さくらんぼのヘタとコナアイ「アーイちゃん、部屋に入れてー」
「アンタ、手に持ってるそれまさかりんごじゃ、」
「違う違う、りんごじゃないよ。さくらんぼ」
白い皿の上に乗って、赤くツヤツヤとしているから、てっきりまたりんごを持ってからかいに来たのかと思えば、違うらしい。
「伯爵が知り合いの貴族からたくさん貰ったらしくてね、俺も貰ったからお裾分けに来た」
「…アーサーさんがそんなこと言うの、珍しい」
「美味しいものは好きな人と食べたいものじゃん」
さらっと告げられた“好きな人”というワードにぼぼぼ、と頬が熱くなるのを感じた。
「っ、入ってもいいけど、キリのいいとこまで論文進めさせて」
「ん、りょーかい」
入ってきたアーサーさんはひとりでさくらんぼを食べるわけでもなく、大人しく待っていてくれた。…こういうところは律儀で、普段の軽薄な言動からは想像もつかない。
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