to:DAMIEN僕の名前はフィリップ・ピリップ。普段は"ピップ"と呼ばれていました。
目の前の彼は地獄の第七階層の、サタンの息子のダミアン・ソーン。
彼は僕の恩人でちょっとだけクラスメイトだった頃もあって、大事なともだち。
「ダミアン」
今日は大切な日、それは僕の命日。
ダミアンの居る地獄に住むきっかけになった日。
命を落として、パパとママを悲しませるのは最悪だってわかってるんです。
最低なアクシデントを幸運だと思うなんて、親不孝者だと知ってるんです。
けれど、いえだからこそ、彼に感謝を贈る日なのだから。
「それはなんだ」
振り返った彼がようやく、僕の手元の花に気づいてくれた。
「花です。綺麗でしょう」
「……我への、嫌味か」
花束ではないけれど、チューリップの造花を、一つだけ。
「いいえ、これはお礼です」
お気に召さなかったのであれば、もっといい物を持ってきます。と付け加えれば、不愛想なまま受け取ってくれた。
「どこから持ってきたのだ…それに、感謝などされる覚えはないのだがな」
「おや、忘れてしまわれたのですか?僕は貴方からの、餞を忘れたことはありませんよ。」
僕の墓に立ち寄るクラスメイトは何人か居るけれど、いつも悔しそうな顔をするのは貴方だけですよ、ダミアン。
「貴方は僕の死を、僕の苦しみを自分のことのように感じてくれる。紳士の鑑です」
「悪魔の我に向かって紳士とは、やはり嫌味ではないか…己の処遇に不満があるなら父上に直接、伝えるのだな」
「まさか!不満などちっともありません」
心配をかけてしまうこともあるけど、僕はそれで充分なので。
ピップ・ピリップの人生は早くに終わりを告げたけど、溶岩の近くには僕の恩人でちょっとの間クラスメイトで、ともだちになってくれたダミアンがいて。彼は僕のお礼の花へのお礼を持ってくるとどこかに去ってしまったけれど、少ししたらきっと戻ってくるので、それまでまた僕の独り言でも書き溜めておきましょう。
これ以上望んでしまったら、僕は第七階層よりも下に行くことにきっとなる。
それだけは、嫌だから、それ以上は何も望みません。