「魏無羨、女体事件」 初夏。
じんわりと汗ばむのを感じながら魏無羨は、雲深不知処の麓周辺をぶらついていた。藍忘機が仕事だった為、暇潰しをしていたのだ。荷車がやっと通れそうな道をすたすたと歩いていると、前から人がやってきた。
その人は鼠色の外套を纏い、頬がこけているのが見え、痩せぼそっているような印象を受けた。魏無羨が危うい気配を感じながらも、その人に道を譲ろうとした時だ。
「あっ、すみません……」
「おっと……」
なんと外套を着た者は、魏無羨の前を通った瞬間、身体がふらつき彼にぶつかってしまったのだ。魏無羨はすぐに反応し、身体を支えてやった。
「怪我はないか? 行き先は? 案内するよ」
「親切にありがとうございます。大丈夫です」
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