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    fkm_105

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    fkm_105

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    人の誕生日にテンションがあがってノリで書いたたるしょ

    ピアノ弾いてくれ トッ、と鍵盤を爪弾く。一拍。鍾離の石珀が瞼に隠れた。微かに息を洩らして、タルタリヤに寄り添うように隣へ腰掛ける。晩夏の陽光を受けた、蜂蜜にも似た瞳が指慣らしにハノンを弾くタルタリヤを見る。丸みの消えた横顔、記憶よりも幾らか骨張った指を見て、鍾離の口から、ふ、と息が零れた。ピアノを弾く人間の手だ。
    満たされている。
     何百回、何千回と聴いて、弾いたハノンの音が、満ちている。いつもそこで指の形が崩れる。今、ドを弾きそうになった。クス、と笑みがこぼれ落ちる。
     もう! とでも言いたげに音が力強くなって、窘めるように鍾離の指が鍵盤に添えられた。隣で歩く歩幅を、足を出すタイミングを、合わせるように。
     一呼吸置いて、二オクターブ離れた二人のハノンが部屋に満ちた。
     揺れる窓辺のカーテン。譜面台に置かれた色褪せた楽譜。蜩が脳髄に響くように姦しく鳴いている。
     ……夏が逝く。



    「先生」
     見慣れない制服姿のタルタリヤが駅前のベンチで待っていた。
     いつまでその呼び方をするんだ。そう声帯を震わせかけて、やめた。しょうり先生はおれにピアノを教えてくれるから、先生なんだ、とクリスマス会でもらったケーキで口の周りをベタベタにした記憶のタルタリヤが笑った。
    「久しいな」
    「先生が大学行っちゃうから」
     気まぐれな、咎めるような言葉の棘が心地良い。街を離れると言った時のタルタリヤの顔が脳裏に浮かんで消えた。
    「行かない方が良かったのか?」
    「引っ越す当日にもう会えなくなるって中学生に言ってくる高校生……いや大学生か。それってどうなのさ」
     心底呆れたとでも言うような視線に、ふふ、と笑いが込み上げる。ちょっと、と厳しさを増した表情が、幼さの抜けたタルタリヤの顔に浮かんでいた。
    「ピアノを選んでどう?」
    「後悔はしていないが」
    「してたら今頃殴ってるよ」
     ピアノを選んで、中学生にもなってびゃーびゃー泣いてる俺を置いてこの街を離れたんだからさ。酷いと思わない? ありえないんだけど、と言外に滲んだ不機嫌さを隠しもしないところがまだ若い。
     見慣れた公園のベンチに座って、コンビニで買ったばかりのアイスを開ける。晩夏と言えど夏の気配はまだ濃い。アイスは少し溶けていた。
     口に含むとレモンの味が広がる。
    「先生っていつもそれだよね」
     青い空に似たソーダ味を頬張るタルタリヤがブランコの柵に腰掛けながら笑った。ドはドーナツのド、レはレモンのレ。ソは青い空。レッスンを終えてにこにこ二人で歌いながらアイスを買う。癖みたいなものだった。甘い。砂糖と水とそれから香料の塊だ。アイスを食べるのは四年ぶりだった。
    「ピアノは続けるのか」
     がじ、とタルタリヤがアイスを齧った。頭が痛くなるぞ、と思ったけれど、何も言わずに目を伏せた。
    「やめるよ」
     誘われた遊びを、家の手伝いがあるからと断るような、軽くて、分かりきっているでしょう、と言わんばかりの声だ。
    「俺はピアノを選ばない」
     鍾離の目に浮かぶのは明らかな落胆。タルタリヤがクスリ、と笑う。
    「先生と弾けたら何だって良かったんだ」
     ピアノじゃなくたって、トランペットでも、バイオリンでも、何だって。
     悪戯が成功した子どもの顔をしてタルタリヤは笑う。鍾離は、歓喜と絶望をミキサーでごちゃ混ぜにして、よく分かりもしない幸せと寂寥を飾り付けた何かを飲み込んだような顔をする。溶けかけたアイスがぼとり、と地面に落ちた。
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    fkm_105

    DONE1月23日オンリーにて頒布予定だったレン彼タル鍾小説本の書き下ろしサンプルです
    姉活(兄活)をしているタル×レンタル彼氏(?)の先生の話です
    レン彼タル鍾小説本の本編はR18ですが書き下ろしは全年齢です
    書き下ろし「今夜19時万民堂で」 どうしたらいいと思う? フライドポテトをケチャップに潜らせながら、赤毛の男はため息をつく。本当にため息をつきたいのは俺なんだけど、なんて言ったところでこのモテ男、アヤックスにはさして効果はないことを空はよく知っていた。よくある放課後のファストフード店らしく、アヤックスを見た暇そうな女子高校生たちがキャア、と黄色い声をあげている。耳障りで仕方ない。ろくな男じゃないぞ、と冷めた目でそれを見て、空は奢られたハンバーガーに歯を立てた。
     中高一貫の男子校。それでも他校の女子にモテまくったアヤックスは、バレンタインになれば校門で出待ちなんてざらで。その分トラブルも多かったな、と中等部のごく平凡な一生徒の自分と高等部の有名人、アヤックスとのひょんな出会いを思い出す。あの時も傍迷惑なストーカーもとい、他校の女子に追われているところだったはずだ。そして今回も。チラリ、と窓の外を伺えば、アヤックスに捕まった十分前と同じ影が視界の端に映る。
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    fkm_105

    DONE※死ネタ
    先生の首を絞めるタル
    ワンライ「嫉妬」 最初はもう、そりゃあ可愛い嫉妬だった。
     それこそ生まれたばかりの弟に母親をとられた兄、そのくらい純粋で、初めて触れたその感情は対処の仕様がなく。それはどうしようもなく、やるせなく、かと言って恨むでもなく、とはいえ受け入れられるわけもなく、ただこちらを見てほしい、その程度の可愛らしさで、タルタリヤの胸中にちょこん、と納まっていた。最も、タルタリヤの嫉妬というのは、母親でもなく、恋人でもなく、ただの仕事相手の男だったわけだが。
     往生堂の客卿、鍾離というのは馬鹿みたいにモテる男だった。語弊のある言い方だが、街を歩けば鍾離先生、鍾離さん、と呼び止められるのだから、あながち間違いでもないはずだ。
     タルタリヤと鍾離が出会った頃などは、周囲から頼りにされている先生、くらいのものだった。その程度で亀裂が入るような深い関係はそこに存在していなかった。だというのに、タルタリヤがその執着と信頼と愛情を、鍾離の素知らぬところで積み上げ始めた。積み上げられていくそれの前にいるのは、タルタリヤと、タルタリヤの頭の中に存在している鍾離の姿だけ。空しいものだ。それでも良かった。積み上げる手は止めることはできなかったし、止める気もなかったのだから。
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    fkm_105

    PROGRESSレン彼たるしょの進捗
    デート途中まで~~~~
    12月までに終わらせるんだよ!!!!!!
    地獄の進捗 深海の瞬くタルタリヤの瞳が今日ばかりは濁った泥濘の色をしていた。しかし大学生らしく課題や成績に追い詰められているのではない。言ってしまえば不健全な話で、人生二度目の貞操の危機だった。正確にはお金をもらって男とデートをするのだが、なにせ相手の素性がわからない。いかにもなチンピラが来るとも、人のよさそうなビジネスマンがくるとも知れない賭けをしていた。なお一度目の貞操の危機は同じくバイトでデートすることになった年上の女性に服をひん剥かれた時だ。センスは悪くないけれど、こっちの方が似合うわよ、と女王様然とした振る舞いの彼女、シニョーラによって見事着せ替え人形にされたタルタリヤは、その日総額十三万円の服の数々をプレゼントされ、慄く他なかった。閑話休題。カーテンを引いたように暗がりが訪れ、電車はトンネルへと入る。のっぺりと塗りつぶされた車窓には、天使だなんだとちやほやされた幼少期の面影のすっかり吹き飛んだ、疲れ果てた青年の顔が映るばかりだった。タルタリヤは手持無沙汰にメッセージアプリを開いては閉じる。やがて、はあ、と大きく息を吐き出すと、メッセージアプリの開かれた画面に指を滑らせた。
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