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    hatonyan_nyan

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    hatonyan_nyan

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    16コラボでめちゃになって書いたヴくんとブランシュちゃんです 14のバレはないです 16は前半オリジン前、後半DLC2の後を想定(妄想)して書いています

    双星に寄せて身体を揺さぶられる感覚で重い瞼を持ち上げると、ジョシュアが心配そうに覗き込んでくるのが見えた。
    「おはよう、兄さん。珍しいね、兄さんがこんなにぐっすり寝ているなんて」
    「おはよう、ジョシュア。すまない、寝坊なんてだらしないところを見せた」
    「兄さんは普段から働き過ぎなんだから、たまにはいいじゃないか。体調が悪いのかと思ったけど、顔色は良さそうだし」
    楽しい夢でも見た?と問われ、そうだなと返す。確かに、覚め難い夢であったから。
    「5年前、だったかな。不思議な夢を見たことがあって。それを思い出していたようだ」
    全てを見たわけではないけれど、穏やかな世界だった。ベアラーがいないこともそうだが、頭からドラゴンのような角が生えていたり、獣のような見た目でもヒトとして生きているのが衝撃だった。ヴァリスゼアでは、人間でも人として生きられない者が多いのに。
    「異世界を旅する夢、か。本が好きな兄さんらしいね」
    「出会った人も良い人たちだったんだ。記憶を失くした俺にずっとよくしてくれて」
    不思議な人だった。幼い子供のように無邪気に笑ったかと思えば、大人びた顔で静かに語りもする。いや、実際見た目はああだが年は近かったのかもしれない。
    戦いになれば苛烈そのもので、自分の背丈の半分もない彼女が臆することなく、むしろ笑みさえ浮かべながら巨躯のイフリートに向かっていく様は壮絶の一言に尽きた。
    『あなたの旅は、きっとたいへんなものなんでしょう?あたしには、それでも進めとしか言えないのがざんねんだけれど』
    そう送り出してくれた彼女の旅も、もしかしたら想像もつかないほど過酷なものだったのかもしれない。ちぐはぐな色の不思議な目は、多くを取りこぼしてきたように見えたから。
    「奇跡でも起こったら、彼女にも見せたいな。人が人として生きられるようになったヴァリスゼアを」
    「そうだね。そんな世界を実現するためにも、まずはきちんと朝食をとらないと」
    「はは、違いない。支度したらすぐに向かうよ」

    部屋から見える空は変わらず不気味な雲に覆われていて、太陽も月も見えない。けれど消えたわけではなくて、雲の向こうに確かにある。何もかもがなくなったわけではない。
    そう、ジョシュアとも再会出来た。多くはないがこの手に残ったものが確かにある。ならばこれからも歩いて行けるはずだ。
    「大丈夫、進むさ」
    ───先をゆく白い星も、きっとそうしているはずだから。



    ✻✻✻✻✻



    ばさり、と大きな鳥が飛び立つような音で目が覚める。野宿ならともかく、宿屋でこんな間近に聞こえるものだろうか?疑問には思ったけれどまだ半分眠りの中にいるブランシュはうとうとと沈んでいってしまう。
    「───、」
    けれど聞き覚えのある柔らかな声に、一気に意識が引き戻される。冷水を頭から浴びせられるような覚醒だった。
    聞き覚えのある、別れを果たした人の声。異世界からの稀人である彼は無事に元の世界へ戻ったのだから、もう耳にすることはないはずなのに。
    寝台から降りて、窓を開ける。満月が似合う静かな夜だ。今世界に起きているのは己だけなんじゃないかという錯覚すら覚える。しばらく外を眺めてみたが、羽音の主は見当たらない。星空を過ぎていくのは草木を撫でる夜風ぐらいのものだ。

    不思議な人だった。がたいはいいのにどこか迷子の子供みたいな雰囲気があって。グリダニアを見て回っているときも倍以上ある背丈の彼が素直についてくるのがなんだか可笑しかった。
    話す時に視線はくれるけれど、ずっと伏し目がちで。その纏う空気には、どこか覚えがあった。共感、というほうが正しいかもしれない。彼もずっと取りこぼしてきたのだろう。だからせめてこの先は大事なものとはぐれないよう進んで行ってほしかった、のに。
    「そう。ひとりで行っちゃったの」
    おそらく、人としての枠から外れてしまったのだろう。直感だが、確信はあった。向けられた感謝の声には後悔の影もなく穏やかで、それが逆にやり切れない。
    「……ばかな子ね。そんなふうにするために、手伝ったんじゃないのに」
    エオルゼアの月の傍に赤い星はもうない。それが何だか無性に悲しくなってしまって、ブランシュはそっと窓を閉じた。

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    hatonyan_nyan

    SPOILER暁月メインクエ後のブランシュちゃん。アルフィノくん視点
    彼が最期に狩ったもの戦いの中にあって、頬が自然と緩むのを感じる。ああ、こんなのはいつぶりだろう。
    いつからだろう。どこからだろう。国が、世界が、星が、終末が。そんな戦いばっかりで。無意味だったなんてことは絶対にないし、自ら望んだ旅ではあったけど、それでも苦しい道のりであったことは間違いない。けれどその終着には。こんな楽しい戦いが待っていた。
    あなたは楽しいだろうか。あたしとの再戦、ただそれだけを望んで、こんな天の果てまで飛んできたこの人は。いえ、きっと楽しいはず。だってあたしがこんなに楽しいんだから。そうね、今なら確信を持って言える。
    ───このひとは、あたしのともだちだ。


    *****


    あの人がラグナロクに転移してきた瞬間のことは、今でも忘れられない。最初、その場にいたほとんどの者が、それを彼女だと認識できなかった。したくなかった、のほうがより正確かもしれない。私たちとは見え方が違うヤ・シュトラが恐る恐る名前を呼んで、そこから皆ようやく金縛りが解けたかのように駆け寄った。いつも綺麗な真白い髪は血に塗れて見る影もなく、見えるところも見えないところも傷を数えたらキリがない。けれどその惨状の中で一番恐ろしかったのは、彼女が満足そうに口許に笑みを湛えていたことだった。
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