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    nayutanl

    @nayutanl

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    nayutanl

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    「シュガーポットの魔法」向け展示だったもの
    クロエのお誕生日に賢者があげたもの、その由来とか、これからのふたりの願いの話です。一年目のBDのカードのクロエの目が本当にきれいだと思って書いた話です。
    賢者の性別に関する描写はありません。イメージに委ねます。

    二年目はこちら→https://poipiku.com/3138344/6778380.html

    #まほやく
    mahayanaMahaparinirvanaSutra
    ##neco茶

    ルーチェ #1 賢者がくれた贈り物の箱の中には、裁縫で使うまち針が入っていた。ケース入りで、長さ別に五色の玉がついている。作るものによって使い分けができて良さそうだ。

    「色々考えたんですが、やっぱりクロエにはお裁縫に関するものがいいかと思って」
    「ありがとう! とっても嬉しいよ。まち針はいくらあっても困らないし、折れたり曲がったりしたら交換しないといけないからさ」

     クロエは嬉しそうにしながら晶に向かってそう答えた。晶はあまり裁縫に明るくはなく、知識はもとの世界で学校に通っていたときに授業で聞いて覚えていたことにとどまるのだが、クロエからしばしば話を聞くようになってやっと道具の名前や布の種類が少し分かるようになってきた。しかし、その程度といえばその程度だし、針が折れたり曲がったりするということは頭にはなかったので、何の気なしに選んだものに対する思ってもいなかったコメントに晶は興味を抱く。

    「そうなんですか? 魔法で直して使わないんですね」
    「旅をしてるときはそうしてたよ。でも、いまは一度にたくさんの服を作ることが多くなったから、作ってる最中は直す時間も惜しくて。中央の国でパレードに参加するって決まって、お揃いのローブを作ったときは特に大変だったなあ」

     そう苦笑いするクロエは、あのときが今のところ一番大変だった、と語る。あれから色んなところへ行って、その度にみんなの服を用意したけれども、やはり数が多かったということであのとき以上だったと思ったことはまだないのだそうだ。

    「全員分、一度に必要でしたもんね……」
    「大変だった分、達成感もすごかったけどね! またああいうの作りたいな!」
    「すごいな……タフですね」
    「あはは! 大変だったけど、すごく楽しかったから」

     晶は、そう言ったクロエに笑みを返しながら、安堵した。あれから四六時中ではないけれど、ひとつ屋根のしたでみんなと暮らし始めて、その中でクロエとも何度となく顔をあわせ話してきた。楽しいときも、少しつらいときも、悲しいときも嬉しいときもあった。それでも、クロエのすべてを知っているわけではないし、彼は何が欲しいか、彼に何をあげたら喜ぶか、意外なほど自信が無かった。
     考えて悩んで、これと決めてからまた悩んで、ひとに相談してみたり―紆余曲折を経て辿り着いたのが、五色の玉のついたまち針だった。黄色、紫、青、赤、緑。何となく、みんなの所属している国を思わせる色にぴんときて勢いで購入したのだと話すと、クロエは「やっぱり!」と言って大きな目を瞬き、ケースの中のまち針に視線を落とした。大切なものを見るような、いとおしそうなまなざしが綺麗に詰められた針たちに注がれる。

    「賢者様は、まち針って何でまち針っていうか知ってる?」
    「知らないです。そういう名前なんだと思ってました。理由があるんですか?」

     これも、考えたことさえないことだ。晶は、クロエの目を見つめながら尋ねた。すると、それを待っていたかのようにクロエが顔をあげて晶に向かって笑いかけた。

    「待ってるからなんだよ。とめたところを縫ってもらうのを待ってるから。だから待ち針」
    「そうなんですか!?」
    「あはは。賢者様、そんなにびっくりしちゃう? でも、何だか素敵だよね。一途だなあって思う」
    「そんな由来だったなんて、知りませんでした……。今度から、まち針の見方が変わりそうです」

     何でもないことのようにクロエは言っているが、晶としては目から鱗が落ちるような話だった。自分が贈ったものがきっかけでこんな話が聞けるなんて思ってもいなかった晶の心は、ゆるやかに揺れる。

    「今度、時間を作ってまたゆっくりお喋りしようよ。賢者様さえ良ければだけど、裁縫のこととか、それ以外のことも」
    「はい、是非!」
    「きっとだよ! 賢者様も忙しいし、ゆっくり会えない日もあるけどさ。もっと仲良くなりたいし、知ってもらいたいことも教えて欲しいことも、まだまだ沢山あるんだ」

     プレゼントの箱を大切そうに胸に抱くようにして、クロエは晶を見つめた。彼の瞳は瞬く星か、見たこともない宝石のようだった。手の届かないほど遠くにある、綺麗なもの。でも、クロエは星でも宝石でもないし、ましてや触れられないほど離れたところで光っている存在でもない。
     確かにここにいて、自分と関わろうとしてくれる。魔法使いのクロエ。真木晶の友達のクロエだ。

    「だから、これからもよろしくね。賢者様」
    「こちらこそ。……」
    『ずっと』や『末長く』と言えない代わりに微笑んで、晶はひっそりと願った。彼の瞳の輝きが、どうか失せることがありませんようにと。





    <おわり>
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    Replies from the creator

    nayutanl

    DONE月花Webオンリー展示
    年長者と強絆のゆるめの話です。
    アーサーの疑問から始まる四人のあれやこれやです。アーサーが外見年齢12~13歳くらいのイメージ。自分が絵で見たい話を書いた形かも。
    公式にない設定が一部ありますが、雰囲気でふんわり読んでください。書いた本人も雰囲気で押し切りました。
    9/9追記:追録書きました(https://poipiku.com/3138344/7470500.html)
    和やかな城 ある日の桜雲街、竜の住まう城の一室で青い目をした天狗の子どもが尋ねた。
     
    「スノウ様、ホワイト様。おふたりは大人なのにどうしてこのようなお姿なのですか?」
     
     この城でそのようなことを尋ねるのはこの子―アーサーだけであろう。スノウとホワイトは一度顔を見合わせてからふたりしてにっこり笑った。
     もう随分長く生きている彼らはこの城の主である。今でこそオズに譲るが強い力をもち、気が遠くなるほど昔からずっと竜族の頂点に君臨している。ここ近年は「早く隠居したい」が口癖で、どうにかオズかフィガロを後継者にしようとしているものの、ふたりにその意志はなく聞き流されてばかりだった。そんなものだから、このところはオズが助けて以来この城にホームステイしているアーサーが後継者になってくれたら……とオズに牽制をかけているが、本気ではないと思われているようである。とはいえ、アーサーが後継者に向いているという直感と竜の住まう城の主が天狗でよいかどうか、そしてアーサーの実家である天狗の一族の事情はそれぞれ別の問題なので、スノウもホワイトも食い下がったり押し付けようとしたりといったことはしない。ただ、隙さえあれば隠居したいと思っているだけで。
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    nayutanl

    DONE紫陽花見ながら話してるホワイトとフィガロの話
    ホワイトから見たスノウとフィガロのこととか、フィガロから見たホワイトのこととか
    ほんの少し生きた心地がしないけど、気のせいかと思うくらいのあったかさはある つもり
    あと、文末に話に関するちょっとしたことが書いてあります。
    ハイドランジアの幽霊師匠と植物園を散策―などといえば聞こえはいいが、実のところは連れ回しの刑である。フィガロは曇り空のもと美しく物憂げな色彩の花を咲かせるハイドランジアに目をやりながらこっそりとため息をついた。
    ホワイトがやってきて「ハイドランジアの花が見頃だから出掛けよう」と誘われたのだが、あまり良い予感がしなかったので一度は断ったのだ。断ったのだが、今回の誘いはこちらに選択権がないものだったらしい。有無を言わさず連れてこられてこのとおりである。

    「そなたら、また喧嘩したじゃろう」
    「喧嘩とはいえませんよ、あんなの」

    少し先をいっていたホワイトが戻ってきて、ごく自然に手を繋いできた。こんなことをしなくても今さら逃走なんてしないのにと思ったが、これは心配性なのではなくて物理的な束縛だ。都合の悪い話をするつもりなのであろうことは断った後の出方で何となく察していたが、切り出されるとやはり身構えてしまう。いいことでも悪いことでも、心に叩き込むようなやり方はホワイトの得意とするところなので、分かっていてもわずかに寒気がした。
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