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    nayutanl

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    nayutanl

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    夏のある日、わけあって猫になっているミスラが
    キッチンに侵入してネロに追い出される話
    ミスネロワンドロで書いたものです

    ##ねこまほ

    侵入猫(にゃ)キッチン台の前に立つネロの足元に、赤毛の大きな猫がすり寄ってきた。
    「ぅおん」
    「おっ……」
    すり寄る、というには些か力が強い。ほとんど頭突きだ。しかし猫並みなので痛みよりも不意打ちによる驚きの方が大きい。ネロは拭いていた皿を立ててから足元を見やり、大柄な猫を億劫そうに抱えるとキッチンの外へ連行した。
    「なにするんですか」
    「悪いな。衛生的にちょっと問題あるから、外で聞く。……で、なに?」
    赤毛の大猫は聞き覚えのある声で不満を訴えたが、キッチンは聖域である。猫はもちろん、人間だって衛生に対する意識のなっていない者は退去させているのだ。
    ネロは猫を床に下ろすと、その場にしゃがみこんで尋ねる。この大猫がその辺の野良猫ではないことなら、知っている。そのことに猫の方も気づいているのであろうに、いつ正体を現すつもりだろう、と思いながら麦穂色の目を見つめた。
    すると、猫はしっかりとした口許をにゃむにゃむと動かしながら逆に尋ねてきた。
    「隠してる肉とかありません?」
    「あー……昼飯来なかったもんな。暑さでくたばってたのかと思った」
    猫の頭を撫でれば、あたたかい。つい先程まで水を使っていた自分の手が少し冷えていることを差し引いたとしても、あたたかい。耳は冷たいようなあたたかいような、微妙な温さだった。
    姿を変えることができる程度の体力はあるようだから心配は要らないだろうが、わけを訊いたら何か食わせてやろうと思いながらネロは使えそうな食材を脳裏に並べる。
    「なんか、暑すぎて逆に眠れるんじゃないかと思って……」
    「それ死にかけるやつだからやめとけよ」
    「そうですよね。賢者様にも言われました、フラグ立てないでくださいって」
    「フラグ?ってなんだ?」
    「さあ……前の賢者様からは聞いたことがないので俺も知りません。でも立てると死ぬみたいです」
    「物騒だな。ってか、何で猫?」
    ここまできたら、もう理由などどちらでもいいのだがもののついでである。昼抜きで力もあまり出ないのだろうに頼ってくれたのが嬉しいので、きちんとした理由でも破綻していても構わないがとりあえず訊いてみた。
    「かさばらなくていいんですよ。あと、少し暑さに強くなる気がします」
    「そうなのか……?」
    「でも、キッチンを追い出されるのは困るな」
    もう戻ります、そう言ったが早いか、ネロの目の前にいた赤毛の大猫はあっという間にひとの姿をとり、あくびをひとつしてネロをぼんやりと見つめた。
    「……隠してる肉、あります?」
    「んー……少しなら?」
    空きっ腹に肉は堪えるのではないか、とは言わずにネロは曖昧に答えたのだった。




    〈おわり〉
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    Replies from the creator

    nayutanl

    DONE月花Webオンリー展示
    年長者と強絆のゆるめの話です。
    アーサーの疑問から始まる四人のあれやこれやです。アーサーが外見年齢12~13歳くらいのイメージ。自分が絵で見たい話を書いた形かも。
    公式にない設定が一部ありますが、雰囲気でふんわり読んでください。書いた本人も雰囲気で押し切りました。
    9/9追記:追録書きました(https://poipiku.com/3138344/7470500.html)
    和やかな城 ある日の桜雲街、竜の住まう城の一室で青い目をした天狗の子どもが尋ねた。
     
    「スノウ様、ホワイト様。おふたりは大人なのにどうしてこのようなお姿なのですか?」
     
     この城でそのようなことを尋ねるのはこの子―アーサーだけであろう。スノウとホワイトは一度顔を見合わせてからふたりしてにっこり笑った。
     もう随分長く生きている彼らはこの城の主である。今でこそオズに譲るが強い力をもち、気が遠くなるほど昔からずっと竜族の頂点に君臨している。ここ近年は「早く隠居したい」が口癖で、どうにかオズかフィガロを後継者にしようとしているものの、ふたりにその意志はなく聞き流されてばかりだった。そんなものだから、このところはオズが助けて以来この城にホームステイしているアーサーが後継者になってくれたら……とオズに牽制をかけているが、本気ではないと思われているようである。とはいえ、アーサーが後継者に向いているという直感と竜の住まう城の主が天狗でよいかどうか、そしてアーサーの実家である天狗の一族の事情はそれぞれ別の問題なので、スノウもホワイトも食い下がったり押し付けようとしたりといったことはしない。ただ、隙さえあれば隠居したいと思っているだけで。
    6203

    nayutanl

    DONE紫陽花見ながら話してるホワイトとフィガロの話
    ホワイトから見たスノウとフィガロのこととか、フィガロから見たホワイトのこととか
    ほんの少し生きた心地がしないけど、気のせいかと思うくらいのあったかさはある つもり
    あと、文末に話に関するちょっとしたことが書いてあります。
    ハイドランジアの幽霊師匠と植物園を散策―などといえば聞こえはいいが、実のところは連れ回しの刑である。フィガロは曇り空のもと美しく物憂げな色彩の花を咲かせるハイドランジアに目をやりながらこっそりとため息をついた。
    ホワイトがやってきて「ハイドランジアの花が見頃だから出掛けよう」と誘われたのだが、あまり良い予感がしなかったので一度は断ったのだ。断ったのだが、今回の誘いはこちらに選択権がないものだったらしい。有無を言わさず連れてこられてこのとおりである。

    「そなたら、また喧嘩したじゃろう」
    「喧嘩とはいえませんよ、あんなの」

    少し先をいっていたホワイトが戻ってきて、ごく自然に手を繋いできた。こんなことをしなくても今さら逃走なんてしないのにと思ったが、これは心配性なのではなくて物理的な束縛だ。都合の悪い話をするつもりなのであろうことは断った後の出方で何となく察していたが、切り出されるとやはり身構えてしまう。いいことでも悪いことでも、心に叩き込むようなやり方はホワイトの得意とするところなので、分かっていてもわずかに寒気がした。
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