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    らっらっらぎつね

    @ragi_keroro

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    暇潰し程度にどうぞ

    後悔親は居ない。頼れる身寄りも居ない。父は戦場で、母は病で、私と幼い弟たちを遺してこの世を去ってしまった。
    まだ子どもの私でも雇ってくれる、住み込みの仕事場を転々とし、弟たちを養ってきた。ただ、弟たちにはちゃんとした教育を受けて欲しかった。私はもう間に合わないけど、弟たちはまだ間に合う。ちゃんと学校に行ってそれぞれ幸せを掴んで欲しい。そのために、私は軍の勧誘を受けた。

    働き口も無くなり、行き倒れになっていた私たちに声をかけたのはケロン軍だった。

    「我々の研究に協力するのならば、君たちの衣食住は保障しよう」

    ケロン軍の研究……。どうせ使い捨ての実験台にされるだけだろう。それでも、弟たちに衣食住の提供、さらに学校に行ける権利も得られるというのならばと、私は身体を差し出した。

    ───嘘だった。私一人の身体だけで済ませるはずだったのに、契約は"私たち"の身体と書き換えられていた。連中が進めているのは『シフトチェンジ計画』というらしい。ヒトの身体に別の生物の能力を植え付け、その能力を自在に引き出せるようにしようというものだ。耐え難い実験の日々が続いた。死にたくなるようなこともあった。それでも私たちは耐えた。3人で一緒に生きるために。

    結果として、実験はほぼ成功だった。私たちはネコの身体能力と、副産物として各々異なる能力を得た。"ほぼ"というのは、本来、能力使用時以外は普通のケロン人と見た目が変わらないはずだが、私たちはネコの尻尾が残ってしまった。それもコトトは1本なのに、ガタタは2本、私は3本と、従来のネコの尻尾の本数と異なるものになってしまった。この結果については、研究チームも分かっていないらしい。本格的な身体改造が終わったあとも、継続的に検査を受けさせられている。

    実験への協力の甲斐あってか、弟2人は普通の学校に通わせてもらっている。悪戯に身体を弄られて棄てられるかもと思っていたが、案外その辺りの分別はついているようだ。学校では実験の産物である尻尾については、特段何か言われることも、虐められることもなく平和で楽しい生活を送っているという。私も、学校には行っていないものの軍で知り合った人に勉強を教えて貰っている。なんやかんや言って、弟たちに恥ずかしくない程度には知識を身につけておきたいから。
    私は実験協力以外にも、定住権を得るために軍の様々な仕事を手伝っている。その際に軍の施設をいろいろと見てきたが、どうやら幼い子供たちが集まっている施設もあるようだ。幼年訓練所とも違う感じがしたし、私たちみたいに実験への協力を条件に軍に拾われたのだろうか。たまに軍の中でシフトチェンジ計画の第二段階の噂を聞くが、あの子たちが被検体にされてしまうのだろうか。

    ともかく、私たちはもうお役御免だろう。実験関係の要求もシフトチェンジ結果のデータ収集くらいだ。
    未だ軍の管理下とはいえ、私たちは人並みの生活を送れている。そのうち軍を抜け、一般人として幸せを掴むことが出来る。3人で一緒に歩んでいける。そんな甘い考えを捨てていれば、後の悲劇は防げたのだろうか。
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