絆の旅路-捏造7章5.6話 親子の時間--------------------------
その頃、別の場所で
フレイザード
「明日はようやくゼバロってヤツのところだな!ヒム、足引っ張るんじゃねぇぞ!」
ヒム
「わかってる」
フレイザード
「なんだぁ?相変わらずすました顔しやがって」
ヒム
「うるせぇな。明日オレたちはゼバロんとこに行ってあいつを倒すんだろ。そうしたら」
フレイザード
「元の世界に戻ってオレとハドラー様は死んじまうかもな!」
ヒム
「それがわかっててなんとも思わねぇのかよ。悔しくねぇのかよ」
フレイザード
「あぁん?何言ってやがんだ。だいたい元の世界で死んじまって終わりじゃなくて、ここでもう一暴れできたんだ。悔しいってなんだ」
ヒム
「はぁああ?ハドラー様がいなくなっちまうんだぞ!?」
フレイザード
「死にたくねえからって勝つのを避ける方がもっと面白くねぇだろうが。だいたい、おめぇは死ぬわけじゃねぇから元の世界に戻っても関係ねぇだろ」
ハドラー
「ヒム、オレもゼバロとやらと倒して元の世界に戻って構わん。その先にどうなるか分かっていてもな」
ヒム
「ハドラー様、オレは」
ハドラー
「それともおまえは、死ぬのを恐れて闘いを避けるオレが見たいのか」
ヒム
「そんなことッ!!」
ハドラー
「ゼバロを倒して元の世界にすぐに戻るともかぎらん。そうなったら、この世界でおまえたちと一緒に新しい脅威となるのも面白いかもしれん。どう転ぼうとオレは最後までオレだ」
ヒム
「……はい!(さすがハドラー様だ!!)」
フレイザード
「そいつは面白そうだぜ!なんなら今から暴れましょうや!!」
ハドラー
「まぁ待て、まずは明日のゼバロだ。おまえたち、遅れをとるなよ」
ヒム
「任せてください!」
フレイザード
「明日が楽しみだぜ!!」
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その頃、宿屋のとある部屋にて。キングサイズのベッドが1つ。
ダイ
「ラーハルト、何してるの」
ラーハルト
「見張りを」
バラン
「不要だ。敵の襲来に気付かぬ私ではない」
ラーハルト
「では」
ダイ
「床で寝るのはダメだよ」
バラン
「明日の戦いに備えて体を休めろ」
ダイ
「父さんは真ん中ね」
バラン
「うむ」
ダイ
「おれは父さんの右、ラーハルトは左ね。ラーハルト、ほらはやく。あったかいよ」
ラーハルト
「しかし……」
ダイ
「ダメだよ、ラーハルトを床で寝かせたとレオナが知ったら、次にどこかに泊る時があったら『床で寝なさい』と言われちゃうんだ」
ラーハルト
「なんと無礼な」
バラン
「姫というのはそういうものだ」
ダイ
「母さんもそうだったの?」
バラン
「……」
ラーハルト
「あ、では失礼いたします」
バラン
「ラーハルト、ベッドのサイズは大きい。そこまで端によらなくてもよいだろう。それとも私と寝るのは嫌か」
ダイ
「おれ、ポップに教えてもらったよ。反抗期って言うんだって」
バラン
「そうか」
ラーハルト
「(あの魔法使いめ)いえ、そんなことは」
ダイ
「ねぇ、父さん。ラーハルトとはこんな風に一緒によく寝ていたの?」
バラン
「そうだ。もしかしてダイは一人で眠っていたのか?」
ダイ
「島ではじいちゃんやゴメちゃんと一緒に寝てたから寂しくなかったよ。旅に出てからはポップと」
バラン
「そうか」
ダイ
「父さんって大きいんだね。それにとても暖かいや」
バラン
「そうか……どうした私の顔に何かついてるか」
ダイ
「ごめんなさい。父さんがドラゴンファングを外した顔、こんなに近くで見たことなかったから」
バラン
「謝ることはない。ダイ、今度はどうした」
ダイ
「父さんの手、触っていい?」
バラン
「好きにしろ」
ダイ
「手も指も凄く大きい!」
バラン
「ラーハルト」
ラーハルト
「はい、バラン様」
バラン
「ラーハルト、明日の戦いを終えたら」
ラーハルト
「元の世界に戻るのかもしれません」
バラン
「うむ」
ラーハルト
「どうなろうとも、必ずダイ様をお守りします」
バラン
「……。元の世界に戻って、今から私が言うことをおまえが覚えているのかはわからないが。もう一つ頼みがある」
ラーハルト
「なんなりと」
バラン
「ダイへの『様』を無くしてくれないか」
ラーハルト
「ご迷惑でしたか」
バラン
「迷惑ではない。ただ、私はおまえを息子だと思っている。無理にそうしろ、とは言わない。おまえの呼びやすい呼び方で構わないが、できることなら」
ラーハルト
「では、お二人と元の世界に戻ったあとで、ダイ様への『様』は止めましょう」
バラン
「ラーハルト。私は、元の世界に戻ったら」
ラーハルト
「わかっております。でもそうではない可能性も夢を見てよいのではありませんか?こういう夜なら」
バラン
「そうだな」
ダイ
「………」
バラン
「ダイはもう眠ったようだ」
ラーハルト
「寝かしつけるのがお上手になられたようで」
バラン
「覚えていたのか、その話を」
ラーハルト
「はい、バラン様のお話ですから。忘れません」
バラン
「では、もう一人の息子も寝かしつけようか」
ラーハルト
「はい、おやすみなさいませ、バラン様。良い夢を」
バラン
「おやすみ、ラーハルト。おまえも良い夢を」
-END-