赤い糸「魈は赤い糸ってあると思う?」
「なんだそれは?」
璃月に昔から伝わるお伽噺の中で、いつか結ばれる運命の相手とは赤い糸で繋がっているというものがあるらしい。普段見えないその糸は決して切れることはないという。それを題材にした小説が今流行っているのだと旅人は言っていた。
「運命の相手など……我には不要だ。馬鹿馬鹿しい」
「魈はそう言うと思った」
旅人には想像通りの返事だったようで、はは。と声をあげて笑っていた。夜叉にもし運命の相手がいるとしたら、それは不幸なことだと思う。赤い糸が見えていたとして、相手と出会う前に命を落とす確率のほうが高いだろう。相手は仙人とも限らない。好きでもない相手と糸で結ばれているからと言って一緒になったりするのだろうか。旅人に話を聞くと、恋愛小説なのだから、基本的には好意を寄せている者同士の純愛話なのだと言っていた。
1134