和やかな城《追録》 全盛期のスノウとホワイトはそれはもうすごかった―と、フィガロは思い返す。いまは童の姿をとり気を抑えて楽に生きているふたりが、常時目も眩むような美丈夫であったころ。自分がまだ童姿のふたりよりももっとずっと幼かったころ、なんならそれよりも前から続いているのであろうことがある。
それが、喧嘩である。
喧嘩といえど、竜の本気の喧嘩。それもスノウとホワイトの大喧嘩である。他の種族の特に力のあまり強くないものはふたりが発した気だけで意識を失うことさえある。いまは然程でもないが、全盛期の喧嘩はそれはもう、それはもうすごかった。……と、今日アーサーに冗談のネタ明かしをしたのをきっかけに記憶の糸を気まぐれに引っ張っていた。
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