Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    oburuta14

    オブルタの絵の練習置き場

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 16

    oburuta14

    ☆quiet follow

    これは「病」をお題にして書き始めたが自分の書きたい話とずれていったカイアサです。

    ベルとパジャマと病 双子先生からベルを貰った。2つで1つのベルは片方が鳴らせば、もう片方のベルが鳴る仕組みの魔法のベルだ。どれだけ離れていてもベルを鳴らせば相手に届く。それを俺はアーサーに渡したのだが、そのベルが鳴らされることはなく、お揃いのモノとして魔法舎の自室に飾られている。何かあればベルを鳴らすより、ドアをノックした方が相手にすぐ会えるから。

     チリン、チリン

     優しいけれど、まるで緊急事態を思わせる鐘のような音にカインは飛び起きた。初めは何の音かわからなかったが、机に置かれたベルが淡く発光し揺れている。
     美しい音色だと言うのに、ベルの鳴り方がカインの不穏を煽る。寝間着であったが、椅子の背凭れにかけていた上着に急いで袖を通しながら自室を出て、賢者様の部屋の前を通り、アーサーの部屋の扉をノックする。返事はない。けれど対のベルはアーサーの部屋にある。
     カインは一声かけてドアノブに手をおいた。
    「アーサー?」
     拒まれることなく扉は開かれる。フットライトが部屋の中を淡く照らしベッドに倒れ込むアーサーの姿が浮かび上がる。
    「アーサー!」
     カインは慌てて駆け寄るが、頭の中で「冷静になれ」と自分を言い聞かせる。膝を付き目を閉じるアーサーの手に触れる。いつもより少し体温が高いが脈は穏やかだ。
    「……カイン、休んでいる所呼びつけてすまない」
     絞りだすような声に、カインは今だ目を瞑ったままのアーサーを見た。
    「あんたにはいつでも俺を望んで欲しい。体調でも悪いのか?俺に出来ることはあるか?」
    「隣にいて欲しい。………私が眠るまででいいから」
    「眠るまでなんて言わないでくれ、俺があんたを一人にするわけないだろ」
     アーサーの閉じられた瞼の端に涙が溜まる。
     魔法使いは心で魔法を使う、自分の心に敏感で、疲れがたまると今のアーサーのように動けないほどの疲労を感じるのだ。
    「<グラディアス・プロセーラ>」
     アーサーのベッドを少しだけ大きくして、カインも隣で横になる。二人の時間を過ごす時は狭く小さいベッドを二人で重なるようにくっついて過ごすが、お泊り会をする時はこうしてアーサーのベッドを大きくするのが常だった。
     アーサーの顔にかかった髪の毛をどかすように頭を撫でる。やはり少しだけ熱があるように感じる。フィガロを呼んできた方がいいだろうか。それと、明日アーサー様の公務で別日に動かせるものがないかドラモンドに掛け合ってと、俺に出来ることを考えているとその思考を読んだようにアーサーから声がかかる。
    「城のものには言わなくていい」
    「だが、明日も公務があるだろう。あんたの健康が一番だ」
    「今、私が弱みを見せるわけにはいかない、私の悪い所が全て魔法使いのせいになる」
    「人間だって体調を崩すこともあるさ」
    「それでもだ」
     アーサーの瞼が開き、端に溜まっていた涙が流れ落ちる。
    「そんな顔をするな。ふふふ、カインのシュガーをちょうだい」
    「あぁ」
     作り出したシュガーをひな鳥のように口をあけるアーサーの唇に触れながら指先に掴んだシュガーを与える。
     今にも泣きだしそうな、何かを耐えるような顔をしていたアーサーの顔がほぐれるようないつもの柔らかい表情に近づきカインはそっと胸を撫でおろす。
    「カイン、ベルはもう1つないのか?そしたら城の自室にも置いておくのに」
    「双子先生に聞いてみるよ。他には?」
    「他?」
    「他に何か欲しいものはないか?して欲しいことだってなんだっていい」
    「………お前がいてくれればそれでいい」
    「光栄です」

    「お喋りはこれまでにしてもう寝よう。明日フィガロに診てもらって」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤👏🙏💴😭💘👏😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭❤❤❤💖❤❤❤👏💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖😭🙏😭🙏👏👏💖💖💖👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    oburuta14

    DONE純粋で、純真無垢な王子様の話
    純真無垢な王子様 私とカインは両想いだ。
     お互いに「好き」と気持ちを伝えあって、手を繋いで、それだけで私は満足だった。
     けれど、満足していたのは私だけだったようだ。
     そう思ったのは、城から魔法舎へと戻る夜空からカインが私以外の誰かと腕を組んでどこかの建物の扉へと消えたのを見てしまったときだ。
     魔法使いか否かは魔力でわかる。空から見下ろした城下街、親しみ慣れたカインの気配を感じ飛ぶ高度を降ろせばカインが知らない人物と街を歩いていた。金の髪が美しい人だ。カインが私の知らない人と歩き、私の知らない建物へと消えた。頭がその事実を認識した途端に箒から落ちてしまいそうなほどに心臓が痛み、涙が零れていた。
     カインが私以外の誰かと一緒にいることがこんなにも胸が痛む。私の好きとカインの好きは違ったのかもしれない。本当に好きだったのは私だけなのかもしれない。そもそも、好きだと伝えあっただけで私たちの関係はそれ以上でもそれ以下でもなく、今までと変わらない、中央の国の王子と中央の国の騎士、同じ賢者の魔法使いで、それだけだ。私とカインの関係が変わらないからこそ今こうしてカインは私以外の人と一緒の夜を過ごすのだ。カインは優しいから私を傷つけまいと私の言葉にあわせてくれただけなのかもしれない。私は中央の国の王子で、カインが中央の国の騎士だから。
    7620