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    fkm_105

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    睡蓮を食べる先生
    睡蓮の花言葉/信仰

    ワンライ「花言葉」 睡蓮が緩やかに花開き、その白い花弁から露を滴らせていた。格子窓から覗く中庭の池である。睡蓮の葉の下に見える水は昏い。時折、鯉の影がちらついてはその白や赤の色彩が水面に揺れた。
    「先生」
     タルタリヤの目の前に置かれた皿にのせられているのは、血の滴るように赤い肉でも、瑞々しさの欠片を集めた様なサラダでもなく、純白の睡蓮だった。穢れ一つない睡蓮が、白い皿にのせられている。汚れの一つも許されないような様。音はなく、淀んだ静寂に満たされた室は、まるで張り詰めた糸が目の前に張られているようだった。カチャ、と鍾離のカトラリーが皿に触れる。ようやく世界が音を取り戻し、糸はぷつり、と断ち切られた。デーブルに置かれた皿は二つ。一つはタルタリヤのもので、一つは鍾離のものだ。鍾離は、自らの前に置かれた睡蓮にナイフを突き立て、サクリ、と切り分けていく。水分をたっぷり含んだその花弁を唇が食み、白い歯が花に歯を立て、こくりと喉が上下した。喰べている。喰べ、胃の腑に落とし、そうして血肉にしている。
     生理的嫌悪感。
     宗教画の如き美しき男が睡蓮を食べる様は、おぞましいほどに美しく、生命の呼吸の止まったような、どこまでも無機質な空気を纏っていた。紛い物。そうであったらどれほどよかったか。しかし確かに、鍾離の肩は呼吸に揺れ、耳が痛くなるほどの沈黙にはタルタリヤともう一人、鍾離の微かな息遣いが存在していた。
     花を血肉とすることに何の意味がある。
     肉を食み、菜を摂る。人間らしい食とはそういうものだろう。この似非凡人め、とタルタリヤは幾度目かわからない悪態を胸中で吐く。
    「睡蓮の花言葉を知っているか?」
     陶磁器の白い肌に絹の黒髪が揺れる。石珀の毛先。瞳が穏やかな日暮れの海を模したように、ゆるりと弧に歪み、睡蓮を食んだ口が笑みの形をとっていた。
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    fkm_105

    DONE1月23日オンリーにて頒布予定だったレン彼タル鍾小説本の書き下ろしサンプルです
    姉活(兄活)をしているタル×レンタル彼氏(?)の先生の話です
    レン彼タル鍾小説本の本編はR18ですが書き下ろしは全年齢です
    書き下ろし「今夜19時万民堂で」 どうしたらいいと思う? フライドポテトをケチャップに潜らせながら、赤毛の男はため息をつく。本当にため息をつきたいのは俺なんだけど、なんて言ったところでこのモテ男、アヤックスにはさして効果はないことを空はよく知っていた。よくある放課後のファストフード店らしく、アヤックスを見た暇そうな女子高校生たちがキャア、と黄色い声をあげている。耳障りで仕方ない。ろくな男じゃないぞ、と冷めた目でそれを見て、空は奢られたハンバーガーに歯を立てた。
     中高一貫の男子校。それでも他校の女子にモテまくったアヤックスは、バレンタインになれば校門で出待ちなんてざらで。その分トラブルも多かったな、と中等部のごく平凡な一生徒の自分と高等部の有名人、アヤックスとのひょんな出会いを思い出す。あの時も傍迷惑なストーカーもとい、他校の女子に追われているところだったはずだ。そして今回も。チラリ、と窓の外を伺えば、アヤックスに捕まった十分前と同じ影が視界の端に映る。
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    fkm_105

    DONE※死ネタ
    先生の首を絞めるタル
    ワンライ「嫉妬」 最初はもう、そりゃあ可愛い嫉妬だった。
     それこそ生まれたばかりの弟に母親をとられた兄、そのくらい純粋で、初めて触れたその感情は対処の仕様がなく。それはどうしようもなく、やるせなく、かと言って恨むでもなく、とはいえ受け入れられるわけもなく、ただこちらを見てほしい、その程度の可愛らしさで、タルタリヤの胸中にちょこん、と納まっていた。最も、タルタリヤの嫉妬というのは、母親でもなく、恋人でもなく、ただの仕事相手の男だったわけだが。
     往生堂の客卿、鍾離というのは馬鹿みたいにモテる男だった。語弊のある言い方だが、街を歩けば鍾離先生、鍾離さん、と呼び止められるのだから、あながち間違いでもないはずだ。
     タルタリヤと鍾離が出会った頃などは、周囲から頼りにされている先生、くらいのものだった。その程度で亀裂が入るような深い関係はそこに存在していなかった。だというのに、タルタリヤがその執着と信頼と愛情を、鍾離の素知らぬところで積み上げ始めた。積み上げられていくそれの前にいるのは、タルタリヤと、タルタリヤの頭の中に存在している鍾離の姿だけ。空しいものだ。それでも良かった。積み上げる手は止めることはできなかったし、止める気もなかったのだから。
    1009

    fkm_105

    PROGRESSレン彼たるしょの進捗
    デート途中まで~~~~
    12月までに終わらせるんだよ!!!!!!
    地獄の進捗 深海の瞬くタルタリヤの瞳が今日ばかりは濁った泥濘の色をしていた。しかし大学生らしく課題や成績に追い詰められているのではない。言ってしまえば不健全な話で、人生二度目の貞操の危機だった。正確にはお金をもらって男とデートをするのだが、なにせ相手の素性がわからない。いかにもなチンピラが来るとも、人のよさそうなビジネスマンがくるとも知れない賭けをしていた。なお一度目の貞操の危機は同じくバイトでデートすることになった年上の女性に服をひん剥かれた時だ。センスは悪くないけれど、こっちの方が似合うわよ、と女王様然とした振る舞いの彼女、シニョーラによって見事着せ替え人形にされたタルタリヤは、その日総額十三万円の服の数々をプレゼントされ、慄く他なかった。閑話休題。カーテンを引いたように暗がりが訪れ、電車はトンネルへと入る。のっぺりと塗りつぶされた車窓には、天使だなんだとちやほやされた幼少期の面影のすっかり吹き飛んだ、疲れ果てた青年の顔が映るばかりだった。タルタリヤは手持無沙汰にメッセージアプリを開いては閉じる。やがて、はあ、と大きく息を吐き出すと、メッセージアプリの開かれた画面に指を滑らせた。
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