」
「うん!そうしよう!」