笑顔を運ぶ者 すぅ、と遮那王ーーもとい源九郎義経は息を吸うと大きな声でその名を呼んだ。
「ーーーー弁慶ッ!」
「殿、ここにおりまする!」
その声に呼応して顔を上げ人の波をかき分けてくるのは義経の一の家来である武蔵坊弁慶。弁慶の反応速度に思わず義経は頬を緩めながら弁慶を見やる。
「お前は見つけやすくていいな」
「左様でございますか…?」
「ああ。お前のその私よりもそして、大人の男としても並外れた体格はこういう時見つけやすくて助かる。お前は嫌かもしれないがその顔の傷も弁慶だと判断するのに助かるものだ」
「…でしたら、きっとこの傷もこの体格もあなた様に見つけてもらうためにそうなったのでしょう」
「私に?」
「はい。結果的に教経によって我らは巡り合いましたがこの傷も体格も殿に巡り会うために授かったものなのだと思います。そう考えるだけで愛おしくも思ってしまうほどです」
1073