ヨーカイの森――森の奥にはバケモノがいる。
今、子供たちの話題の中心はこの噂だった。元々「魔女がいる」なんて噂のある森だったが、そこにイエティがいるだとか、巨大なコウモリを見ただとかが追加されて、バケモノと総称されるようになったらしい。自分を始めとする親や大人たちは皆、根も葉もない噂だと笑った。ありふれた都市伝説、もしくは森へ立ち入らない為の戒め。そういった類のものだろう。そういえば、自分の幼少時代も、そんな噂があったものだ。森ではなく湖だったか。セイレーンが出るとか、人間の顔をした巨大魚がいるとか。つい先日、息子からその噂を興奮気味に聞かされた時、時代は巡るものだと妙に感慨深く思ったのを思い出した。
泣きじゃくる息子の背中をさすってやりながら話聞く。「テングに食われたんだ」と、嗚咽の中ようやく聞き取れた。
私は妻に子供を任せ、家の前で待つ警察に詳細を伝えに行った。
「森へ向かったようです。度胸試しだと言っていました」
「そうですか。他の子もそう言っています」
「息子はテングだと言っていました。よく分かりませんが、一応」
警察は頭を下げると、件の森の方へ向かって行った。
冬の今は一面の銀世界だが、ここは元々穏やかな田舎町だ。それが今日は多くの警察と消防が動き回り、物々しい雰囲気を湛えている。
今朝、××くんが行方不明になった、と情報が回った。息子の同級生で、親友だ。
学校で噂される「森のバケモノ」はいつしか「テング」だと言われるようになったらしい。森を構成する針葉樹の天辺に立つ人影。それは瞬く間にいくつもの木々を越え、森の奥へ消えて行った。それは東国でテングと呼ばれるヨーカイなのだと、東国系をルーツに持つ子が言い、それは真実として子供たちに広まった。
××くんは「羽根を拾って来る」と言った。度胸試しのようだった。
元々「魔女がいる」と言われていた時から、何人かの子供が度胸試しに森へ入ったことがあった。多くの場合は怖くなって逃げ帰ってくるか、無事に戻ってきて先生や大人に怒られる。ある意味、よくある光景だった。
何人かは「本当に魔女を見た」と言うが、その証拠はどこにもないことに悔しがり、でもやはり恐怖心もあって再び森へ入ることはなかった。
しかし今回は証拠が手に入る。そう考えたのだろう。
息子や周りの友人は恐怖感がありつつも、それを止めはしなかった。周りの大人が笑ったことを覆し、証明したかったと言う。
そしてそのまま、××くんは昨夜から姿が見えなくなってしまった。
テング。森に住み、カラスの羽根を持つヨーカイ。神様のように崇め奉られる一方で、その不可侵領域に踏み込めば残忍な力で殺され食われる。息子たちが調べた本には、そう書いてあったらしい。
私は家へ戻り、妻と一緒に息子を抱きしめた。
戻らない××くんはテングに食われて殺された。息子はがたがたと震えながらそう言ったらしい。
もっと息子の話をきちんと聞いてやれば、笑わなければ、こうはならなかったかもしれない。自責の念は募るばかりだが、今は泣きすぎて寝てしまった息子を抱えて、××くんの安全を祈ることしかできなかった。
***
人の背丈よりも随分と高い窓の外には、どこまでも続くような闇が広がり、どこか不気味な雰囲気を醸す針葉樹林を細かな雪が装飾している。
「おやおや、今日のディナーは人の子ですかァ?」
大きな窓から少し離れて、パチパチと薪の爆ぜる暖炉の前。ロッキングチェアに揺られるチェズレイが本を閉じながら言った。
モクマは苦笑いしながら、背に乗せた子供を大きなソファに横たえてタオルの準備を始める。
「そんなこと言ってるから、子供たちに魔女だって言われるんだよ」
「おや、町ではそんな噂が? 失礼な話だ。
少なくともこの森の所有権は完全に私ですからねェ。不法侵入で訴えてやりましょうか」
チェズレイはゆっくりとチェアから立ち上がり、この町ですら、どうとでも出来るのですがね。と付け足す。
バケモノが出るとの噂の森。その奥に、チェズレイとモクマの住む屋敷があった。
人目を憚るように建てられたその屋敷は、二人で住むにはやや広い。しかし、二人がいままで様々に変えてきた居の中では、小さい方だった。
ばたばたと準備をするモクマとは対照的に、ソファの上で唸る子供をしげしげと見て、ふむ、と唸る。
「また度胸試しですか? なにもこんな冬に……命知らずですねえ」
「見てないで手伝ってよ。本当に死んじゃうよ、こんなに冷えちゃって」
ほい、とモクマがタオルを渡す。チェズレイは眉を顰めるが、受け取ったタオルで子供の顔を拭いた。
子供は雪に埋もれていたのか、服までも濡れて冷たい。ただ、チェズレイが身体を拭くそばで、モクマが衣類を脱がせていけば、下着までは濡れていないようだった。きっとモクマが発見したのが比較的早かったのだろう。それにここらに降る雪はパウダースノーで、水分が染み込むには少し時間がかかる。それも幸いだった。拭くついでに脈を測れば、乱れもなく正常なリズムだった。身体は冷えているが、暖炉の前で1時間でも暖めれば回復するだろう。
生きていくために身につけた医療知識や技術はもう何年も必要としていなかったが、意外と自分の能力も衰えていないな、とチェズレイは薄く笑う。
ここへ越してきてもうどれぐらいの時が経っただろうか。かつて目指した野望は、己の納得いく形で終わらせた。思ったよりも長い期間だったが悪くなかった。
野望を成し得た後、どうしたらいいのか。組織やその構成員と呼べるものはいたが、結局私と行動を共にするのは守り手である忍者しかいない。野望を、人生を共にしはじめた時のように二人きりとなり、私たちは定住を選んだ。
諸国漫遊するにはもうほとんどの地へ赴いたし、故郷へ、なんて、そんな郷愁に駆られる年では二人ともなくなっていた。
今までの人生になかった、腰を据えた生活がしたかった、のかもしれない。
二人の人生は、『度胸試し』が出来る程に穏やかな土地で暮らすこの子供には、想像すらできないだろう。
危険な目に遭わせた分だけ、危険な目に遭ってきた。生死を彷徨ったのも一度や二度じゃない。その度に、互いに手を取り合って生きてきた。生き延びてきた。
だからこそ、全てを終えた今は、穏やかに生活したかった。正直な話、年齢や老いもある。もう世界各国を飛び回り、敵だ味方だとやり合うのは二人とも御免だった。一方で、あまりに非常識で激動の人生で、こんな平穏な暮らし、早々に飽きてしまうのではないかとの危惧もあった。が、そうはならずにもう十数年が経とうとしている。
「子供の衣類などありませんよ」
「俺の部屋着を着せるよ。でかいけどしょうがない」
言ってモクマは、肌着のみとなった子供にぶかぶかのTシャツとハーフパンツを履かせる。面積的には全身を覆っているのでいいだろう。そのまま、座面にかかっていたブランケットを広げ、クッションを頭の後ろへ差し込んだ。甲斐甲斐しいものだと、チェズレイは思った。
「きっと町の子だ。今日は遅い……な。明日送っていこう。
あ、そうだ。起きたら風呂に入れるように準備しようか」
浴室へ向かうモクマを見送って、チェズレイはソファのひじ掛けに軽く腰を降ろす。
子供の顔に影を落としたチェズレイの目は、モクマとは反対に冷たい。
「助ける義理などないのですがねェ」
柳眉が上がり、瞼がすうっと細められる。
チェズレイは、自分の視界から子供を覆い隠すように自分の手を広げ、焦点を子供から小指に移した。
「あの人は守り手ですし、私は下衆な守り手しか殺せない。
この年になってまで、難儀な約束をしたものだ……」
度胸試しなどと言いながら、後先も考えず冬の森へ足を踏み入れた子供。チェズレイにとって憐みはあれど、モクマのように慈愛の気持ちはなかった。
もし自分が見つけていれば、せめて人目につくところまで運んで、そこへ放置しておくだろう。モクマのようにわざわざこの屋敷に運んで、こうも甲斐甲斐しく世話することはなかったと思う。
ただ、モクマの行動を否定するつもりはない。小指の約束を持ちだすのは大仰だが、そういう言い訳をして、チェズレイは自分を納得させていた。
ただ、この屋敷と我々の存在を知られたのは厄介だと思った。
この屋敷は、町の住人には知られていない。
町には関わらず生活したかったのは、二人の意向だった。
縁もゆかりもないこの土地に、到底話すことは出来ない経歴を持った中年男性が二人。過去に買った恨みは清算したつもりだが、何が起きるかはわからない。もしその恨みが自分たちに向けば、屋敷だけに留まらず、町に迷惑をかける可能性だってある。今更誰かに迷惑をかけるのも、その尻拭いをするのも避けたかった。
それに、二人はここを終の棲家と認識していた。
ここでの生活は二人にとって心地よかった。二人きりの生活を壊したくなかった。
つまり、二人の間に他人を入れたくなったのだ。それは言葉にこそしないが、彼らの共通認識だったのかもしれない。
二人は二人で成立していて、ようやく訪れた平静の時に、何人たりとも介入させたくなかった。
だから、屋敷を建てるのに出入りしていた業者、土地の買取やその他手続きで顔を合わせた自治会長の記憶は、催眠で一切消去した。
その時にモクマはチェズレイに一つの約束を提案した。催眠といった裏稼業で培った能力は、もうこれっきりにすること。と。隠居した身にそんなものは必要ないし、そうなる生活を二人とも望んでいた。
言いだしたのはモクマだが、でも、それをチェズレイは了承した。その約束は、今でも守られている。
それ故に、魔女やらバケモノやらと言った噂がまことしやかに流れていて、何も知らない子供たちの中で“度胸試し”なんてものが流行っているのだろう。大方、都心部へ出かける際、もしくはその帰りの姿を目撃されたのだと思う。広くて鬱蒼とした森の中に出入りする人間、それも俗世離れしたその姿を見れば、不気味にも思うし、生きている人間にも見えまい。まぁ、生活に支障のあるものではないので放っておいたが。
こんな事情を抱えるチェズレイは、さて、この子供をどうしたものかと思案して、再び子供を上から覗き込んだ。
はらりとプラチナブロンドが流れ落ちて、顔にかかる。僅かな衝撃にむずがる様子を見せた子供が、左右に首を振って目を開けた。
「おや、お目覚めですか」
「ヒッ、ま、魔女……!」
飛び起きようとして身体を起こした子供は、再びソファへ沈んだ。「痛い!」と泣き、頭を押さえる。
当たり前だ。今まで気を失ったいたのに加え、まだ身体も暖まっていない。軽傷ではあるが、急に身体を動かせば関節は痛むし、血圧の影響で酷い頭痛も起こる。
チェズレイはやれやれと頭を振った。
「しばらく安静にしてください。
でないと……鍋で煮込んで食べてしまいますよォ?」
「こらこら、怖がらせるんじゃない」
にたりと笑うチェズレイを、浴室から戻ったモクマが咎めた。チェズレイはつまらないといった表情でひじ掛けから降り、モクマに場所を譲る。
チェズレイの言葉に再び意識を失いそうに顔を青くさせた子供は、ぼろぼろと涙を流しながらも、優しそうなモクマの登場に少し安堵したようだった。
「大丈夫かい? この近くに倒れてたから、連れて来たんだ。
今日はもう遅いから、明日送っていくよ。今日はあったかい風呂に入って、泊ってきな」
しゃがみ込んで子供と目線を合わせたモクマがニカッと笑う。子供は呆然としながらも涙は止まっていて、小さく頷いた。
もう少しここで休んでからね。と続けたモクマに、チェズレイは自分の出番はないと、キッチンへコーヒーを淹れに向かった。
***
ソファにはモクマと子供が、暖炉前のロッキングチェアにはチェズレイが座っている。
ローテーブルにはカフェオレとココア、暖炉横のサイドテーブルにはコーヒーの入ったカップが乗っていて、風呂上がりの子供はことのあらましを話していた。身体も暖まり、いくらか緊張が解けたようだった。
「テングの羽根ねぇ……だから、森へ入ったと。浅慮ですよ」
「チェズレイ、子供相手にそう言わない。
まあでも、なるほどね。その途中であの崖に落ちちゃったんだね」
モクマが子供の背中を撫でながら、よく頑張ったね、と声をかける。子供は嬉しそうな、得意げのあるような顔をして頷いた。
「でも、町と違って森は整備されているところが少ない。危ないからもう入っちゃダメだ」
なるべく威圧しないようにと優しい声色で語りかけるモクマに、トーンを落としながらも頷いた子供は、そのままかくん、かくん、と頭を揺らし、ふらっと身体を傾けた。
慌ててそれを支えたモクマは、「寝ちゃったみたい」と声を潜める。軽傷とはいえ、遭難するような形になってしまっていたのだ。身体の方も限界だったのだろう。規則正しい寝息を立てる子供をモクマは寝室へ運んだ。
「ところで、針葉樹の先に立っていたテングですか……。
それ、モクマさんでは?」
戻ってきたモクマに、暖炉の前でロッキングチェアを漕ぎながら、チェズレイはコーヒーを啜って問うた。
モクマは、えー、と顎に手を当ててしばらく考え込み、はっ! と膝を打って、何故か照れるように笑う。
「あっ、あの、都心部に行く列車あるじゃない? 木の上ってあれがよく見えるんだよ。
たぶんそれを見てた時かな。寒かったから歩くより木の上渡った方が早いしって、そのまま帰ってきて……」
と、モクマがチェズレイの方を向くと、呆れた顔をした彼と目が合った。
盛大なため息の後、わざとらしく音を立ててカップが置かれる。
「では、あの子供が森へ入ったのは、あなたのせいじゃないですか」
「い、いや、でもその前からお前が魔女って呼ばれてたからね!?」
「……わたしのせいだとおっしゃる?」
「そういうわけじゃないけどさあ!」
腕を組んでモクマを睨みつけるチェズレイに、あわあわしながらもモクマは反論した。若干の口論が起こって、でも責任の所在を明らかにしても不毛だと、どちらともなく口論を辞めた。
チェズレイが一息ついて場を仕切り直し、再びモクマに問う。
「どうするつもりです?」
「……お願いしてもいい?」
ため息交じりに投げた質問は、同じ疑問符を伴って返ってきた。
モクマの返しに、チェズレイはピクリと眉を上げる。モクマの意図は大方察したが、予想外でもあった。
「いいのですか?」
「まあ、あんまり良くないことかな、とも思うけど」
言いながら、モクマはチェズレイの横へ移動する。
床に跪き、ひじ掛けに置かれた手を取って、その甲に唇を寄せた。
「でも、やっぱりここのことは知られたくない。まだお前さんと二人っきりでいたいんだ」
「それ、ここへ越して来た時にも言っていましたねェ。
業者や自治会長にかけるのが最後の催眠だと約束させたのは、あなたですよ?」
チェズレイは少しだけ呆れたように笑う。
暗に子供の記憶を消してほしいと言い出したモクマのことが、チェズレイには意外だった。
もっと言えば、正直、チェズレイは屋敷や自分たちの存在が周知されてもいいとさえ思っていた。今回はいいきっかけかもしれない、と。二人で過ごすには十分な時を過ごしたし、何も町人と仲良くなったり、ホームパーティを開こうということでもないのだ。必要以上の接触は避けながらも、もう少し便利に生活ができるようになるだろう。そう思っていた。
しかしモクマは違ったらしい。慌ただしく世界を飛び回っていた生活を含めれば、もう指を折るのも億劫な程の時を共に過ごした。と、いうのに、この男はまだ足りぬと、そう、言うのか。
チェズレイはモクマの手の上でバラバラと指を遊ばせ、この屋敷を終の棲家にさだめた時の約束を忘れたのか、と皮肉を込めて問いただした。
踊る指をモクマが握って拘束する。チェズレイは立ち上がったモクマを目線で追って、それが顔の前でぶつかった。
モクマはチェズレイの頬に口付ける。
「そうだね。でも、お願い」
控えめなリップ音の次に囁かれた言葉は、柔らかで穏やかな声色なのに拒否権はないようだった。
モクマの顔が離れて、再び視線がぶつかり合う。へにゃっと垂れ下がった眉に、チェズレイは弱い。
「分かりました。明日、彼が起きたらそうしましょう。
送り届けるのはお任せしますよ」
「ありがとう」
チェズレイの額に軽くキスしたモクマはソファへ戻り、その上へ寝っ転がる。
一瞬嫌そうな顔をしたチェズレイだが、すぐに寝室は使用中だと思い出し、自身もロッキングチェアに凭れかかって舟を濃いだ。
薪の爆ぜる音が響いて、揺らめく炎が部屋を照らしていた。
***
家の外がにわかに騒がしくなったのは、息子が寝てしまってからすぐだった。
その喧騒は陰鬱なものではなく、歓喜の声だとすぐ気付く。
息子を抱き上げ窓の外を見る。警察や消防が団子になっていてよく分からなかったが、その隙間から××くんらしき人物が見えた。
慌てて玄関を飛び出し、確認する。抱えられた息子の背中を見て、××くんが周りを振り切って走ってきた。
私は息子を降ろし、騒ぎに目をこすった息子が××くんを認識して、また大声を上げて泣いた。二人は抱き合って再会を喜び、周りの大人も涙ぐんでいた。
これは後日分かったことだが、××くんは彼が森へ入った場所からそう離れていない場所に、ブランケットに包まれた状態で発見された。発見場所はもちろん昨夜のうちに彼の家族も探していたのだが、その時にはいなかった。誰のものかも分からないブランケットがあったこともあり、誰かに保護され、朝方ここに置かれたのだと推測できたが、それが誰だかは警察であっても割り出せなかったらしい。
当の××くんも、事故のショックで遭難から発見までの記憶が一切抜け落ちているようだった。
ただ、小さな田舎町では、警察も消防も深くは追及しなかった。子供に負担をかけたくはなかったし、なにより彼が無事に戻ってきたことが一番重要だった。
よかった。本当によかった。
私達の後を追ってきた妻と抱き合い、彼の無事を喜んだ。
***
この一件以降、子供たちは度胸試しを辞めた。そもそも森には、所有者や業者が出入りする箇所以外には強固な柵やゲートができ、子供の力では到底入り込めないようになったのだ。この田舎町のどこにそんな財源が、と嫌な大人の俺は思ってしまったが、どこからか今回の件を聞きつけた人物から莫大な寄付があったと言う。
たまにゲートが開いている時もあるが、町の人は大人も子供も近づかない。
テングの噂は都市伝説ではなく、二度と遭難事故が起きないようにするための戒めとする面が強くなった。
――果たして森の奥には、何がいるのだろうか。
魔女もテングも、取るに足らない噂だと大人は笑うが、それを証明できる大人もまたいない。
ただ「ヨーカイの森」は、木々を揺らしながら、静かに、静かに、この町の傍らに佇んでいる。