義経主従のある一日 御曹司様〜!そう呼ばれ苦笑いを溢しながら義経は手を振り返した。
「ハハ…」
「すごいねぇ、義経様!大人気だ」
そう称賛の言葉をかける高綱に義経は苦笑いをこぼす。
「最近はいつもこうなんだ」
「それも殿の人徳あってのことでしょう。それとも…人払いをしますか?」
「いや、良い」
「はっ…しかし、あの女子たちもよく殿だと分かるものです」
「いや、それは弁慶がいるからじゃない?」
「は?」「えっ」
驚いたように言葉を重ねる主従に思わず高綱は笑い出す。
「あは、あははっ…気づいてなかったの!?」
「「ああ…」」
とまた言葉を重ねる様子に高綱は笑う。
「うぅむ…拙者の体格が良すぎるせいで…面目ない!」
「ははっ、そう頭を下げるな弁慶。構わん」
「殿…!」
ふっ義経は笑うと石を川に向かって投げ、その石は川を切るように走っていく。
「よし、弁慶!魚を取って皆にでも振る舞うか」
「きっと喜ばれるでしょう。この弁慶、力になりましょうぞ」
「ああ…!弁慶、お前は魚を追い込んでくれ」
「承知!」
そして川に飛び込んでいく様を高綱は見送った。
「俺は邸に戻ってるからね〜!」
「わかった!」
川で楽しそうに笑いあう二人を高綱は横目で見やる。
(ほんと、仲良いなぁ)
それが忠誠心だけでは繋がれたものではないと高綱が知るのはもう少し後のことだった。
-了-